解 説
京都府における「スマートけいはんなプロジェクト」の取組みについて

小特集
スーパシティ/スマートシティ実現の基盤となるICT技術

解 説

京都府における 「スマートけいはんなプロジェクト」 の取組みについて

後藤幸宏 Yukihiro Goto 京都府

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はじめに(けいはんな学研都市の歩み)

けいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)は,関西文化学術研究都市建設促進法に基づき,京都・大阪・奈良の3 府県にまたがる京阪奈の緑豊かな丘陵において,建設・整備を進めているサイエンスシティである.

東の「つくば研究学園都市」とともに国家プロジェクトに位置付けられ, 総面積が約15,000 ha,その中に12 の文化学術研究地区(約3,600 ha)を分散配置するという「クラスター型開発」が都市建設の特徴である.

京都市・大阪市の中心部から30 km,奈良市の中心部から10 km の圏内に位置し,民間活力を活用の下,段階的に「文化学術研究施設と住宅の複合型の都市づくり」が進められてきた.

現在,都市の人口は25 万人を超え,増加が続いている.また,150 を超える研究機関,大学,研究開発型産業施設,文化施設などが立地し,その就業者数(研究者及び職員)は 11,000 人を上回っている(図1).

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都市の抱える課題

中でも,けいはんな学研都市の発展を支え,中核的な機能を担ってきた「精華・西木津地区」には,住宅や商業施設に加え,研究機関や研究開発型企業が多数集積しており,現在,人口は約21,000 人(約7,700 世帯),立地企業等が約60 社,就業者数は約5,500 人となっている.

一方で,1994(平6)年の「学研都市びらき」から約30 年弱が経過しており,住民の高齢化が進むなど,新たな地域課題が出てきている(図2).

2.1 生活者(住民・来訪者)の視点

クラスター型開発により整備された郊外型住宅地である本区域は,最寄り駅までのアクセス道路が整備されているものの,路線バスで10〜20 分程度要するとともに,丘陵地で坂道が多いことから,徒歩や自転車による移動よりもマイカーや路線バスによる移動が主となっている.

今後,高齢者の運転免許返納やバス事業者の運転手不足といった問題も予想されることから,誰もが不自由なく移動できる手段を確保するなど,スマートで安心・安全,快適な生活を営むことができる環境を整えていく必要がある.

2.2 就業者・立地企業の視点

住民の増加,立地施設の集積に伴って,通勤や出張等………

図1 けいはんな学研都市各クラスターの整備状況

図1 けいはんな学研都市各クラスターの整備状況