巻頭言

小特集 Special Issue

小特集発行にあたって

小特集 Special Issue

編集チームリーダ 山本 嶺Ryo Yamamoto

教育分野におけるICT利活用の実例と展望

近年のICT(情報通信技術)の発展によって,私たちの生活のあらゆる場面でそれらの恩恵を受けることができるようになってきています.また,ICT 技術は単なる情報取得,情報処理の手段として用いられるだけでなく,XR(クロスリアリティ)などの新たな情報提示や体験を提示することにも用いられています.そのような中,従来,教育の現場においては,e-learning や教育管理など様々な場面でICT が活用されてきました.

教育におけるICT 技術の歴史を振り返ると,初期の段階では単純な遠隔講義実現のための配信システムや進捗管理システムなど教育現場を補助する用途として使われていました.近年では,文部科学省公表の「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」で述べられているように,(1)学びにおける時間・距離等の制約を取り払うこと,(2)個別に最適で効果的な学びや支援,(3)可視化が困難であった学びの知見の共有や新たな知見の生成,(4)校務の効率化,が教育現場におけるICT 環境活用の意義として挙げられています.つまり,ICT は,単なる教育の補助的な要素としてではなく,最大限の教育効果を得るために必要不可欠な要素として認識されています.

また,2020 年初頭から広がった新型コロナウイルス感染症拡大の影響による社会情勢の変化により,教育の現場では大きな変革が求められることとなり,ICT の利活用が今まで以上に活発に実施されました.例として,従来,対面で実施していた授業やセミナーなどにおいてオンライン化やオンデマンド化などの対応が必須となったことで,オンラインでの実施に適した教育コンテンツの作成やそれを配信・管理するための基盤構築などは,ICT なくしては実現できなかったものとなります.本小特集では,このような背景の下,教育現場におけるICT の活用事例やそれを支える技術について解説して頂きます.初めに,教育現場におけるICT 利活用の変革,今後の展望について解説頂きます.続いて,実際の現場におけるICT を利用した教育の実例とそこで必要となる各種技術について解説をして頂きます.

本小特集を通じて,教育とICT の関わりについて知見を深めて頂くとともに,今後の更なる議論について一助となることを期待しています.最後に,本小特集の発行にあたり,御執筆頂いた皆様,編集委員の皆様,査読,校閲に御協力頂いた皆様に感謝申し上げます.

Special Issue

小特集編集チーム
山本 嶺,内田大輔,大下裕一,太田真衣,
小南大智,村上靖宜,蕨野貴之