巻頭言

小特集 Special Issue

小特集の発行にあたって

小特集 Special Issue

編集チームリーダ 遠藤寛之Hiroyuki Endo

宇宙ICTの基盤となる宇宙通信技術のフロンティア

「宇宙通信」は,文字どおり宇宙空間を介して行う通信を指しますが,衛星放送や衛星電話といった形で私たちの生活には既に浸透している感があります.特に,国土の多くが山間部であり,島国であることから水産業も盛んであり,更には地震などの災害も頻発する我が国では,宇宙通信は非常に重要度の高い技術であります.また,「はやぶさ」や「はやぶさ2」に夢中になった方も多くいらっしゃるとは思いますが,これら深宇宙を旅する探査機との通信も当然ながら宇宙通信です.つまり,宇宙通信は世界の起源の探求という活動も下支えしているのです.

そんな宇宙通信を取り巻く状況は更に大きな転換点を迎えております.近年におけるIoT(Internet of Things)やリモートセンシングをはじめとする情報通信技術の高度化や,多数の小形衛星によるコンステレーションなどの衛星関連技術の発展を受けて,宇宙空間を含んで展開される情報通信技術,すなわち宇宙ICTが注目を浴びています.宇宙ICTにより,これまで誰も見たことがなかった宇宙ビジネスが創出され,我々の生活はより豊かになっていくことでしょう.また,地上の通信網とも協調することで,陸という限られた二次元的領域を抜け出て,陸海空から宇宙に至る全ての領域をシームレスにカバーする無線通信網の展開も可能になります.このように宇宙ICT技術は,人類の活動領域をより拡大していくための足掛かりともなる技術でありますが,その基盤はやはり宇宙通信です.宇宙ICTの進展に応じてネットワークが三次元的に拡充し,そこで大容量の情報がやり取りされるようになると,より高度な宇宙通信技術が求められるようになります.

このような背景を受け,本小特集では,宇宙通信技術利活用の最前線で活躍されている方々に興味深い解説論文・解説記事を御執筆頂きました.衛星搭載通信機器の最新技術動向や,宇宙通信による通信ビジネスの動向と展望,そしてStarlinkによるインターネット提供サービスの現状といった記事からは,技術やビジネスという様々な視点から宇宙通信技術の「いま」を知ることできます.また,レーザによる宇宙ステーション-地上局間通信の実証や,地球圏以遠の探査機との通信を行う深宇宙通信の記事からは,最先端の研究開発を学んで頂けます.更に,宇宙無線通信の安定運用に欠かすことのできない,太陽フレアの監視に関する記事も御執筆頂きました.

本小特集を御覧になった研究者・技術者・学生の皆様から,この分野,宇宙通信のフロンティアに挑もうという方々が現れれば,編集チームとしてはこれ以上の喜びはございません.最後になりましたが,本小特集の発行にあたり,お忙しい中貴重な時間を割いて御執筆して下さった筆者の皆様,そして,査読と校閲に御協力して下さった皆様に心からお礼を申し上げさせて頂きます.

Special Issue

小特集編集チーム
遠藤寛之,太田真衣,坂野寿和,早馬道也,松室尭之,松本和人