電気・情報系3学会(電子情報通信学会、情報処理学会と電気学会)は合わせると約10万人の会員を有するIT系の学会であります。この3学会が1月29日に内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に対して「高等教育機関におけるネットワーク運用ガイドラインの制定と公開」に関する報告を実施し、同じ日に文部科学省 大臣官房 情報化推進室に同ガイドラインの説明をするとともに、高等教育機関に無償提供し有効に活用してもらうことに対する協力依頼をしました。
■1.3学会からの提言と今回の報告との関係
上記3学会は丁度2年前に同戦略本部に対して「21世紀IT社会の健全な発展に向けて」と題した提言を行い、政府への要求と同時に学会として自主的に取り組む内容を明確にしました。今回その中の重要な約束の1つである「高等教育機関におけるネットワーク運用ガイドライン」が電子情報通信学会の中に作られたワーキンググループの活動により完成したことを提言先の同戦略本部に報告すると同時に、実際に活用する場の監督官庁である文部科学省に提供を申し出たものであります。
● 関係記事 http://www.ieice.org/jpn/teigen/010129.html
■2.ワーキンググループによる検討の経緯と委員構成
同ワーキンググループは従来の枠組を超えて、技術系だけの集まりでなく法律家、倫理専門家、など人文系も含めて広い分野から人材を集めて構成されました。同ガイドラインはこのグループによる2年間の検討を通して完成されたものであります。
これまでの検討の経緯を2.1に、2.2にワーキンググループの委員構成を示します。
2.1 作成の経緯
(1) |
平成13年2月:全領域に渡って全委員で討論を行い問題の洗い出しを行った。 |
(2) |
平成13年10月:4領域に分割し、個別に討論を行い素案を作るとともに、適宜
全体討論を入れて修正をした。 |
(3) |
平成14年3月:全体を総括して中間報告を作成した。 |
(4) |
平成14年9月:第一版(暫定版)を作成し、パブリックコメントを求めた。 |
(5) |
平成15年1月:パブリックコメントを反映し、第一版を完成させた。 |
2.2 担当委員
主 査 : |
三島健稔(埼玉大) |
委 員 : |
三木哲也(電気通信大) 冨士原裕文(富士通)
曾根秀昭(東北大)
中山雅哉(東京大) 金谷吉成(東北大) 丸橋透(富士通)
楠元範明(早稲田大)
砂原秀樹(奈良先端大) 高橋郁夫(弁護士)
稲葉宏幸(京都工繊大) 岡田仁志(国立情報学研)
近藤佐保子(明治大)
中西通雄(大阪工大) 原田康也(早稲田大)
板井孝壱郎(宮崎医科大) 辰己丈夫(神戸大) |
オブザーバ: |
高倉弘喜(京都大) 郷原正好(国立情報学研) |
■3.ネットワーク運用ガイドラインの必要性とガイドラインの位置付け
高度情報化社会におけるネットワークにおける功罪は近年騒がしくなってきましたが、日本はその対応策が非常に遅れているのが実情です。特に大きな問題はネットワークの運用管理に対する上位管理者の理解不足にあります。すなわち、これまで多くの組織が採用してきましたボランティアベースの職員に頼った従来型管理では、現在起こっている問題、今後発生すると思われる新しい問題には対応できないことは明白でありまして、組織として要員、予算を準備する必要があります。
このガイドラインは具体的な規程を示すものではなく、高等教育機関が自校のネットワーク運用のルールを作成する時に考慮すべきことがらを具体的に示したものであります。内容的には4章からなっており、
第1章は総論として運用ポリシー策定の考え方、
第2章は運用管理において実際に想定される留意点、
第3章はネットワーク利用者の権利と責任、
第4章は教育と倫理、
という観点でまとめられております。
さらに、付録として、利用規定違反行為への対応モデル、教育カリキュラムの例、関連法規についても述べております。
■4.ネットワーク運用ガイドラインの利用の仕方
このガイドラインは電子情報通信学会のホームページに既に掲載されており、各ユーザがそこから無償でダウンロードして利用できる形態をとっております。同ページには本文と概要を理解したい方にために梗概も合わせて掲示してあります。URLアドレスは以下の通りです。
● URL http://www.ieice.org/jpn/teigen/nwgl.html
電子情報通信学会では平成15年度にこのガイドラインを英文化し、東南アジアでの利用も進めていく予定であります。
■5.製本したネットワーク運用ガイドラインの必要な方には
個人的な利用に対しては上記しましたようにホームページからのダウンロードで対応していただけますが、製本されたネットワーク運用ガイドラインを利用したいという方には別途印刷物を用意しております。こちらは有償になりますがホームページからの申込みで入手することが可能です。ただし、在庫が不足した場合はしばらくお待ちしていただくことがあり得ますが、その節はご協力をお願い致します。
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