令和3年度 電気・情報関係学会北海道支部連合大会
特別講演
演題
南極での越冬観測および雪氷研究
―過去72万年の気候変動と最近の地球温暖化―
講師
北見工業大学教授 亀田 貴雄 先生
日時
令和3年11月6日(土) 13:00-14:00
場所
オンライン開催
概要
日本南極地域観測隊は,1993年から2007年にかけて南極氷床の内陸域の頂部に位置するドームふじ基地(南緯77度19分01秒,東経39度42分12秒,標高3810m)において氷床深層掘削を実施し,3035.22mに到達する深層掘削コアを掘削することに成功した.採取した氷試料の解析により,この氷には過去72万年間の気候・環境変動情報が含まれていることがわかった(Dome Fuji Project Members,2017).ドームふじ基地ではこれまでに4回の越冬観測が実施され,深層掘削作業を実施するとともに,通年の雪氷観測が実施された.講演者は第36次南極地域観測隊員として1995~96年にドームふじ基地(当時はドームふじ観測拠点)での最初の越冬観測に従事した.また,第44次南極地域観測隊員として,2003~04年にドームふじ基地での現時点での最後の越冬観測にも従事した.
今回の講演ではドームふじ基地での越冬観測の様子を紹介するとともに,氷床コアの解析により明らかにされた72万年間の気候変動の特徴を紹介する.また,過去の気候変動と比較することで,近年の地球温暖化の位置づけを説明する.
なお,亀田先生による南極観測での科学的な成果は Kameda et al., 1999; 2008; 2009など,和文での解説は亀田, 2015; 亀田・平沢, 2017; 亀田, 2017a, 2017bなどをご参照ください.
参考文献
Dome Fuji Ice Core Project Members (2017): State dependence of climatic instability over the past 720,000 years from Antarctic ice cores and climate modeling. Science Advances, 3(2), e1600446, doi:10.1126/sciadv.1600446.
Kameda, T., H. Yoshimi, N. Azuma and H. Motoyama (1999): Observation of “yukimarimo” on the snow surface of the inland plateau, Antarctic ice sheet. Journal of Glaciology, 45(150), 394–396.
Kameda, T., H. Motoyama, S. Fujita, S. Takahashi (2008): Temporal and spatial variability of surface mass balance at Dome Fuji, East Antarctica, by the stake method from 1995 to 2006. Journal of Glaciology, 54(184), 107–116, doi:10.3189/002214308784409062.
Kameda, T., K. Fujita, O. Sugita, N. Hirasawa, and S. Takahashi (2009): Total solar eclipse over Antarctica on 23 November 2003 and its effects on the atmosphere and snow near the ice sheet surface at Dome Fuji. Journal of Geophysical Research, 114, D18115, doi:10.1029/2009JD011886.
亀田貴雄(2015): 南極ドームふじでの掘削,観測,生活.水環境学会誌, 38A(4), 142-148.
亀田貴雄,平沢尚彦(2017): 9.2日本のこれまでの観測.気象研究ノート(「南極氷床と大気物質循環・気候」の第9章南極氷床の涵養量の分布と年々変化に収録),233,185-192.
亀田貴雄(2017a): 2003年11月23日の南極での皆既日食の地上気象の変化.気象研究ノート(「南極氷床と大気物質循環・気候」の第24章に収録),233,387-393.
亀田貴雄(2017b): 25.1雪まりも.気象研究ノート(「南極氷床と大気物質循環・気候」の第25章特徴的な現象に収録),233,395-396.
講師略歴
北見工業大学教授,博士(理学)
- 1982年3月 群馬県立桐生高等学校卒業
- 1982年4月 北海道大学理I系入学
- 1986年3月 北海道大学工学部応用物理学科卒業
- 1988年3月 北海道大学大学院工学研究科博士前期課程応用物理学専攻修了
- 1991年3月 北海道大学大学院理学研究科博士後期課程地球物理学専攻単位取得退学
- 1991年4月 北見工業大学一般教育等物理・助手
- 1994年3月 博士(理学)取得
- 2012年4月 北見工業大学教授,現在に至る
2018年度から現在まで北見工業大学地球環境工学科長を併任.趣味は夏山登山,風景写真撮影,尺八.尺八は寺田寅彦が尺八の研究で理学博士号を取得したことを知り,関心を持った.58歳.