DEWS2004論文集刊行にあたって

ワークショップ委員長:横田 治夫(東京工業大学)
プログラム委員長: 角谷 和俊(兵庫県立大学)

電子情報通信学会データ工学ワークショップ(DEWS)は,データ工学に関する様々な研究テーマをトピックとして, 若手研究者が中心となって毎年早春に開催されるワークショップです.第15回データ工学ワークショップ(DEWS2004)でも,データ工学分野におけるクラシカルなテーマから,萌芽的,先進的,先見的なテーマまで,幅広い内容の発表が行われました.今回の会場は,伊勢志摩ロイヤルホテルの会議フロアーで,リアス式海岸の様式美と,豊かな海の幸に満ちた伊勢志摩を一望しながら,パラレルセッション形式で3日間に渡り開催されました.300名弱の多数の参加者を迎え,データ工学に関する研究発表,情報交換,および議論の場として活発な活動が行われました.

DEWS2004では口頭発表セッションに加え,インタラクティブセッションを導入いたしました.インタラクティブセッションは,従来のポスターセッションに相当するもので,これまでのポスターセッションの利点を生かしつつ,さらに,発表者と参加者の相互のやり取りを強化するために,3つの新たな試みを導入いたしました.(1)デモンストレーション,(2)ポスターへのコメントの貼り付け,および,(3)ビデオ撮影です.さらに,インタラクティブセッションのポスターは,初日から最終日まで,ワークショップ期間中常時展示し,参加者が任意にポスターを見ることが出来るようにいたしました.また,初日の夕食後と2日目の午後には,プレナリーセッションとして全参加者が発表者によるデモを見ることが出来る時間を設定いたしました.

さらに,従来の形にとらわれない自由な発表形式への試みとして,3件の招待講演による特別セッションを企画いたしました.デモを中心とした実演形式の発表は非常に興味深く,参加者にとっては研究発表の際の新たな手法のヒントとなり得たと考えております.

一般論文募集では,フルペーパーとエクステンディッド・アブストラクトの2つの投稿カテゴリーを用意いたしました.募集の結果,フルペーパー投稿が80件,エクステンディッド・アブストラクトが103件,計183件の投稿をいただきました.前年度に比べ,約40件を上回る投稿数となりました.今年度は,査読委員の負担を軽減するために,あらかじめプログラム委員数を大幅に増員しておりましたが,結果的には投稿想定数を大幅に上回り,プログラム委員の方々には,これまでと同様に一人当たり約10件の論文を査読いただくことになりました.なお,査読委員の方々からは,これまでのDEWSと同様に,改善のための助言やポジティブな評価をいただくというスタンスで,有意義なコメントを多く賜ることが出来ました.査読の結果,177件を採録とし,104件の口頭セッション発表,73件のインタラクティブセッション発表と決定いたしました.

一方,招待講演として,タイのアジア工科大学のVilas Wuwongse教授に"Semantic Web and Databases" と題した講演をお願いいたしました.また,チュートリアル講演として,弁理士の谷川英和氏(IRD国際特許事務所)に「学生のための特許入門」と題した講演をお願いいたしました.また,DEWS2003最優秀論文賞・優秀論文賞受賞の3名の方々に,データストリーム・連続メディアのトピックでミニサーベイをして頂きました.この他,日本データベース学会の企画として,「DBSJアワー」というセッションが設けられ,ビジネスインテリジェンス研究グループの活動報告,および,ビーコンIT 代表取締役会長兼社長の石井義興氏に対する功労賞授与式と受賞記念講演が行われました.さらに,昨年に引き続き, Webコンテンツ自動作成ツール「MPMeister」を用いて,発表の様子をビデオ撮影いたしました。

ワークショップ後,プログラム委員会での審議により,フルペーパー投稿の中から,DEWS 優秀論文賞3件を選定いたしました.これらの論文は、電子情報通信学会和文論文誌DIの研究会推薦論文の対象となります.また,会場でのアンケート結果および座長評価をベースに,DEWS優秀プレゼンテーション賞として口頭発表セッション2件,インタラクティブセッション発表2件の計4件を選定いたしました.また,これとは別に,日本データベース学会では座長推薦によるDBSJレターを発行することになっております.

なお,最終プログラムでは,2月6日に逝去された京都大学大学院情報学研究科の故上林弥彦先生の追悼セッションを急遽設定いたしました.上林先生は,日本のみならず世界のデータベース研究に対して計り知れない貢献をされてこられました.先生のご遺志を少しでも若手研究者に伝えるため,「上林先生の目指されたもの」と題し,ゆかりの深い先生方にパネリストとしてご登壇いただき,上林先生のご偉業やお人柄を偲びました.また,会場には上林先生追悼ルームを設置し,先生のお写真や関係された出版物を展示いたしました.追悼ルームにおいては,大勢の方々にご記帳頂きました.

最後になりますが,今回のワークショップ開催に際しまして,大変多くの方々にご支援・ご協力をいただきました.この場をお借りしまして御礼申し上げます.共催いただいた日本データベース学会会長の増永良文先生,招待講演を頂いたVilas Wuwongse先生,チュートリアル講演を頂いた谷川英和様,特別セッションでご講演いただいた皆様,ミニサーベイでご講演いただいた皆様に感謝いたします.また,上林先生追悼セッションで貴重なお話を頂きました増永良文先生,喜連川優先生 ,田中克己先生,吉川正俊先生に御礼申し上げます.さらに,ビデオ撮影に協力いただいたボランティア学生の皆様,DEWS2004のHPおよびオンライン論文集の作成・管理をいただいた京都大学田中研究室の学生諸氏,論文査読を頂いたプログラム委員の皆様,プログラム委員長補佐として多くの支援を頂きました宮崎純先生,チュートリアル委員長の富井尚志先生,一般・特別セッション担当の寺田務先生,インタラクティブセッション担当の田中浩也先生,財務担当の天笠俊之先生,ローカルアレンジの灘本明代様に感謝いたします.

DEW2004を運営するにあたり,これまでの良き伝統を守りながらも,新しい風を吹き込みたいという思いがありました.こうして,ワークショップを成功裏に終えることが出来ました今,これらの試みがデータ工学研究のますますの発展に寄与できたものと信じております.これも,ひとえに本ワークショップに対する皆様の意識の高さ,および,ご協力によるものであったと心より感謝いたします.


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