近年、幅広い潜在的な応用があるため、車車間ネットワークが注目されている。車車間ネットワークは、極めて動的なネットワーク・トポロジや短い接続持続時間、狭い通信範囲と干渉が原因で、接続性が不安定という特徴がある。
この接続性の制約を解決するため、車車間遅延耐性ネットワーク(VDTN- Vehicular Delay-Tolerant Networks)が現れた。VDTNは遅延耐性ネットワーク(DTN - Delay Tolerant Network)の一種であり、疎な結合や長遅延、高エラー率など接続性に問題のあるネットワークでの通信を可能とする。車車間ネットワークで想定される切断や長遅延の状況に対処するため、VDTNではストア・キャリー・アンド・フォワード(蓄積運搬型転送)手法を用いる。VDTNで生じるトポロジ障害は、ユニキャストとマルチキャスト双方のアプリケーションに有効なルーティングプロトコルの設計という特有の課題をもたらす。
今回の講演では、VDTNでのルーティングの試みや、ユニキャストとマルチキャスト双方でのルーティングのための新手法、および、一般的に使用されるモビリティモデルの解析について述べる。さらに、基本的なVDTNルーティング機構について、メッセージ到達率と到達所要時間、バッファ使用率などの重要な指標を用いての性能解析について紹介する。 |