【 設立の背景と委員会の目的 】

無線電力伝送は,電磁波を用いて無線で電力を伝送する技術であり,従来から研究されてきた電波伝搬を用いるもののほか,近年では電磁誘導や共振を用いて伝送する方式の研究が活発化しており,RFIDなどのような近距離・小電力での応用が展開,普及してきています.さらに,携帯電話やパソコン等への中電力非接触充電応用,電気自動車等への大電力非接触充電応用も始まっています.このように,従来のマイクロ波送電のみならず,電磁誘導や共振といった原理を応用したものの研究開発が活発しつつあります.

また,国際内外において,無線電力伝送の標準化や実用化が進んでいます.海外における無線電力伝送の実用化団体としては,電磁誘導方式を進めるWireless Power Consortium(WPC ; Qi規格),磁界共鳴方式を進めるAlliance for Wireless Power (A4WP)等があります.また,国内では制度化,標準化を推進しているBroadband Wireless Forum (BWF)があり,実用化団体としては,周辺の分散エネルギーを「収穫」するエネルギーハーベスティングを進めるEnergy Harvesting Consortium (EHC)等が活発に活動しています.さらに,2013年4月にはマイクロ波送電を中心とした実用化を目指すワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアム(Wireless Power Transfer Consortium for Practical Application ; WiPoT)と独自の共鳴送電方式の普及を目指すWireless Power Management Consortium (WPM-c)も設立されています.その他無線電力伝送技術の具体的応用を目的として,自動車技術会なども活発な活動を行なっています.

さらに,無線電力伝送に関する国際的な学術活動も活発化しており,2011年度に立ち上げられた国際学会であるIEEE MTTS Microwave Workshop Series on Innovative Wireless Power Transmission (IMWS-IWPT2011)は,2012年度の第2回開催を経て,2013年度からはIEEE Wireless Power Transfer Conference(WPTc2013)として独立し,活発な活動が行われています.無線電力伝送を専門とした国際学会以外にも,2013年度だけでも12種以上の国際学会で無線電力伝送に関するオーガナイズドセッション等が開かれています.

このように,無線電力伝送の実用化への強い期待と学問領域としての体系化は国内外で急激な勢いで高まってきている背景で,無線電力伝送専門委員会を時限研究会から新たに常設研究会としました.常設とすることによって,他の電子情報通信学会の研究専門委員会との連携,協調が図られ,無線電力伝送のみならず様々な研究領域と融合した更なる発展が期待できます.


【 本研究専門委員会で取り扱う主な分野 】

無線電力伝送
マイクロ波送受電,電磁誘導, 共鳴送電, レーザ送受電,エネルギーハーベスティング,システムの原理と構成法
送受電装置・伝送
カップリング,無線電力伝送用コイル,共振器,送受電アンテナ,無線電力伝送のための到来方向推定,レトロディレクティブシステム,無線電力伝送用フェーズドアレーアンテナ,プラズマ中無線電力伝送
RF回路技術
電源回路,BPF,マイクロ波能動素子,マイクロ波管,レクテナ,インバータ,高出力増幅器,整流回路
応用技術
宇宙太陽発電, 携帯電話, モバイル機器, 電気自動車, センサーネットワーク, ユビキタス電源,RF-ID・無線タグ
環境問題
電子機器への電磁干渉,無線通信への電磁干渉,動植物や生態系への電磁波の影響,パブリックアクセプタンス,温室効果ガス削減技術