信号・画像処理や通信を含む広範な応用において,多くの問題が最適化問題として定式化される.従って,その一般的解法を論じることは極めて重要である.最適化問題は,一般に,最小化される評価関数と,解の性質を規定する制約条件の組み合わせで与えられる.これらの評価関数および制約条件が共に「凸(とつ)
:convex」と呼ばれる条件を満たしている場合には,その最適化問題を高速かつ低計算量で解決するための統一的指針(反復アルゴリズム)が提案されている.本講演では,その基本概念と代表例を解説する.第一部では,勾配・距離射影など,最適化のための有用な数理的ツールに関する基礎事項について説明し,凸制約付き最適化問題に対するポピュラーな反復解法である射影勾配法(Goldstein '69)を紹介する.第二部では,距離射影の一般化である「近接写像」を具体例とともに紹介し,射影勾配法の一般化である前方後方分離型近接点法(Proximal
Forward-Backward Splitting Method)とその収束定理を述べる.第三部では,前方後方分離近接点法の代表例である ISTA法(Iterative Shrinkage/Thresholding Algorithm)を紹介し,応用例を示す。 |