はじめに
江の島，神奈川県藤沢市にあるこの島は，湘南を代表する場所であり，自然と歴史に富む景勝の地，マリンスポーツの地として多くの方々に親しまれているエリアである（1）（図1）．江戸時代から観光の場所として人気があり，庶民に広く愛されていて浮世絵にも数多く描かれている．江の島は「江ノ島」とも表記され，古くは「江之島」「江島」とも書かれていた．現在では住所などの表記は江の島に統一されている．ちなみにサザンオールスターズの歌詞では江ノ島である．いずれの表記でも言葉の響きは変わらないが，なぜか文字によってイメージが変わるのが面白いところである．
江の島は1927 年に日本百景に選定され，県の名勝にも指定されている．海はもちろんのこと，自然を生かした観光スポット，水族館や温泉もあり，新鮮な海鮮や老舗の和菓子，スイーツなども楽しむことができる．本稿では，藤沢市在住の筆者が江の島を巡り，江の島の歴史と魅力を紹介する．
図1 江の島
オリンピック会場の地
東京2020 オリンピック競技大会では，江の島でセーリング競技が開催されたことはまだ記憶に新しいところである（2）．セーリング競技は海面に設置されたブイを指定された回数・順序で回りながら，フィニッシュラインまでの着順を競い合うスポーツである．競技は沖合で行われるため双眼鏡で観戦するのが一般的であるが，東京2020 ではセーリング会場に長さ55 mの洋上ワイドビジョンが設置され，第5 世代移動通信システム（5G）を活用した新たなスポーツ観戦体験が提供された（3）．競技間近の様々な場所で撮影された映像がリアルタイムにスクリーンに中継され，東京ビッグサイトにも同様の映像がライブ中継された．残念ながら一般公開はされなかったが，今後のスポーツ観戦に新たな視点をもたらす技術である．
江の島は1964 年東京オリンピックでもヨット競技会場として使用され，それを記念して江の島弁天橋を渡った左側にはオリンピック記念噴水池が設置されている（図2）．この噴水池には江の島を象微する弁天像を中心として，その周りには西洋・東洋の五体の世界女性像が並んでいる．噴水池の先には海が見える遊歩………
図2 オリンピック記念噴水池
図3 1964 年東京オリンピック聖火台（左）と東京2020オリンピックモニュメント（右）