環境電磁工学研究専門委員会設立趣意書(昭和52年12月20日設立当初の原文)




 最近の電子技術の発達は目ざましく、その社会生活に与える恩恵には、はかり知れないものがあるが、その反面、電子機器の種類および数の増加により、不要電磁エネルギーの発生や機器相互間の影響が問題になってきている。この不要電磁エネルギーは、ラジオ、テレビ等に妨害を与えるのみならず、多くの計測システム、自動制御システム等にも侵入し、それらの動作に悪影響を与え、機能をそこなうのみならず大事故に及ぶことも考えられ、人命を危うくすることもありうる。
 さらに、最近のように電磁気が人間社会にかかわり合う度合が高くなるにつれて、その人間に与える影響も問題とされてきる。
 この種の問題は、単に電気工学の分野だけでなく、他の分野の工学、理学、数学、社会学、経済学、医学等とのかかわり合いも深く、人間に関連あるあらゆる学術技術を結集し、環境問題の一部として研究を推し進めなければならない時期にきていると考えられる。
 このような問題に対する学会活動が重要であることは、広く有識者によって指摘されている所であるが、我国では残念ながら未だ十分な活動がなされていないと思われる。
 諸外国においては、この分野の学会活動が数年前より活発に行われてきており、各専門分野が協調し、総合的にこの学際的研究を推進してきている。
 我国のように、電子機器の分布密度が高く、かつまた経済を工業製品の輸出に依存している国では、むしろ外国に先んじてこの方面の研究がなされるべきであったと言えるであろう。
 以上の客観的情勢により、電子通信学会としても、まとまった研究専門委員会の設立が要望されるに至った次第である。

 さて、環境電磁工学は次のように定義される。
「電磁エネルギー利用の発達にともない、変化してきた地球および天体の電磁気的周囲環境の把握とその予測、さらに調和のとれた環境とするための制御方法、電気装置のあり方を追求し電磁環境の調和と電磁エネルギーの有効利用に資する工学、理学、医学、経済学、社会学等の多方面にわたる学際的研究の基礎学問分野」
 特に電子通信学会環境電磁工学研究専門委員会では、その電子通信技術の面からこの問題をとらえ、広く問題の解決に寄与する。

本研究専門委員会の扱う分野
(1)環境電磁工学のための電磁理論
(2)環境電磁工学のための回路理論
(3)環境電磁工学の論理モデル
(4)電磁波発生源(人工雑音、都市雑音、等)の特性とその測定
(5)環境電磁工学に関する技術(遮蔽技術、雑音フィルタ、ボンデング、不要反射防止技術等)
(6)電磁環境の予測
(7)不要電磁界排除特性
(8)周波数の有効利用
(9)社会システム(電力、輸送、放送、通信情報、医療、教育、等)の環境電磁工学
(10)電磁環境の生体及生態への影響

電子通信学会の他の研究専門委員会との関連
 次の研究会が特に関連が深い。
・回路とシステム理論(環境電磁工学のための回路理論、環境電磁工学の論理モデル、雑音フィルタ)
・マイクロ波(環境電磁工学のための電磁理論、不要放射の防止、不要反射の防止)
・医用電子・生体工学(医療システムの環境電磁工学、電磁界と生体の関係)
・アンテナ・伝播(雑音の放射、不要反射、電磁環境の測定)