開発物語
郵便区分機向け手書き文字認識の開発
1.はじめに
「スーパーコンピュータ 京」(1)の後継となるフラグシップシステム(後の「スーパーコンピュータ富岳」(2))の開発を目的として,文部科学省による国家プロジェクトが2014 年に立ち上げられた.開発主体は理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)が担い,更にベンダ選択プロセスを経て,富士通が開発パートナーに選出された.プロジェクトはおおむね順調に進捗し,2018 年度までに設計フェーズを終えて2019 年度から製造フェーズに移行,2020 年5 月までに神戸市のR-CCS への納入が完了し,その後現地調整を経て,「富岳」は2021 年3 月から正式運用に至った.
図1 の写真に示す「富岳」の全系は432 個のラックで構成され,158,976 個のA64FX(3)プロセッサが,TofuD(4)と呼ぶ独自のインタコネクトで接続されている.
「富岳」は年に2 回,6 月と11 月に発表されるスーパコンピュータ(スパコン)の性能ランキング(5)で,2020 年6 月から2021 年11 月まで4 期連続で4 部門(Top500,HPCG,Graph500,HPL-AI)で世界一を獲得,本稿執筆時の最新のランキング(2022 年11 月)ではTop500 は2 位に後退しているものの,HPCG とGraph500 では首位の座を維持しており,今も大いに存在感を発揮している.
「富岳」の開発プロジェクトでは,システムの基本アーキテクチャを,前機種の「京」が採用したSPARC からArm に切り換えた.また,ハードウェアとしての「富岳」システムだけでなく,文科省が定めた9 分野の重点課題(2)を解決するためのHPC(High Performance Computing)アプリケーション開発もプロジェクトの大きな柱とされ,そのためハードウェアチームとアプリケーションチームが当初から協調して開発に取り組む「コデザイン」と呼ぶユニークな開発スタイルが採られた.
このように「富岳」の開発は従来にないチャレンジングな要素にあふれたものであった.本稿では主に筆者が担当したプロセッサA64FX の開発を中心にプロジェクトを振り返ってみたい.

図1 「スーパーコンピュータ 富岳」

図2 A64FXのダイ写真