通信ソサイエティからのお知らせ
2021年度 通信ソサイエティ論文賞・マガジン賞 〜受賞論文・記事と総評〜

2021年度
通信ソサイエティ論文賞・マガジン賞
〜受賞論文・記事と総評〜

通信ソサイエティ編集会議

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はじめに

通信ソサイエティは,17 回目となる2021 年度通信ソサイエティ論文賞の選考を行い,11 編の論文を選定した.また,和文マガジンの論文以外の記事も対象とする「通信ソサイエティマガジン賞」(以下,マガジン賞)の5 回目の選考を行い,1 編を選定した.

本稿では,今年度(2020 年10 月〜2021 年9 月)の受賞論文・記事と総評を,和文論文誌,英文論文誌,ComEX,和文マガジン,及びマガジン賞の順に紹介する.

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和文論文誌

選考は,1) 候補論文推薦,2) 予備投票,3) 審査査読,4) 候補論文絞込み(審議),5) 候補論文選定(投票),6)受賞論文決定(編集会議)のステップを経て,慎重に実施された.今年度は,優秀論文賞2 編,チュートリアル論文賞2 編が受賞論文として選定された.いずれも,論文の要である新規性,有効性,信頼性,了解性で高い評価を得た文献であり,今後論文を執筆する研究者や技術者にとってお手本となるものである.

今年度は,優秀論文賞として,線形制御型MassiveMIMO における最大収容ユーザ数を考察した論文,及びFlex Ethernet over OTN リンクにおける状態監視技術を提案した論文がそれぞれ選定された.また,チュートリアル論文賞として,5G における超高信頼・低遅延通信を実現する技術について解説した招待論文,及びBeyond 5G 時代のネットワークビジョンについて紹介した招待論文が選定された.今後も新規性の高い論文から,綿密な調査と体系化を行うサーベイ論文まで,幅広い成果が報告されることが期待される.

和文論文誌は,研究経験の少ない学生や若手研究者,開発に携わる企業の技術者も母国語で読める貴重な文献である.良い論文を読むことは,技術知識の蓄積とともに,良い論文を書くことにもつながる.受賞論文を論文執筆のお手本として参考にされた上で,各位の技術成果を積極的に投稿して頂きたい.なお,和文論文誌では2006 年以降の各受賞論文を下記URL から無償で閲覧できるので,御活用頂きたい.

https://search.ieice.org/bin/open_access_paper.php?journal=JB&lang=J

■ 優秀論文賞

「線形制御型Massive MIMO における最大収容ユーザ数に関する考察」

西森健太郎

Vol. J103-B, No. 11, pp. 571-581, Nov. 2020.

受賞理由:Massive MIMO は,基地局のアンテナ数をユーザ数よりも多くすることで,比較的少ない演算量でサービスエリアの向上や干渉低減が可能となる技術である.通常のアレーアンテナでは,アンテナ数-1までヌルを形成可能であり,基地局のアンテナ数と同数のユーザを収容可能であるが, 従来MassiveMIMO で想定している環境は基地局のアンテナ数に対してユーザ数が十分少ない状況である.実システムでの利用を考えた場合,基地局当りに収容可能なユーザ数は重要な情報であり,本論文ではブロック対角化法(BD 法)で制御されるMassive MIMO 基地局が,高い伝送レートを維持した状態で収容可能な最大ユーザ数を,K ファクタとSN 比に基づき導出するものである.本論文は,これまで明確にされていなかった,線形制御型Massive MIMO における収容ユーザ数の適切な範囲について理論的に解析しており,学術・産業の発展に寄与すると考えられる.以上から,通信ソサイエティ優秀論文賞にふさわしい論文であると判断した.………

「Flex Ethernet over OTN リンク状態監視技術の実証」

田中貴章,桑原世輝,乾 哲郎

Vol. J103-B, No. 11, pp. 595-604, Nov. 2020.