第21回: 2023年度

  1. 髙木幸子(常磐大)・坂本暁彦(東京電機大)
    発話行為論と日本語における条件付き謝罪 ~ 加害責任の重さが誠実性評価に及ぼす影響 ~
    2023年8月、HCS2023-42
    • 選評:坂本・髙木 (2023/5)では,謝罪発話行為の枠組みやポライトネスに関するモデルから,条件付き謝罪の有する言語的特徴への分析を試みた.当研究では,坂本・髙木 (2023/5)の条件付き謝罪の不誠実性の分析を,実際の会話文を用いて量的に評価し分析結果が妥当であることを検証した.当該論文では、言語学に基づく謝罪発話行為の質的分析が行われ、その妥当性が量的にも検証される形となっている。日常で良く見聞きして違和感を覚える言語的現象について、専門的な研究内容を言語学研究者でなくとも分かりやすく説明している点,発表においても非常に明確に論点が整理されている点が評価できる. 以上より,多角的な視点からのコミュニケーション特性の理解を目指すHCS研究会の趣旨に合った論文だと評価し,HC賞にふさわしい論文として推薦する.
  2. 高橋 理央(日大), 吉田 悠(日大)
    商品パッケージの視触覚による印象が購買に与える影響
    2023年3月、HCS2022-83
    • 選評:コロナ禍の社会状況から発想を得,商品の中身の使用感を試さずとも外観から中身の印象をイメージできるような,視覚と触覚を組合せたパッケージのデザインを,印象評価調査および実際にパッケージをデザインし,評価と提案を行っている.視触覚に着目し,外観からハンドクリームの中身を想像してもらうというテーマ設定の面白さ,研究課題としての新規性を評価する意見,および調査だけに終わらず,パッケージを実際に作成した点を評価する意見が多くみられた. 印象調査から実際のパッケージデザインに至るまでの有効性の高い(実質的かつ実用的な)研究であることは多いに評価でき,HC賞にふさわしい研究であると考え推薦する.

第20回: 2022年度

  1. 大平原 誠・辻岡哲夫・渡辺一志・岡 育生(阪市大)
    視覚障がい者のためのアーチェリー競技支援システムの開発 ~ 被験者実験による音響式照準器の性能評価 ~
    2022年3月、HCS2021-64
    • 選評:ターゲットを絞った具体的な研究で、実用性、有効性ともに明確な成果を示されており、今後の課題も明確になっている。音で照準の適合具合を知らせるというアイディアはシンプルであるが、誤差修正の研究プロセスは精緻であり、実際に的中率を向上させることに成功した点は優れている。シンプルな着想から出発し、大きな成果を得るという「研究ストーリー」も大いに評価できる。音の変化だけで成績が顕著に向上していた点がすばらしく,また参加者の方が笑顔で楽しそうにスポーツを嗜んでいる様子を見て,科学が人の幸せに貢献していることがありありと伺えた。
  2. 山木 廉(阪大)・仲田佳弘(電通大)・堀部和也・伴 碧・高橋英之・石黒 浩(阪大)
    摂食を介したヒューマンロボットインタラクションを実現するための可食ロボットのデザインと動きの印象評価
    2022年1月、HCS2021-47
    • 選評:食品材料から構成される可食ロボットを実際に食べることが人の心理や認知に与える影響を研究する研究の第一段階として,動きを調整可能なゼラチンベースの可食ロボットのデザインと動きの印象評価を行っている.新規性が高く,独創的なアイデアとアプローチが大変面白い研究である。質疑応答でも盛り上がったように、実験デザインの妥当性、結果の解釈など、大いに議論の余地があるが、それも含めて将来性がある研究である。

第19回: 2021年度

  1. 石井 亮(NTT/CMU)・Xutong Ren・Michal Muszynski・Louis-Philippe Morency (CMU)
    マルチモーダル特徴量を用いたターン管理の意欲と実際のターン交替の同時予測
    2021年8月、HCS2021-22
    • 選評:従来、多くのターン交替の研究がある中、参加者の話す/聞く意欲という内面状態と実際のターン交替の関係性を初めてモデル化した大変興味深い研究である。マルチタスク学習手法を用いた内面状態と実対話行動の予測モデリングには高い新規性が認められ、また、参加者の話す/聞く意欲の収集方法はよく工夫されている。対話における人の内面状態と実行動の同時モデリングにより、双方の予測性能を向上できることが示され、今後の対話モデル研究の新しいアプローチを提示するものであると高く評価できる。

第18回: 2020年度

  1. 松田昌史・小林哲生(NTT)
    人口密度および経済状況と人々の生活史戦略 ― WEB調査を用いた分析 ―
    2020年1月、HCS2019-69
    • 選評:個体の生涯における資源分配を説明する生活史戦略理論から、人口密度が高い地域では少子化の発生が予測され、実証されている。この従来知見に対して、ウェブ調査に基づいて取得した個人の大規模データを用いて、綿密な統計的分析を実施することで、この理論が必ずしも成り立たないことを示した。
      「少子化」という重要社会問題に関する従来知見に対して、より詳細なデータを取得し、新たな観点から追試を実施し、新たな知見を蓄積したという点で、意義の大きな研究であると評価できる。また、優れた論理展開だけでなく、データ収集やデータ分析に関して十分かつ信頼性が高いと評価でき、論文の完成度が高いため、HC賞にふさわしい。
  2. 磯 友輝子・日向野智子・藤後悦子・山極和佳・高橋一公・角山 剛(東京未来大)
    保育士同士の効果的なコミュニケーション
    2019年10月、HCS2019-53
    • 選評: 保育士の良好な関係性構築に重要となる、良好な保育士間コミュニケーションを明らかにするために10名の様々な規模の園長を対象にインタビュー調査を実施した。インタビューデータをすべて逐語記録として書き起こし、計量テキスト分析、共起分析、対応分析を行った。
      その結果、園長から見た現場の良好なコミュニケーションは、職務に関する内容と、職務とは関係ないと考えられる私的な内容の両方で特徴づけられることを明らかにし、また規模によって取られるコミュニケーションの特徴が違う可能性が示唆された。以上のように、研究方法と結果のいずれもが興味深い。またテーマとアプローチの双方に大きな発展の可能性が認められるため、HC賞にふさわしい。

第17回: 2019年度

  1. 中村航洋(早稲田大/日本学術振興会/慶応大)・渡邊克巳(早稲田大)
    データ駆動処理による顔支配性印象のモデル化
    2019年3月、HCS2018-75
    • 選評:顔認知等の対象物の印象に関する研究において、実験刺激を作成する際、研究者の事前知識バイアスや仮説が入ってしまうことから、客観的な結果を導出するのが難しいという方法論上の懸念がある。
       本研究は、複数の特徴量を盛り込んだ顔データを自動生成しサンプルの客観性を維持するという新たな方法論を提案し、従来の方法論上の懸念が解決できる可能性を提示した。論文も、実験の設計、モデルの作成・検証、結果の分析が厳密になされており、背景から一連の流れが明快にまとめられている。顔認知やその他印象評価に関わる研究分野の今後の発展に貢献することが認められ、ヒューマンコミュニケーション賞を授与するに値すると考えられる。
  2. 河瀬諭・金澤尚史(大阪大学)
    人の合奏と人工知能の合奏 ~ 人工知能オーケストラ実現にむけて ~
    2019年5月、HCS2019-21
    • 選評: 本研究は人工知能の視座から、合奏という創造性を要する活動に着目し、人とエージェントとのインタラクションの差異や共通点を報告したものである。合奏における人間の行動データを分析した取り組みは多くあるが、マルチエージェントシミュレーションと人間の行動データとを比較した研究は独創的である。
       他者や環境の変化へ柔軟に適応する人間の「巧みさ」を科学的に理解すること、そして、人工知能に活かすという2つの観点が将来に与える学術的・社会的インパクトは大きいと考えられ、高く評価できる。したがって、本論文を2019年度HC賞に推薦する。
左:中村航洋さん、右:河瀬諭さん

第16回:2018年度

  • 山田雅敏(常葉大)・里 大輔(SATO SPEED)・竹内勇剛(静岡大)
    ラグビー高校日本代表チームにおける集団語と選手の言語化に関する研究
    2017 年10 月, HCS2017-64
    • 選評: ラグビー高校日本代表チーム24 名の合宿11 日間において、実際に記録した自らの身体に関する自由記述を用いて、指導者が選手に伝えた疾走に関する集団語の意味構築過程を分析した研究である.スポーツにおける指導者と選手の関係性が注目される昨今、実際のラグビー指導者と選手間の言語化に着目した研究として有用性、新規性が高い。加えて、チーム全体のパフォーマンスにどのように影響するのか、または他の集団でも同様の過程が観察されるかなど、発展性があると考えられ表彰に値する。
  • 納谷亮平(関東学院大)・石田 崇(筑波大)
    “OK, Google!” の言語学 ~ 言語使用の三層モデルからみたウェイクワードの特殊性 ~
    2018 年5 月、HCS2018-68
  • 選評: 当該論文においては、近年我々の日常生活に導入されつつあるAI スピーカーに関して、ウェイクアップワードに焦点を当て、使用抵抗感に関する分析を試みた研究である。音声インタフェースに対する言語学的アプローチは新鮮であり、今後の学際的発展が期待できる。そのため表彰に値する。

第15回:平成29年度(2017年度)

  1. 清水大地・岡田猛(東京大学)
    舞台表現における他者との相互作用のダイナミクス -コミュニケーションの隠れた次元としての距離による検討-
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.116, No.524, pp.29-34. (2017); HCS2016-95
    • 選評:研究では、ブレイクダンスという特殊な状況ではあるが、「個」と「個」の身体を介したインタラクションに注目している。観客を魅了するインタラクションのダイナミクスをダンサーが意識していないと考えられる距離から検討した取り組みは、コミュニケーションの分析に新たな一石を投じるのではないかと期待されるため、ここに推薦する。
  2. 中根愛・片桐有理佳・小林哲生・井原雅行(NTT)
    乳幼児の保護者の「子どもに対する想い」 -インタビューを基にした構成要素の抽出-
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.116, No.436, pp.97-102. (2015); HCS2016-76
    • 選評: 本論文の面白い点は、本の選び方の難しさを、子どもの発達過程によるものとするだけではなく、本を選ぶ母の「誰か(子ども)に対する想い」は、相手に”こうはってほしい”を短期的な問題解決として押し付ける部分もありながらも、それを聞いた、見た相手が今ではないが、「(自分は)こうありたい」と思ってくれるように “影響” を及ぼすこと/さらに、それを予見しながら子どもに “働きかけている” というところを構造的に捉え、分析考察しているところである。特に「将来像」という軸をインタビューの構造分析から見出した点は高い。本論文を見て、本を通しての “働きかけ” という旧来の行為は、電子的にも何物にも変わるものではない、新たな「書籍像」という未来洞察の研究にもなるのではないか。

第14回:平成28年度(2016年度)

  1. Miyuki Yasue・Akiko Nakagami(Nagoya Univ.)・Taku Banno・Keiko Nakagaki・Noritaka Ichinohe(NCNP)・Nobuyuki Kawai(Nagoya Univ.)
    Marmoset models of autism did not discriminate reciprocal/non-reciprocal interactions between third-parties
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115, No.471, pp.11-15. (2015); HCS2015-83
    • 選評:本研究はラット以上にヒトの近縁種であるマーモセット (霊長類) を対象として、健常な個体と自閉症の個体とで互恵的なヒトを識別できるかどうかを検討した。その結果、前者は互恵的なヒトを識別したが、後者はそれができなかった。バルプロ酸投与マーモセットは自閉症霊長類モデルとして妥当であることが確認され、社会性に関する基礎研究を加速する道を新たに拓いた点において、HC賞を授与するにふさわしいと考える。

第13回:平成27年度(2015年度)

  1. 斎藤博人・徳永弘子・橋本恵理子・武川直樹(東京電機大)
    リアルタイム話速変換を用いた会話における音声ループバックの効果
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115, No.35, pp.67-72. (2015); HCS2015-9
    • 選評:本研究は、聞き手の能力の欠如(聴覚障害や非母語など)による対話の不都合を解決を最終的なゴールとしている。音声速度を遅くして聞かせるというシンプルな解決策を提示しつつ、話者音声を巧妙にフィードバックすることで発話衝突などのストレスを低減可能であることを実証した。システムの完成度が高く、シンプルな方法で応用範囲も広いと期待されることことから,HC賞受賞にふさわしいと考える。
  2. 有賀玲子・永徳真一郎・佐藤 妙・定方 徹・田中智博(NTT)
    想起特性を考慮した対話的ラベリング手法の基礎検討
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.114, No.440, pp.149-154. (2015); HCS2014-99
    • 選評:本研究では、生活場面において、センサデータ変化の意味をユーザに対話的に問い合わせるインタラクティブセンシングシステムを提案している。その中で、想起に関する被験者実験を実施し、出現頻度が低い事象の方が質問対象状況を想起しやすいという結果を実験的に示した点が興味深く、HC賞受賞にふさわしいと考える。

第12回:平成26年度(2014年度)

  1. 石井 亮・大塚和弘・熊野史朗・大和淳司(NTT)
    複数人対話での話者交替に関する呼吸動作の分析 ~次話者と発話開始タイミングの予測モデルの構築に向けて~
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.114, No.189, pp.35-40. (2014); HCS2014-49
    • 選評:本研究は、呼吸動作と発話との関連性を調べたもので、3人以上の複数人対話における次話者や発話開始タイミングの推定を試み、有効性を示した。呼吸動作に着目して次話者推定を行うことは新たな試みとして興味深い。映像遅延がある場合の呼吸分析や状態遷移モデルでの予測モデル構築などの研究面での展開や、遠隔コミュニケーションなど様々な応用面での展開も考えられるため、今後のさらなる発展が期待される研究として価値が高い。
  2. 高橋 翠(東大)
    容貌と性格特性の組み合わせが人物の魅力評定に与える影響 ~知覚者側の要因にも着目して~
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.113, No.462, pp.125-130. (2014); HCS2013-126
    • 選評:本研究は、人物の顔写真と性格特性の組み合わせが人物の魅力評定に与える影響を調べたものである。多くの先行研究を整理して顔刺激を作成し調査を行っており、交際経験の有無により異性の魅力評定が異なることを示した。研究テーマが明確であり、多くの人が関心を抱くような大変興味深いものであり、交際経験の有無に着眼したことも興味深い。また、調査の計画や結果の分析などが精緻に行われており、研究の質が高い。

第11回:平成25年度(2013年度)

  1. 山口真澄(NTT)
    離れた家族をつなぐコミュニケーションの事例研究 ~電話チャンネルを用いた5年間の記録~
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112, No.455, pp.73-78. (2013); HCS2012-91
    • 選評:電話チャンネルというテレビ電話システムのトライアルについて報告している。コミュニケーションに用いられているシステムは、テレビ電話の延長線上にあるものであり、それほど新しいものではないが、5年間のデータの蓄積から得られた知見は大変有意義なものであり、貴重なデータといえる。長期間ならではの行動の変化などが報告されており興味深い。
  2. 久保賢太(JST)・岡ノ谷一夫(東大/JST)・川合伸幸(名大/JST)
    “あくび伝染”時に関する認知的・情動的共感機能の時間的遷移
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.113, No.73, pp.37-41. (2013); HCS2013-7
    • 選評:あくびの伝染というよく知られている現象は「共感」と深く関わると考えられている.他者のあくびの観察時の脳電位活動を解析することで、共感の基礎となる脳活動のプロセスの解明に迫り、認知的な共感が生じた後に情動的な共感が生じるという,質的に異なる共感の時間的関係を解明した点は非常に意義深いと思われる。

第10回:平成24年度(2012年度)

  1. 本間元康(精神研)・栗林大輔・長田佳久(立教大)・栗山健一(精神研)
    アイコンタクトの体積と性格特性
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.111, No.393, pp.11-14. (2012); HCS2011-55
    • 選評:アイコンタクトの量を体積で測定するというのがこれまでの(少なくとも社会心理学的な)先行研究では行われておらず、独自性が高いと感じた。姿勢が固定されるという点は考慮する必要があるが、相互作用場面などへの拡張可能性もあり、今後の研究展開が楽しみである。

第9回: 平成23年度(2011年度)

  1. 上出寛子(阪大)・小森政嗣(阪電通大)・川村 智(産総研)・長岡千賀(京大)
    社会的スキルと表情表出時の顔面形状の関係
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.111, No.214, pp.7-12. (2011); HCS2011-47
    • 選評: 顔画像の主成分分析によって出力した顔面表情の主成分と、質問紙によって得られた 社会的スキル得点の関係について検討している。コミュニケーション支援において有 用な手法であることが期待できるため、発表賞に推薦する。

第8回: 平成22年度(2010年度)

  1. 松田昌史(NTTコミュニケーション科学基礎研究所),八重樫海人,大坊郁夫(大阪大学大学院)
    コミュニケーションツールの違いによる3者間会話行動に関する研究(1):葛藤状況における意思決定の偏り
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.109, No.457, pp.79-84. (2011); HCS2009-87

第7回: 平成21年度(2009年度)

  1. 丹生隆之・千原晋平・石井健一・関谷かや人・屋敷田淳子(NEC)・山崎俊太郎・松橋崇史・玉村雅敏・金子郁容(慶大)
    コミュニケーション創出基盤ActiveAvatar
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.108, No.487, pp.115-120. (2009); HCS2008-77
    • 選評: 現実空間において、偶発的に出会う人々の対面コミュニケーションを創出・促進し、サイバー空間を活用しながら価値創造に繋げるコミュニケーション創出基盤ActiveAvatarを提案している。対人関係発展プロセスの各段階への遷移を支援する機能、プロフィール交換機能、簡易プレゼンテーション機能を提供しており、その有効性をフィールド実験により示している。従来のAvatarの概念を拡張する意義のある取り組みである。

第6回: 平成20年度(2008年度)

  1. 武川直樹・峰添実千代・徳永弘子・湯浅将英・瀬下卓弥(東京電気大)・立山和美・笠松千夏(味の素)
    3人のテーブルトークにおける視線,食事動作,発話交替の分析 -会話と食事動作はどう制御されるか?-
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.108, No.187, pp.31-36. (2008); HCS2008-36
    • 選評: 本研究は,食事中のコミュニケーションに焦点を当て,3者の食事中の会話映像 から視点,表情表出,食事動作,発話交替を緻密に分析し,会話への関与と食事への積極性に負の相関関係を見出した.解析対象数がまだ十分とはいえないが,このような食事中のコミュニケーションの特性に関して報告された例は少なく,新規性,今後の発展可能性の面からも評価できる内容である.
      以上の観点から,本発表はHC賞を受賞するに相応しいと判断した.

第5回: 平成19年度(2007年度)

  1. 澤田秀之・中村光宏・林恭守・木谷光来(香川大学)
    発話ロボットを用いた聴覚障碍者のための発話訓練
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.107, No.59, 125-130. (2007); HCS2007-24
    • 選評: 聴覚フィードバック学習を用いた発話システムを、聴覚障碍者の発話訓練に用いることは社会的・実際的な有効性が期待できる。本研究では、聴覚障害者を対象としたシステム評価により、その有効性と課題が評価されている。

第4回: 平成18年度(2006年度)

  1. 水上陽介(香川大)・内田啓治(エス・シー・エー)・澤田秀之(香川大)
    触覚呈示デバイスを用いたなぞり感覚の呈示
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.106, No.83, 67-72. (2006); HCS2006-13
    • 選評: 形状記憶合金にパルス電流を流して収縮させる触角提示装置を開発し、なぞり感覚を実現した。このシステムは1mm程度の狭い間隔で配置でき(従来は5mmとか1cm)、低消費電力、かつ、金属疲労も無いとのことで実用性の高さが評価できる。
  2. 松田昌史 (NTT)
    顔写真の提示が信頼行動の発現にもたらす影響
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.106, No.268, 17-22. (2006); HCS2006-44
    • 選評: 顔写真提示の有無が、互いの信頼行動の発現にどのような影響をもたらすかを実験的に調査し、ヒューマンコミュニケーションにおける新しい知見を得た。

第3回: 平成17年度(2005年度)

  1. 松田昌史・松下光範(NTT)・苗村健(東大)
    分散認知環境における集団課題達成-Lumisight Tableを用いた迷路ゲーム実験-
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.105, No.306, 37-42. (2005); HCS2005-34
    • 選評: 4人集団によるゲーム実験をLumisight Tableを持ちいることによって、条件操作などがうまく組み込まれており、集団内コミュニケーションの研究に有用であることを示している(特に、参加者に応じて与える情報、条件を操作できる点)。今後の応用が検討できる研究である。
  2. 田村和弘 (理研)
    より効果的な歩行者道案内システムの実現に向けて
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.104, No.581, 59-64. (2004); HCS2004-48
    • 選評: 人間の空間認知特性の実験をベースとした分析によって,有用性の高い歩行者道案内システムの検討を行なっている.特に環境情報(ランドマーク)を利用することで地図読みにおける整列効果をなくそうとする試みは興味深く,またその有用性に可能性が見出せる.このような基礎的研究を通して,人間の認知特性と合致したインタフェース設計への指針を得ることは意義深い.

第2回: 平成16年度(2004年度)

  1. 山田祐士・竹内勇剛 (静岡大)
    多人数同時発話型チャットシステムを用いた発話のダイナミクスと社会的相互作用の検討
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.104, No.445, 33-38. (2004); HCS2004-27

第1回: 平成15年度(2003年度)

  1. 三輪敬之・石引力・渡辺隆・篠原淳 (早稲田大)
    影を自己のエージェントに用いた共存在的コミュニケーションシステムの開発
    電子情報通信学会技術研究報告 Vol.103, No.113, 35-40. (2003); HCS2003-12