こんなツール,使っています 
リアルタイムスペクトルアナライザの導入と基本操作

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こんなツール

使っています

リアルタイムスペクトル
アナライザの導入と基本操作

(株)テクトロニクス&フルーク 齊藤 桐 Kiri Saito

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はじめに

我々の身の回りには目に見えない多くの電波が飛び交っている.これらはRF(Radio Frequency:ラジオ周波数)と呼ばれ,我々の生活を支える上でなくてはならない存在となっている.例えば,携帯ゲーム機を使ったインターネット通信対戦や通学通勤時や運動時に手軽に音楽を聴ける無線イヤホン,スマートフォンを使って大容量データをダウンロードするなど挙げればきりがない.

これらは無線LAN(Local Area Network: 構内通信網)やBluetooth,近年話題の5G(5th GenerationMobile Communication System: 第5世代移動通信システム)など誰もが一度は耳にしたことのある規格が使われている.先ほど挙げた例のように個人での使用はもちろんのこと,IoT(Internet of Things: ‘ もの’のインターネット)の発展により大規模な工場での機械制御などにも使われており,ますます無線製品の需要は高まっている.

中でも, 免許不要で利用可能なISM バンド(Industrial, Scientific and Medical Band)は身の回りの製品にも多く使われており,先ほど挙げた無線LAN やBluetoothのほか,電子レンジ,コードレス電話などはISM バンドの一つである2.4 GHz帯という同じ周波数帯域を使用している.多くの機器が同じ周波数帯を利用すると一体どんなことが起こる可能性があるだろうか.昼食時,食品を温めるために電子レンジを使っている.一方,別の部屋ではノートパソコンで社内ミーティングに参加中であったが,突然通信が切断されてしまう.これは,無線LANの通信が同じ周波数帯域を利用する電子レンジと電波干渉したためである.

我々はこれらの現象を結果から予測することはできるが,目に見えない無線信号の挙動を通常は見ることができない.そこで活躍するのが「スペクトルアナライザ」と呼ばれる測定器である.

本稿では,スペクトルアナライザとは何かを説明し,無線LAN やBluetooth 等の間欠的な信号をどのように見るのか,弊社のスペクトルアナライザを例に紹介する.

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スペクトルアナライザとは

スペクトルとは横軸を周波数,縦軸をパワー(振幅)で表したものを言い,入力された電波などの信号をスペクトルとして表示するのがスペクトルアナライザである.初めて耳にすると,難しく取っ付きにくいもののように聞こえるが,我々の身近なところにもスペクトルアナライザはある.パソコン(PC)の音楽プレーヤに搭載されているオーディオビジュアライザもスペクトルアナライザの一種である(図1).

オーディオビジュアライザは音楽用途であるため,周波数範囲を人間の可聴域である20 Hz〜20 kHz程度としている.一方,測定器のスペクトルアナライザは無線通信で用いられるメガヘルツ(MHz)やギガヘルツ(GHz)といった比較的高い周波数が採用されている.また強い信号と微弱な雑音信号を同時に見られるように………

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図1 オーディオビジュアライザ