若者よ、世界に出よう!
コロナ禍におけるアメリカの生活とブロードバンドアクセス

コロナ禍における
アメリカの生活と
ブロードバンドアクセス

Broadcom Inc. 鈴木 浩 Hiroshi Suzuki

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はじめに

前回の記事(「アメリカのハイテク産業の荒波にもまれた17 年」,本誌No.45,2018 年6 月)を書く機会を頂いてから,はや4 年.本当に時間がたつのは早いものです.今回は,前回の記事の続編を書く機会を頂きました.この4 年で本当にいろいろな変化がありました.まず,一番大きな出来事は,何と言っても新型コロナウイルスの感染拡大です.この原稿を書いている時点で,ウイルスの発生からほぼ2 年が経過しようとしています.まだまだ感染の収束にはほど遠いですが,アメリカではコロナ前の生活に戻りつつあります.今回はまず,アメリカにおけるコロナ禍での生活と仕事について,私が経験してきたことを書いていきたいと思います.コロナ禍は,筆者が携わる半導体業界,通信業界にも大きな影響を与えました.そして,コロナ禍以外にもこの4 年では様々な変化がありました.放送から通信へのシフトは,私の仕事に非常に大きな影響を与えました.この「激動」の4 年間に起こったことについて,筆者の私見も交えて書いていきたいと思います.

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コロナウイルスの感染拡大

今でも覚えています.2020 年の1 月末に,私の住んでいるカリフォルニア州オレンジ郡で,「初めてのコロナウイルスの感染者が出た」というニュースが流れました.その後はあちらこちらで感染者が現れ始め,これは大変なことになるな,と思っていた矢先に,会社から「社内のジムを閉鎖する」という通達が来ました.その後,オフィスへの出勤禁止命令が出され,社員全員が在宅勤務になるまではあっという間でした.確か,2020 年の4 月だったと思います( 図1). 幸い, 自宅からVPN(VirtualPrivate Network)を使って社内のネットワークに接続して仕事をするというのは,もう20 年以上も行っており,仕事に関する支障は全くと言っていいくらい感じませんでした.コロナ禍で必須のオンラインミーティングに関しても,10 年以上前から使っていたため,特に問題はありませんでした.ただ,実際にミーティングルームに集まって,複雑な問題をホワイトボード使ってディスカッションすることができないことは不便に感じました.

この頃,筆者の住んでいるカリフォルニア州全体で,基本的にオフィスへの出勤は禁止という命令が出ました.ただし,エッセンシャルワーカーと呼ばれる人だけは,オフィスへの出勤が許されていました.エッセンシャルワーカーの典型例は,警察,消防,病院等で働く人々です.そして,スーパーマーケットのように日々の生活で必要な品物を売る店の店員,運送業界の人々なども,エッセンシャルワーカーです.このような人々以外は,基本的に自宅待機か在宅勤務です.在宅勤務ができない業種では,かなり多くの人がレイオフ(一時解雇)になったと聞きました.

学校は全て閉鎖され,レストランはテイクアウト以外は営業禁止です.通勤時間帯に混雑していた高速道路から車が消えたのもこの頃です.街には異様な静けさが漂っていました.株式市場も暴落し,奈落の底に落ちていくような感覚に襲われました.当………

図1 コロナウイルスの感染が始まってから3か月もたたないうちに,我が社のオフィスも完全閉鎖になりました.

図1 コロナウイルスの感染が始まってから3か月もたたないうちに,我が社のオフィスも完全閉鎖になりました.