光エレクトロニクス研究会について

光エレクトロニクス研究専門委員会(略称OPE研究会)は電子情報通信学会のエレクトロニクスソサイエティを構成する研究会の1つです。

OPE研究会へのご連絡はope-kanjidan(at)mail.ieice.orgまで。

光エレクトロニクス研究会 主要研究分野




光エレクトロニクス関連技術ロードマップ

電子情報通信学会では2012年度に科学・夢ロードマップと銘打って、2050年までに直面するであろう様々な課題に対して電子情報通信(ICT)技術の研究開発のビジョンを作成・共有し、世の中に発信し、ICT技術がどのように人間社会に役立つか、を示すことを目的としたロードマップを作成しました。

OPE研はLQE研、IPDA時限研専、UFO時限研専と協力して光技術の将来像を作成しております。

なお、電子情報通信学会のロードマップについては2013年総合大会「TK-6電子情報通信学会における2050年技術ロードマップ作成の試み」において発表しています。



光通信システム関連技術

 光通信システム技術を、主に伝送距離に対してテレコム(長距離基幹系)・ テレコム(メトロ・アクセス・モバイルバックホール)・データコム・コン ピュータコムに分類した。いずれも伝送容量・伝送距離積の発展は10年に対 しておよそ10倍の伸びを想定している。一方、低消費電力化に対しては10 年で10分の1を目標に進んでいくであろう。

(1) 2012年~2020年

長距離基幹系においては、しばらくは変調方式の多値(直交振幅変調(QAM))・多搬送波(直交周波数分割多重変調(OFDM))の発展とともに、マルチコア・マルチモード伝送を代表とする空間多重(SDM)の発展を中心に進展すると考えられる。その結果、伝送容量は1ファイバ当たり1エクサビット・kmを超えると予想される。また送受信器の集積化はIII-V族化合物半導体を中心に進んでいくであろう。  メトロやアクセス・モバイルバックホール、あるいはデータコムでは、複数機能を多数集積化し、さらに並列化した送受信器の高密度集積化が顕著に進展し始めると考えられる。2010年代に入って実用化レベルが顕在化し始めた光集積回路(PIC)の集積数は、2020年には1000素子に到達すると思われる。材料としては、成熟度の高いIII-V族化合物と、2000年代後半から急に広がり始めたシリコンフォトニクスがしばらく競合すると思われる。  コンピュータコムでは、更に限られた収容スペース内での高密度集積化が重要であるため、送受信器の低消費電力化が中心となって高効率化が進んでいくであろう。

(2) 2020年~2040年

 長距離基幹系では多値変調の進展と同時にSDM技術も1ファイバ当たり61コア、1コア当たり20モードまで到達する可能性がある。このレベルを実現するためには、2010年レベルのPIC技術よりも損失を低減する必要性が高まると考えられ、極低損失導波路や高精度な導波路加工技術が登場するであろう。  メトロやアクセス・モバイルバックホール、あるいはデータコムでは、1素子あたりの集積素子数が10000~100000に到達すると考えられる。その実現のため、前述の極低損失技術以外に損失補償用半導体光増幅器の活用およびその無温調化技術が組み込まれるであろう。また、光配線を積層する3次元化も登場すると予想される。PICはもはや送受信機能を超え、電子回路と一体化された光電子融合集積回路の形態に移行していくであろう。材料系としては、シリコンフォトニクスの占有率がかなり増えていくと予想される。  コンピュータコム用途の低損失送受信回路技術に対しては、既存の性能を超えた革新技術が必要になり、低消費電力で動作する光源やポリマーなどの新規材料の割合が増えていくかもしれない。

(3) 2040年~2050年

 長距離基幹系ではゼータビット・km、メトロ・アクセス・モバイルバックホール系ではエクサビット・km、コンピュータコムではペタビット・km級に到達する。光ファイバ自体が高度なマルチモード・マルチコアのレベルを同時に持ち合わせる状況となる。また高密度集積回路技術には、プラズモニクスなどナノ技術が駆使される時代になろう。



ネットワーク規模ごとの進展

 ネットワークとして光通信だけでなく、センサーネットワークも対象とした。そのため、縦軸にはネットワークあたりのノード数をとっている。  長距離基幹系は基本的に1ページ目の技術の進展をたどるが、ノード数としてはポイント間の用途からは大きく変化せず、その信頼度を向上させることによって永続的に成長を支える基盤ネットワークの実現を目指していく。  メトロ・アクセス・モバイルバックホール系としては、2012年~2020年は波長選択スイッチを用いたROADMの機能向上とネットワークへの導入を中心に進展していくと考えられる。2020年くらいから光パケットネットワークとの共存が始まり、光電融合型から実用化されていくであろう。2040年以降、全光化・光時空間制御技術が発展し、時間・空間を意識しないコミュニケーション社会や、生体に倣った動作に基づく低消費電力ネットワークの世界が進展していく。  インターコネクションにおいては、シリコンフォトニクスでの集積化が2020年にかけて徐々に浸透し、2020年以降には席巻されるかもしれない。2050年に向けて絶対に壊れないクラウド・サーバの実現を目指していく。  センサーネットワークにおいては、2020年までは集中制御によるノード数の拡大を行い、扱うデータ・レートもkbpsからMbpsへと高速化していくであろう。更に、2040年以降には自律分散の方向へと変化していき、速度もGbps級に進展していく。その結果、どこでもつながる安全安心社会、故障部分を診断し、修復する自己再生ネットワークが実現されているかもしれない。