■5. 軌道上衛星に向けて―CubeSat計画(5)─

 CanSatで得た成果をベースに,東大,東工大では軌道上に向けたプロジェクトCubeSat計画が進められている.これは1999年のUSSSでやはりスタンフォード大学のTwiggs教授より提案された10cm立方,1kg以下の超小型衛星プロジェクトである(図3).参加する大学・企業がそれぞれにCubeSatを作り,それを3個ひとまとめにしてCarrierに装てんし,そのCarrierを数個上段ロケットに取り付けて打ち上げ,Carrierのふたを空けるとバネで飛び出すような簡単な仕掛けで衛星を放出するという仕組みで,現在,日本からの2機,アメリカからの22機が同時に放出される計画である.2002年11月にロシアのDneprロケットで最初の打上げが行われることが決まっている.

 



図3 2002年打上げ予定の東大CubeSat軌道上想像図
10cm立方,1kg以下の超小型衛星で,衛星のバス機能の確認とカメラミッションを行う.

 

 CanSatで培った技術を,今度は宇宙環境に耐えるものにレベルアップさせていくという大きなステップが必要であり,学生は熱真空,放射線,振動,長距離通信試験など,新たな挑戦を行っている


■6. 大学小型衛星の将来展望

 我々の手作り衛星の活動は教育目的のみをねらったものではなく,技術創出段階における試行錯誤の「手」を増やすことで宇宙開発の底辺を広げ,革新的な技術に対し迅速で安価な技術実証手段を提供するという点において,宇宙開発に大学独自の貢献をし,やや閉塞的になっている宇宙開発を活性化することを大目標にしている.このような活動を更に強化していくためには,宇宙機関やメーカーからの資金・技術・試験設備・部品提供などの面でのサポート,衛星の周波数獲得・輸出などの手続き的な面での指導が極めて重要であると考える.また,大学側としても,技術交流,経験やノウハウのトランスファー,機器の共同開発・共同購入,試験の共同実施などの面で,一層の連携強化を図っていく必要があろう.2001年の7月に,このような目的を果たすために,「大学衛星コンソーシアム」(4)を設立し,現在,会員と支援機関を募集中である.我々の活動の趣旨を御理解頂き,関係各方面からの一層のサポートをお願いすると同時に,大学側も切磋琢磨して,将来,サレー大学SSTLのように,日本の中から,海外に衛星バスを売れる大学が生まれることを期待してやまない.



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