我が国の電力会社は、100 年間にわたり、消費者からの厳しい要求である低廉で、良質な電力を安定的に供給するために、大規模でかつ地域的広がりをもつ盤石で巨大な電力システムを作り上げてきた。
しかしながら、今回の東日本大地震により、脆くも万全といわれてきた発電設備が損壊し、緊急の供給力不足対策として需要家群毎に順次停電させる計画停電が実施された。さらに、政府の原子力発電安全性の強化への舵切りは、電力不足を全国そして恒常的なものへと拡大させてしまった。想定外の自然災害であったにせよ、このような大規模な電力不足を経験したことにより、家庭、事務所、工場、地方自治体は、電力会社に全面依存しない自前の電源を確保しておくことの必要性を痛感した。その後、再生可能エネルギー導入推進のための法案が成立したが、太陽光や風力発電等の再生可能エネルギーを導入すると,それらの出力変動により電力品質(周波数、電圧)が悪化することが懸念され、新たなエネルギー社会インフラの開発が望まれている。
ここでは、今後のエネルギー社会インフラとして注目されているスマートコミュニティ、クラスタ型ネットワークおよび国際連系を目指すスーパーグリッドについて論ずる。特に地域自治体が主体となる地産地消型電力供給システムの開発においては、大規模で高価なネットワークを一度に作るのではなく、地域や市街落特性に合わせた適正規模の供給ネットワークを作り、必要に応じて随時のネットワークを増設し、相互間を連結してゆく次世代電力ネットワークの考え方について述べる。このような地域自治体所有の「おらが村発電所」を中心に、行政機関、病院、警察、学校、避難所、通信基地、高齢者住宅を完備すれば、自然災害時のライフライン(電気、水、通信)確保が可能なスマートグリッドとなる。このような災害にも耐えうる能力は「Resiliency:回復力」とよばれ、今後の社会インフラ構築の指針となり、この考えは、今進められている東北の被災地の復興にも活用されていることを示す。 |