解 説
電子レシートを利用した購買データプラットホーム

小特集
スーパシティ/スマートシティ実現の基盤となるICT技術

解 説

電子レシートを利用した 購買データプラットホーム

小野賢司 Kenji Ono 東芝データ株式会社

金田昌之 Masayuki Kaneda 東芝データ株式会社

荒井康博 Yasuhiro Arai 東芝テック株式会社

南部和哉 Kazuya Nambu 東芝テック株式会社

1

はじめに

現在,多くの自治体や地域は,人口減少,高齢化,災害など,様々な社会課題に直面している.それらの社会課題をICT *1 など先進的技術や各種のデータの活用により解決し,更には,都市や地域の機能やサービスの効率化・高度化,安全性や快適性,利便性の向上を含めた新たな価値を創出する取組みであるスマートシティに注目が集まっている(1)

そのような中,私たちはデータに基づいたまちづくりによる課題解決型のスマートシティの実現を目指し,市民の購買行動を購買データとしてディジタル化する「電子レシートを活用した購買データプラットホーム」の構築に取り組んでいる.

電子レシートは,市民の購買行動をディジタル化し地域単位で分析・活用し,地域の活性化につなげていくだけではなく,日々の購買をデータとして一元管理できるといった市民一人一人の利便性を向上させるメリットもある.

私たちが取り組んでいる電子レシートを利用した購買データプラットホームは,店舗でこれまで紙で渡していたレシートを,利用者のスマートフォンにデータとして送るというもので,財布がかさ張る紙レシートを受け取らないで済むだけでなく,日々の購買をデータとして一元管理できるメリットがある.

そしてユーザをハブとしたスケールフリーネットワーク*2 になっていく(2).このネットワークがプラットホームとなり,地域内の複数店舗にまたがる販売促進やデータ分析など,新たなディジタルサービスが創出できる.電子レシートが消費者(市民)と地域の店舗や企業を結び,地域に蓄積されたデータにより市民が自ら行動変容し,住み良いまちをつくっていく.これが私たちの考えるスマートシティの基本的な考え方である.

図1 に「電子レシートプラットホームの広がりによる地域に蓄積されたデータの活用例」を示す.

2

電子レシートの紹介とその特徴

市民の購買データを収集する電子レシートについて説明する.

2.1 電子レシートの生い立ち

東日本大震災が起きた2011 年当時,国内のレシートロールの原反メーカ3 施設のうち,2施設が地震で被災,全国のお店へレシートロールの供給が滞り,消費者にレシートを渡せないという状況がしばらく続いた.このことがきっかけで,電子レシートを本格的に検討することになり,電子レシートアプリ「スマートレシート」*3 が誕生した.

2.2 電子レシートとは

スマートフォンのアプリ上に表示されるバーコードを利用可能店舗のレジでスキャンするだけで,リアルタイムにレシート情報(購買履歴)がクラウドセンターに保管され,スマートフォンですぐに確認できる.

リアルタイムで電子レシートを確認できるため,紙レシートを発行する必要がなく,ペーパーレスを実現する.

2.3 紙レシートを電子レシート化するメリット

2.3.1  いろいろなお店のレシートを一つのアプリで管理

電子レシートは,一般的に各小売りのレシート情報………

*1 ICTはInformation and Communication Technologyの略で,ここでは情報通信技術(インターネットを利用した情報交換)を指す.

*2 尺度(スケール)がなく.ネットワークが成長し情報が伝搬(でんぱん)しやすいこと.

*3 「スマートレシート」は東芝テック株式会社の登録商標です.