IEICE全集中シリーズ(トライアルコース)

量子全集中コース「量子情報処理の基礎」

 2010年代半ばの量子コンピュータの開発以降、量子情報処理技術は超並列・大規模情報処理を可能とする技術として全世界的に注目を集めています。量子コンピュータは従来のコンピュータでは現実的な時間で解けないような一部の問題を、短時間かつ超低消費電力で計算可能であり、また量子通信によれば改ざんや盗聴を不可能にする高信頼な通信が行えます。今後、量子情報処理技術は幅広い産業領域や社会インフラに大きな影響を与えると考えられます。
 一方、当会では各ソサイエティにおいて、量子情報処理に関連した最先端の研究が行われており、当会が開催するWebinarであるIEICE ICT Pioneersシリーズ、テクノロジートレンドシリーズ、チュートリアルシリーズにおいても、量子情報処理の研究開発に関連した講演を主催し、アーカイブ化を行なってきました。今回、それらのアーカイブの中から次の5つを選び、「量子情報処理の基礎」と題して量子トライアルコースを企画しました。

量子トライアルコース「量子情報処理の基礎」:
(1)「量子コンピュータ超入門」川畑史郎先生(産業技術総合研究所)
(2)「量子コンピューティング入門編(1)(2)」藤井啓祐先生(大阪大学)
(3)「何が量子情報処理に特有なのか1:量子暗号を例として」松本隆太郎先生(東京工業大学)
(4)「何が量子情報処理に特有なのか2:高密度符号化を例として」松本隆太郎先生(東京工業大学)

 上記(1)の川畑先生には、量子コンピュータの基礎、研究開発動向について解説していただくと共に、なぜ量子コンピュータに期待が寄せられているのかについてご説明いただきます。また、上記(2)と(3)の藤井先生には、まず量子ビットの記述や基本量子演算、量子コンピュータのデバイスについてご説明いただいた後、量子コンピュータ上で動作する量子アルゴリズムによってどのような問題がどのように高速に解けるのかついて、量子ソフトウェアの開発環境を含めてご紹介いただきます。最後に上記(4)と(5)の松本先生には、古典的な情報処理にはなく、量子情報処理に特有な特徴として、測定による状態の擾乱と量子エンタングルメントをご紹介いただくと共に、量子暗号と高密度符号化を例にとって、これらの量子的な特徴が有効に活用されていることについて解説していただきます。

 当会では、このトライアルコースに対する皆様のご意見を伺い、今後もこのような企画を実施していくべきか判断したいと考えております。視聴後のアンケートにご協力を頂ければ大変幸いです。よろしくお願いします。

  • 60分初級レベル量子コンピュータ量子ビット量子力学超伝導量子化学

    量子コンピュータ超入門

    川畑 史郎(産業技術総合研究所)

    量子コンピュータを利用することで、機械学習、量子化学計算などのいくつかの問題を従来型コンピュータよりも高速に処理することが可能となります。そのため、現在世界規模で量子コンピュータの研究開発競争が繰り広げられています。しかし、商用量子コンピュータの実現と社会実装のためには20年以上の長い年月が必要であると考えられています。そこで、本セミナーにおいては、量子コンピュータの基礎、研究開発動向について解説を行います。

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  • 60分(1)初級レベル(2)中級レベル量子情報処理量子ビット量子演算量子コンピューティング量子アルゴリズム

    量子コンピューティング入門編(1)(2)

    藤井 啓祐(大阪大学)

    近年、量子コンピュータの実現にむけて、大学や国の研究機関に加えて、GoogleやIBMに代表される巨大IT企業や、新興のベンチャー企業、などが量子コンピュータのハードウェア開発を進めている。入門編(1)では、量子ビットの記述や基本量子演算について説明し、現状の量子コンピュータのデバイスや、短期的、中長期的な分野の課題についてご紹介する。
    ・はじめに
    ・量子情報の基礎
    ・量子ビットと基本量子演算
    ・万能量子計算
    ・量子コンピュータの現状
    ・誤り耐性量子コンピュータとNISQデバイス
    ・まとめ

    入門編(2)では、量子コンピュータ上で動作する量子アルゴリズムを用いて具体的にどのような問題どのように高速にとけるかを解説する。また、これら量子アルゴリズムの量子化学計算や機械学習への応用、量子ソフトウェア開発のためのツールや開発環境について紹介する。
    ・量子アルゴリズム
    ・位相推定アルゴリズムの基礎
    ・位相推定アルゴリズムの応用紹介(量子化学計算・機械学習)
    ・変分量子アルゴリズムの基礎
    ・変分量子アルゴリズムの応用紹介(量子化学計算・機械学習)
    ・量子ソフトウェア開発ツール紹介
    ・まとめ

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  • 60分初級レベル量子情報量子測定量子暗号量子もつれ量子高密度符号化キーワード

    何が量子情報処理に特有なのか1:量子暗号を例として

    松本 隆太郎(東京工業大学)

    量子情報処理に特有の有益さを生み出す量子力学にあり古典力学にない特徴は、測定を行うと被測定物の状態が変わることと、量子エンタングルメントの2つである講演者は考えている。量子暗号を例にとって、測定を行うと被測定物の状態が変わることを有効に活用できることを例示する。この講演は高校の物理学の範囲の前提知識しか要求しない。

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  • 60分上級レベル量子情報量子測定量子暗号量子もつれ量子高密度符号化キーワード

    何が量子情報処理に特有なのか2:高密度符号化を例として

    松本 隆太郎(東京工業大学)

    量子情報処理に特有の有益さを生み出す量子力学にあり古典力学にない特徴は、測定を行うと被測定物の状態が変わることと、量子エンタングルメントの2つである講演者は考えている。高密度符号化を例にとって、量子エンタングルメントを有効に活用できることを例示する。この講演は数学的にかなり高度で、参加に当たってできれば大学1年レベルの線形代数とテンソル積(クロネッカー積)に精通していることが望ましい。

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