こんなツール,使っています 
初めての電波伝搬シミュレーション

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こんなツール

使っています

初めての電波伝搬シミュレーション

(株)構造計画研究所 杉山健斗 Kento Sugiyama

(株)構造計画研究所 吉敷由起子 Yukiko Kishiki

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はじめに

人と人との通信から, ‘もの’ と ‘もの’ の通信までと拡大し,無線通信が果たす役割は,大きく変化してきている.通信業だけでなく,製造業や流通業など様々な産業で利用され,社会・経済全体において無線通信が重要な役割を担うようになった.また,beyond 5G 更に6G に向けて,研究開発が盛んに行われている.このような背景の下,あらゆる場所やあらゆるシーンで無線通信の利用が必須となってきている. そのため,電波環境を効率的に把握できる電波伝搬シミュレーションのニーズが高まっている.

新しい無線システムの導入や既存の無線システムの品質改善の検討時には,電波状況の把握が必要となる.ところが,電波を人間の目で見ることはできないので,電波測定による検討を進めるが,実験をあらゆるエリアで行おうとすると多大な時間やコストが掛かる.電波伝搬シミュレーションを事前に行うことで,見えない電波の伝搬経路の可視化が可能となり,実測結果の考察が効率良く行える.また効率的な実験計画を立てることができ,コスト削減につながる.本稿では,電波伝搬シミュレータを活用した例と利用手順を紹介する.

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電波伝搬シミュレーション

電波伝搬シミュレーションとは,電波がどの程度の強さで送信点から受信点まで届くのかを解析し,可視化するものである.電波伝搬シミュレーションで広く利用されている手法の一つにレイトレース法があり,建物や什器など様々な環境をコンピュータ上で模擬して,その場その場での電波状況を確認できる.レイトレース法とは,幾何光学近似に基づき,電波を光に見立てて伝搬経路を求める手法である.電波が伝搬するにあたって障害となる建物や什器などの構造物を考慮し,反射・透過・回折(図1)を伴う損失の影響を解析する.

電波伝搬シミュレータであるWire­less InSite(1)は,レイトレース法や様々な伝搬モデルにより高速・高精度に電波伝搬シミュレーションを行う解析ツールであり(図2),電波環境の評価を行うことができる.開発元の………

図1 レイトレース法の散乱現象

図1 レイトレース法の散乱現象

図2 電波伝搬シミュレーションWireless InSite

図2 電波伝搬シミュレーションWireless InSite