来る2019年電子情報通信学会総合大会において、電子情報通信学会と技術と社会・倫理(SITE)研究会の企画セッションとして、「科学技術者コミュニティと軍事研究:軍民両用技術と科学技術の価値」と題するシンポジウムを開催します。このシンポジウムは、学協会をはじめとする科学技術者コミュニティが軍事技術および軍民両用技術にどのように向き合うべきか考究するものです。
電子情報通信学会総合大会の一般公開のセッションは、非会員も無料で聴講ができます(部屋の入口で氏名・所属等の簡単な受付が必要です)。この企画セッションも一般公開・無料ですので、ご関心のある非会員の方も積極的に参加いただければと思います。詳細は下記の通りです。より詳しい情報については、追って以下に掲載いたします。
日時: 2019年3月20日(水) 午後 1 時~午後 5 時
場所: 早稲田大学 西早稲田キャンパス 54 号館 101 教室
※最寄り駅は、副都心線西早稲田となります。高田馬場駅からの経路等も含め、上記リンクの地図をご参照ください。
13 時 00 分~13 時 15 分 開会挨拶・趣旨説明
13 時 15 分~13 時 40 分 久木田水生 (名古屋大学大学院情報科学科准教授)
「軍民両用技術と科学技術の価値:技術決定論と社会構成主義の議論を踏まえて」
13 時 40 分~14 時 05 分 眞嶋俊造 (広島大学大学院総合科学研究科准教授)
「正戦論と軍事研究」
14 時 05 分~14 時 30 分 大庭弘継 (京都大学大学院文学研究科研究員)
「戦争と軍事研究におけるモラル・アポリア」
14 時 30 分~14 時 40 分 休憩
14 時 40 分~15 時 05 分 本田康二郎 (金沢医科大学人間科学領域准教授)
「軍事研究と科学の公有主義:理化学研究所と技術院の比較を通して考える」
15 時 05 分~15 時 30 分 村上祐子 (立教大学理学部特任教授)
「軍民両用技術において自律的知能機械対人間という枠組みは妥当か」
15 時 30 分~15 時 45 分 休憩
15 時 45 分~17 時 00 分 パネルディスカッション(PD)とまとめ
コメント1: 江間有沙 (東京大学政策ビジョン研究センター特任講師)
「人工知能と安全保障技術に関する世界的な議論の論点整理」
コメント2: 山下愛仁 (航空自衛隊航空研究センター長一等空佐)
「科学技術の軍民区別の困難性:どのように区別するのか」
※1 講演とコメントの順序およびタイトルは予定。
※2 各 PD 指定討論者は10分程度のコメントを実施。そのうえで 50 分間フロアを交えて応答&討議。
科学技術者コミュニティは軍事研究にどう向き合うべきか、現代日本の問題として、哲学・倫理学・科学技術社会論等の論者とともに討論・考察する。
日本学術会議は、太平洋戦争中の科学者の戦争協力への反省に立ち、戦後永く科学者集団の自律性の理念から軍事研究への関与を戒めてきた。
ところが、科学技術の発展・高度化とともに、軍事・民生ともに応用される両用技術が注目され、基礎科学者も軍事研究と無縁でないのではないかと疑われるようになっている。また、2015年「安全保障技術研究推進制度」が発足し、大学・公的研究機関は競争的資金に依存する中で対応を迫られている。
軍事技術と民生技術との境界はどこにあるか。とくに、人工知能に関しては、自動運転に見られるようにその境界は曖昧である。また、軍事研究への関与を拒否する立場に立つとしたら、軍事技術へのかかわりを完全に拒否することは可能であろうか。
ところで、社会学者R.K.マートンは、科学者コミュニティの理念として公有主義・普遍主義・利害の超越・系統的懐疑の4つを指摘した。科学論・科学社会分野において、軍事研究も産業研究もこれらの理念を侵害する可能性があることが指摘されてきた。すなわち、科学者は科学者コミュニティの理念(倫理)よりも、資金などの資源を提供する者の意思に従うようになり、科学者コミュニティの理念(倫理)が侵食されるという懸念が示されてきた。
たとえば、科学の研究成果は公表すべしという公有主義は、軍事研究・産業研究のもとでは、軍事機密や企業秘密の名目のもと秘匿化される懸念がある。ここでは、軍事研究の成果を学会で発表させないという、一見「倫理的」に見える判断は、科学の公有主義を損なう点で、軍事研究・産業研究の成果の秘匿化と同じ効果を有することに注意しなければならない。
技術者コミュニティは、倫理綱領の制定とその時代的変化を通じて、相対的自律性を高めており、科学者コミュニティの理念を徐々に共有するようになってきている。技術者コミュニティが軍事研究の成果の発表を拒絶する場合、やはり公有主義の理念を損なうことになるだろう。軍事技術を峻拒しようとしたことで、結果として、科学技術者コミュニティの理念が損なわれることはないだろうか。
このように、科学技術者コミュニティと軍事研究とのかかわりは、現代においてきわめて複雑なものとなっている。本企画セッションは、技術系学協会を含む科学技術者コミュニティが軍事研究にどう向き合うべきか複数の視点から議論する。
SITE研究会 副委員長
大谷卓史(吉備国際大学)
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