解説論文
メタバースを支える技術――AI(人工知能)技術――
小特集
Web3.0で実現されるメタバース――新しい世界を創る技術――
Summery メタバースは一つのシステムであるが,それを内側から支え,より良い空間に変えるためには人工知能(AI)の力が必要である.メタバースは現在発展中であり,また形成されつつ存在である.その中で人工知能がどのような役割を果たし,メタバースにどのような可能性を与えるかを解説する.特にスマートシティと同期したメタバースを実現するためのスパーシャルAI(空間型AI)について解説し,物理空間を自律知性化し,かつそれをメタバースと同期する設計について述べる.またスマートシティとメタバースの連携において,エージェントが人の拡張としてどのような役割を果たすのか,詳細を提示する.
Key Words スマートシティ,メタバース,人工知能,ディジタルツイン,エージェント, スパーシャルAI
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メタバースと人工知能
メタバースと人工知能(AI)は密接な関係にある.メタバースは仮想世界のフレームであり,人工知能はその内容(=コンテンツ)を支える技術である(1).人工知能は広範な範囲を指す言葉であるが,本稿では,メタバースで用いられる人工知能技術に限定して述べる.メタバースの前身としてディジタルゲームが考えられる.ディジタルゲームにおける人工知能の発展としてメタバースにおける人工知能技術がある.
1.1 用語定義
ここで本稿におけるメタバース,スパーシャルAI(空間型AI),スマートシティの定義を述べる.メタバースはユーザの分身であるキャラクタ(「アバタ」と呼ばれる)を操作できる仮想空間である.3Dが想定される場合が多いが2Dのメタバースも存在する.また数人規模から数十万人規模まで様々である.スパーシャルAIは空間そのものを母体とし,その空間を管理するAIである.センサは担当する空間に配置された様々なセンシングデバイスを通じてセンシングを行い,またエフェクタもまた担当空間に対してその空間に属するエージェントや機器に命令することを通じて影響を与える.多くの場合,スマートシティは本論文では単に都市の情報を取得するシステムを超えて,自らを管理する人工知能を持つ都市を意味する.
1.2 ディジタルゲームにおける人工知能のシステム
メタバースの前身として,ディジタルゲームにおける人工知能の発展も概説する.ディジタルゲームにおける人工知能のシステムは,三つの要素の自律分散協調システムである.つまり,ゲーム全体を統御するメタAI,キャラクタの頭脳であるキャラクタAI,空間そのものと知性化したスパーシャルAIである(2)~(4)(図 1).
スパーシャルAIについて先に簡単に解説しておく.前述したように,スパーシャルAIは担当する空間に対するセンサを持ち,同時にその空間にエフェクタを持つAIのことである.多くの場合,その空間を管理する人工知能となる.ゲーム内では特定の空間に対して,例えばダンジョンのそれぞれの部屋にスパーシャルAIが定義される.スパーシャルAIはその部屋の地形,形状,置かれているオブジェクト,ギミックなど空間的特性を認識し,またその部屋に置かれる敵モンスター群を管理する.例えばプレーヤが部屋に入ると柱を倒すなど,自動的な処理を行う場合もあれば,はしごを登らせるなどプレーヤキャラクタを操作する場合もある.物理空間においても同様に,カメラをはじめ各種センサから当該空間の情報を取得する,あるいは逆にドローンやロボットなどのエージェントから情報を取得し,エージェントへの命令などを通じて,その空間を管理する.このスパーシャルAIに搭載した空間
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東京大学生産技術研究所,東京都
Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan