巻頭言

小特集 Special Issue

小特集発行にあたって

小特集 Special Issue

編集チームリーダ 坂野寿和Toshikazu Sakano

ディジタルヒューマンインタフェースの新潮流

近年,ディジタル技術の進展,スマートフォンやインターネットのコモディティ化,更にはAI(Artificial Intelligence)技術の社会的広がりを背景に,今まで想像もしなかったエンターテインメントやデザイン,アートに遭遇する機会が増えてきました.映像コンテンツを表示するディスプレイは高精細化が進み,より臨場感が高まっていますし,スマートグラスをはじめとする様々なウェアラブルデバイスが開発されることによって,メタバース,AR(Augumented Reality),VR(Virtual­Reality)といったコンピュータ上に創られた三次元仮想空間内でひとが活動する新たなスタイルも出現しています.ひとの五感に作用するディジタルインタフェース技術の進展を一つの契機として,未来に向けた新たな社会的潮流が生まれつつあるのを感じます.

一方,ヒューマン情報処理の分野では,研究開発を通して得られたひとの特性に関する知見をディジタル技術に取り込み,実際の教育や知育の中で活用しようとする取組みが行われています.ディジタル技術を活用して,ひとの単なる表層ではなく,内面若しくは本質的特性に作用することによって新たな効果を得ようとする試みです.また,脳情報科学の分野では,複雑な脳内神経回路網の信号伝達模様を可視化することで,ひとの認知や思考,学習,成長といったメカニズムの解明に迫ろうとする研究も進められています.

こうした一連のトレンドは,ディジタル技術とひとをつなぐインタフェースが,よりひとの側に,更にはひとの内部にまで入り込んで,ディジタル世界とひとが一体化する新たなインタフェースが形成されつつあるという見方もできます.これまでディジタル世界とひとのやり取りは,ひとの視覚や聴覚,触覚といった五感をインタフェースとするものでした.ひとの脳活動を可視化することによる脳のメカニズム解明や脳へのアクセス技術の進展を見ていると,ディジタル世界が,ひとの五感を飛び越して脳に直接働き掛ける,若しくは,脳とディジタル世界が直接相互作用して新たな価値を生み出す新しいインタフェースの出現さえも予感させます.

本小特集は,ディジタルヒューマンインタフェースにおける新潮流とも言える事例や背景となる基礎技術を紹介することで,読者の皆様に,来るSociety 5.0 社会における“ディジタル世界”と“ひと”をつなぐインタフェースの在り方を考えるきっかけにして頂くことを期待して企画致しました.お楽しみ頂けますと幸いです.

Special Issue

小特集編集チーム
坂野寿和,飯田裕之,関 裕太,中島昭範,
中林寛暁,早馬道也,廣田栄伸