解説論文 
アンテナ・伝搬研究者の角度から見るメタサーフェスとその向かう先

小特集
第6世代移動通信システム(6G)の実現に向けての取組み

アンテナ・伝搬研究者の角度から見る
メタサーフェスとその向かう先

Metasurface from the Angle of View of Antenna and Propagation Researchers and Its Angle of Departure

村田健太郎 Kentaro Murata† 

村上靖宜 Yasutaka Murakami†† 

久世竜司 Ryuji Kuse††† 

Summery 近年,電波伝搬特性を自在に制御可能とする技術としてメタサーフェスが注目を集めている.特に本稿では,メタサーフェスを広義的に「平面状に構成された媒質であって,入射した電波の伝搬特性に受動的に作用可能なものの総称」と定義し取り扱う.メタサーフェスの機能は,入射した電波の再放射と解釈することができる.そのため,開口の大きなメタサーフェスにより,伝搬過程で空間に拡散される電波を効率良く回収でき,これをある点に収束させることで電波強度を向上できる.また,独立に制御可能な素子を多数用いたメタサーフェスにより,より自由度の高い電波伝搬制御が可能となる.一方,受動構成であるがゆえに電波の送受信ができず,原理的にそれ自体ではチャネル推定が不可能であり,上記の効果を最大限に引き出すことができない.更に,既存のリレー技術や分散アンテナ配置技術と比較し,その費用対効果が明らかとされておらず,有力なアプリケーションが欠如していることが問題提起されている.そこで本稿では,メタサーフェス実用化における上記二つの障壁に対し,アンテナ・伝搬研究者の視点から現実的な解の提案を試みる.

Key Words メタサーフェス,reconfigurable intelligent surface,アンテナ・伝搬,over-the-air(OTA)試験,6G

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序論

我が国では,2020年に第5世代移動通信方式(5G)のサービスが開始となり,40年前の音声伝送のみの1Gと比較すると,最大通信速度は約100万倍に劇的な進化を遂げ,今日では4K/8Kストリーミング,仮想現実・拡張現実といった大容量アプリケーションを超低遅延で利用できるようになった(1)(図1).この無線通信速度の指数関数的な進歩は止まることはなく,次世代移動通信規格Beyond 5G(6G)においては,100 Gbit/sを超える超高速無線通信の実現に向け研究開発が進められている.

このような無線通信高速化の背景には,「広帯域化」・「空間多重化」・「多値化」の三つの技術の存在がある.これらはしばしば,キャリヤを車両とみなした荷物(データ)の輸送に例えられる(図2).まず,「道路の拡幅」は「広帯域化」に相当し,シャノン・ハートレーの定理が示すように,帯域が広いほど通信路容量は増加する.また「複車線化」は「空間多重化」に対応し,MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術により,複数のデータを同時並列伝送することが可能となる.そして,1車両当りの荷物の「積載数の増量」は「多値化」に相当し,多値変調技術により1シンボル当り数ビットのデータを伝送することが可能となる.つまり,従来の無線通信では,車両の発車前,すなわち電波が発射される前に適切な前準備(信号処理)をしておくことで,効率的なデータ伝送を可能としてきたのである.

ところが近年,ミリ波・テラヘルツ波といった極めて周波数の高い=直進性の高い電波の活用が検討され始め,図2 (a)に示すように送受信アンテナが見通し外に存在する場合,道路(通信路)が遮断されてしまう可能性がある.このような状況下で………

図1 無線通信速度の進化の歴史(1)

図1 無線通信速度の進化の歴史 (1)

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岩手大学,盛岡市

Iwate University,Morioka-shi,020-8551 Japan

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電気通信大学,調布市

The University of Electro-Communications,Chofu-shi,182-8585 Japan

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熊本大学,熊本市

Kumamoto University,Kumamoto-shi,860-8555 Japan