令和4年度 電気・情報関係学会北海道支部連合大会
特別講演

演題

絶滅危惧種シマフクロウの生態を探る

講師

北海学園大学工学部生命工学科 教授
早矢仕 有子 先生

日時

令和4年11月5日(土) 13:00–14:00

場所

オンライン開催

概要

シマフクロウは,日本では北海道のみに生息する世界最大級のフクロウである.20世紀初頭までは北海道全域に分布していたが,主食である魚類の生息環境悪化と繁殖に必要な広葉樹の大径木を有する天然林の消失により道東を除く地域から姿を消し,1970年代には絶滅の危機に瀕して国の天然記念物に指定された.1984年に開始された国による保護事業継続の成果により北海道の個体数は回復傾向にあるが,国内に約170羽,国外の分布域であるロシア極東部を加えた全個体数は2,500羽未満と推定されており,地球上での存続が危ぶまれる状況は続いている.演者は,シマフクロウとその生息環境の保全に貢献するために,1987年から生態研究に取り組んできた.本講演では長く複雑な親子・夫婦関係等,シマフクロウの興味深い生活史を説明するとともに,保護施策の概要と直面している課題を明らかにする.また,情報通信技術の導入により,遠隔地に生息する絶滅危惧種シマフクロウの繁殖を市民の目で見守る取組を紹介し,現状の試行段階から市民科学への発展可能性についても述べてみたい.

講師略歴

大阪府池田市出身.大阪府立豊中高等学校卒業後,北海道大学理Ⅲ系入学.同大学農学部農業生物学科卒業,同大学院農学研究科博士前期課程修了,同博士後期課程単位取得退学(1997年3月).博士(農学).北海道大学理学部附属動物染色体研究施設研究員,帯広畜産大学研究生を経て,2002年4月から札幌大学法学部専任講師.同准教授,教授,同大学地域共創学群教授を経て,2017年4月から北海学園大学工学部生命工学科教授.

北海道東部の厳冬期にフィールド調査を可能にするのは温泉の「湯力」と信じており,温泉抜きの野外調査には気合が入らない.また,夜型の傾向が強いため,早朝に活発化する昼行性鳥類の研究も不得手.

2022年3月に北海学園大学出版会より「シマフクロウ家族の物語」を上梓しました(https://www.hgu.jp/about/hokkai-gakuen-university-press.html).ご一読いただけると幸いです.