巻頭言

小特集 Special Issue

小特集発行にあたって

小特集 Special Issue

編集チームリーダ 竹村暢康Nobuyasu Takemura

Web 3.0 で実現されるメタバース――新しい世界を創る技術――

近年,Web 3.0 やメタバース(Metaverse)という言葉が注目を集めています.Web 3.0 は,従来の Webとは異なり,ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を活用し,分散型のシステムを基盤とした次世代のインターネットを指します.中央集権的な Web には,情報の信頼性やプライバシー保護などの課題がありましたが,Web 3.0 ではこれらの問題を解決し,より強化されたインターネットを実現することが期待されています.また,メタバースは,仮想世界を構築するための技術であり,現実世界とは異なる存在感を持ったオンライン空間を指します.「メタバース」の語源は,SF 作家 Neal Stephenson の小説「Snow Crash」の中で,人工的な仮想空間によって構成された現実という意味で,その概念が導入されたと言われています.メタバースは,VR(バーチャルリアリティ)や AR(拡張現実)の技術の進歩によって,ますます現実に近く,仮想空間での体験や交流がより自然なものになることが期待されています.このように Web 3.0 とメタバースは密接に関連しており,メタバースは Web 3.0 の技術を活用して構築されたディジタル空間内での活動を可能にするプラットホームとして,現実世界とは異なる,新たな価値,新たな世界を生み出すことができると考えられます.

本小特集では,Web 3.0 で実現されるメタバースとして,仮想通貨を用いた商品やサービスの取引や現実に近い仮想空間など,様々な取組みが進められている中で,これらを支える技術やメタバースを利用した取組みについて紹介することを意図して企画されました.Web 3.0 で実現されるメタバースは,エンターテインメントやゲームの世界だけでなく,ビジネスや教育,医療などの分野でも活用されており,より安全で,より良いものにするための技術開発や研究が求められています.小特集では,初めに総務省が開催している「Web3 時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」について紹介します.次に,XR(Cross Reality)技術としてメディアとしての表現性を高めるために必要な技術,AI 技術,NFT(非代替性トークン)/ DAO(分散型自律組織)技術について紹介します.最後に企業と大学から製造現場や教育現場における取組みについて紹介します.

メタバースの可能性を最大限に引き出すためには,技術開発だけでなく,社会的な課題に対する取組みや,倫理的な観点からの議論も重要となります.メタバースは,人々の暮らしや社会を変える可能性があります.本小特集で紹介した事例が,メタバースが進化していく中で,新たな価値観や文化の創出,そして今後の更なる議論を深めていくための一助となれば幸いです.

最後に,本小特集の発行にあたり,貴重な時間を割いて解説論文/記事を御執筆頂きました著者の皆様と,編集作業に御協力頂いた委員の皆様に深く感謝の意を表します.

Special Issue

小特集編集チーム
竹村暢康,金友 大,中野雄介,松井健一
水野 修,山口実靖,和田友孝