開発物語
エコキュート開発物語
1.はじめに
Passive Optical Network(PON)等の通信方式を用いて局舎とユーザ間を結ぶ光アクセスネットワークシステムの経済化により,Fiber to the Home (FTTH)の国内での契約数は2017年に3,000万を超え(図1),現在では4,000万に達する規模となった(1).
本稿ではこの「FTTH 3,000万加入」を実現する原動力となった開発内容や,実用化に際して乗り越えた障壁(苦労話)を紹介する.しかし,本開発物語は20年前のことであるから,現在の通信システムの開発に携わる技術者の方々にとっては,単に「おじさんの過去の栄光話」になりかねない.そうならないよう,現在の業界が置かれている状況と照らし合わせて,現在の開発に生かせる部分についても考えてみたので,最後の章(「8. まとめ」の前)だけでも一読頂けると幸いである.
光アクセスネットワークが図1のように顕著な普及を達成した背景としては,言うまでもなく2000年辺りにスタートしたインターネット接続サービスの広がりと高速化(サービス帯域の拡大)に対するニーズの高まりが挙げられる.
インターネット接続サービスを実現する当時の手段は,各家庭で利用されていた固定電話のメタル線を伝送路として活用したDigital Subscriber Line (DSL)方式やIntegrated Service Digital Network (ISDN)方式が主流であった.しかし,これらメタル伝送方式によるサービスでは,通信事業者内装置(すなわち電話局)からユーザ宅までの伝送路上の帯域に限界があり,増大するサービス帯域の拡大ニーズに応えられなかった.更に,局からユーザ宅までの距離,つまり伝送距離の差異によってサービス帯域が変わってしまうという,ユーザ間の不公平性の問題があった.
電気信号を伝送するメタル伝送方式に比べ,光ファイバの広帯域性と低損失性を活用した光伝送方式は,電話局からユーザ宅という高々20 km程度の伝送距離においては,サービス帯域及びユーザ間公平性の点で圧倒的な優位性を持つ,言わばゲームチェンジを生む技術エリアであった.ただし,光伝送方式はメタル伝送方式に比べて機器コストが大きく,低価格化が課題であった.
局内装置及び局からユーザ宅付近までの光ファイバを複数のユーザで共有(割り勘)することで,システム全体のコストを低減するPON方式を用いた光アクセスネットワークは,このような背景の下で華々しく登場した.図2では,DSL方式及びPON方式の中でも主流であったAsymmetric DSL(ADSL)とGigabit Ethernet PON(GE-PON)(2)の比較を示している.

図1 固定系ブロードバンドサービス加入者数(国内)
(出典) 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」(1),各年版を基に作成