解説論文
新しい電波伝搬研究が支える第6世代移動通信システム
小特集
社会の礎とけん引役としてのネットワーク
Summery 重要な社会インフラの一つである携帯電話などの移動通信システムは,第 5 世代移動通信システム(5G)が商用サービスをスタートし,世界各国では,5G の高度化(5G Evolution)だけでなく,次世代の第 6世代移動通信システム(6G)についても検討が進められている.本稿では,移動通信システムとして 6G の背景,要求条件の一例,今後のスケジュールを説明し,移動通信システムにおける電波伝搬研究の重要性について述べる.また,5G Evolution及び 6G についての NTT ドコモの電波伝搬特性解明に向けた取組みの一部である,カラーイメージを用いた電波伝搬特性の推定手法や,点群データによるエリア評価,サブテラヘルツ帯の検討を紹介する.
Key Words 電波伝搬,5G Evolution,6G,移動通信システム
1
はじめに
今日,我々の生活を見ると,無線通信はなくてはならないものとなっている.中でも,スマートフォンをはじめとする移動通信端末は爆発的に普及しており,2021年の総務省による調査では,スマートフォンの世帯保有率は88.6 %という結果が得られている(1).スマートフォンは,移動通信システムと呼ばれるシステムを利用して通信を行っている.この移動通信システムは,1979年に第1世代移動通信システムがスタートしてから,ほぼ10年ごとに新しい世代の移動通信システムが登場しており,現在の日本では2020年に第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスがスタートしている(2).
5Gでは,高速大容量,低遅延,多接続という技術的特徴により,第4世代移動通信システムまでのマルチメディア通信サービスの高度化に限らず,人工知能(AI)やIoTとともに,これからの産業や社会を支える基盤技術として新たな価値を提供することが期待されている.先に述べたとおり,移動通信システムの技術方式は,約10年単位で進化しているが,移動通信システムのサービスは,約20年単位で大きな変化をしている.図1に,移動通信システムにおける技術とサービスの進化を示す.図1に示すとおり,1980年頃に携帯電話の商用サービスがスタートし,1980年頃〜2000年頃,2000年頃〜2020年頃で大きな区切りとなっている.そのため,2020年から始まった5Gだけでなく,5Gの高度化(5G Evolution)及び次世代の第6世代移動通信システム(6G)の技術により,2030年代の産業や社会を支えていくことが期待される(2).
5G Evolution及び6Gについて,国内に限らず世界各国の様々な組織で検討が進められており,その技術コンセプトやホワイトペーパーが公開されている(2)〜(12).
NTTドコモでも,5G Evolution及び6Gの技術的な展望をホワイトペーパーで述べるとともに,様々な取組みを行っている(2),(13)〜(20).移動通信システムは,端末から基地局までの無線アクセス,基地局間の通信であるコアネットワークといった

図1 移動通信における技術とサービスの進化(2)
†
(株)NTT ドコモ,東京都
NTT DOCOMO, INC.,Tokyo,100-6150 Japan