子どもに教えたい通信のしくみ 
通信における標準化の目的とその役割

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通信における標準化の目的とその役割

一橋大学 江藤 学
Manabu Eto

1. はじめに

本号の小特集は標準化です.では標準化とはどのような活動でしょうか.まずは標準化という活動の目的と効果について考えてみます.

標準化活動とは何をするのでしょうか.言葉を見ると「標準」+「化」ですから,「標準」にしようとする活動です.では,「標準」とは何でしょう.この言葉は日本ではいろいろな意味を持っているので,定義しにくい言葉です.一番混乱しやすいのが「規格」という言葉との違いです.英語に訳すときには標準も規格もstandardと訳されることが多いのですが,実はこの二つは大きく意味が異なります.

「規格」は,誰でも作ることができます.個人でも,会社でも,国でも,それを作った人たちが自分で使うために整理した決まり事が規格です.法律も国が作る規格の一種です.ですから,規格の英訳としてはstandardだけではなく,criteria,specification,rule,protocol,regulationといった単語を使う方が正しい場合が多くあります.

規格とは,二者間で情報のやり取りをするための決まりと考えることもできます.図1を見て下さい.人と人,機械と機械がコミュニケーションするために,様々な規格が必要です.言語,文字といった自然発生的に規格化されたものもあれば,法律や通信プロトコルのように人工的に作られたものもあります.そして,人が機械を使うためにも,機械の状況を理解するためにも様々な規格が必要です.

そして,その「規格」が普及し,多くの人が使っていると,その規格は「標準」(standard)と呼ばれるようになります.つまり,「標準化する」とは,規格をみんなで使いましょうと約束をしてその規格を普及する活動です.規格は普及して初めて標準と呼べるものになります.このような状態になった規格を,「標準規格」と呼ぶこともあります.これを英語に訳すとStandard standard となってしまうのですが,Standard ruleとか,Standard protocolと言われると,普及した規格のことだな,と分かると思います.

通信の国際標準化を担っている国際連合の機関の一つであるITU(国際電気通信連合)では,各国の様々な企業や研究者が生み出した通信技術の中からみんなで共通に使うことに向いた技術を選び出し,それをITU-Tの勧告(Recommendation)として公表しています.まさに,全世界の国や企業にその規格を使うように勧めているのです.これが標準化(standardization)です.

2. 標準化の役割

では,なぜ標準化をするのでしょうか.標準化の基本機能は「情報の非対称性の解消」です.規格を通じてつながろうとする両者が同じ情報を持つように規格情報を開示することが標準化の基本的機能です.開示された規格が有用だと市場が判断すれば,その規格の利用者が増加します.そして,多くの人が同じ規格を使うようになると,様々なメリットが生まれます.

図1 2者間をつなぐための様々な規格

図1 2者間をつなぐための様々な規格