解 説
ひらめき☆ときめきサイエンスとサマー・サイエンスキャンプによる光ファイバ通信の体験実習プログラム

小特集
未来を担う通信技術者・研究者のための自由研究特集(ジュニア会員特集)

解 説

ひらめき☆ときめきサイエンスとサマー・サイエンスキャンプによる光ファイバ通信の体験実習プログラム

戸田裕之 Hiroyuki Toda 同志社大学

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はじめに

私の研究室では,2006 年8 月に「サマー・サイエンスキャンプ」,2016年8月に「ひらめき☆ときめきサイエンス」という光ファイバ通信の体験実習プログラムを実施しました.本稿では,ジュニア会員の皆様向けに,これらのプログラムについて執筆させて頂きます.

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「サマー・サイエンスキャンプ」と「ひらめき☆ときめきサイエンス」について

サイエンスキャンプ(1),(2)は,公益財団法人日本科学技術振興財団(JSF)が主催していた実験・実習を主体とした科学技術体験合宿プログラムです.あまり触れる機会のない,先進的な研究テーマに取り組んでいる大学,公的研究機関,民間企業の研究所などを会場として,実際の研究現場などの第一線で活躍する研究者や技術者から3日間あるいは4 日間,直接指導を受けることができます.サマー・サイエンスキャンプは,夏休みの時期に実施されるサイエンスキャンプです.

ひらめき☆ときめきサイエンス(3)は,独立行政法人日本学術振興会が主催するイベントで,国から交付される科学研究費補助金(科研費)により大学や研究機関で行われている最先端の研究成果を,じかに見る,聞く,触れることで,科学のおもしろさを感じてもらうプログラムです.主に1日の日程で行われます.この2年間はコロナ禍の中,実施には多大な困難が伴ったことは容易に想像がつきますが,それでも多くのプログラムが実施されています(4).筆者が採択,交付された科研費の研究テーマは,「隣接パルス間位相を安定化した光クロック逓倍回路に関する研究」(5),(6)でしたが,高校生の皆さんにはかなり難解な内容でしたので,「体験しよう!光ファイバー通信による画像伝送」と題してプログラムを実施しました(7),(8)

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光ファイバ通信

石英ガラスを材料とする光ファイバは,直径125μmと細くて軽く,低損失といった特長があります.この光ファイバを用いた光ファイバ通信は,他の方式では実現できない長距離で大容量の情報伝送を行うことが可能です.光ファイバは現在世界中に張り巡らされており(9),(10),インターネットを使って大容量のファイルをやり取りしたり,YouTubeなどの動画像サイトで4Kや8Kといった高精細画像を閲覧することができるのも,光ファイバ通信のおかげです.また,光ファイバは携帯電話と並んで重要な通信インフラであり,その更なる発展を目指して多くの研究者が日々研究開発に努力しています.

私は以前,ソリトンと呼ばれる光パルスを用いた光ファイバ通信の研究を行っていました.また,学部3年生で履修する学生実験でも「画像の光伝送」という光通信がテーマの実験を担当していましたので,光ファイバ通信に関する体験実習プログラムを実施することにした次第です.

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同志社大学について(11)

同志社大学は,1875 年に新島襄(1843-1890)によって設立された同志社英学校が母体となっています.新島は,江戸末期の息苦しい封建社会に束縛されることを嫌い,21 歳で国禁を犯して密出国し渡米しました.10年間アメリカで神学などを学んだ新島は,教育が国の発展に極めて重要であることを確信し,帰国後,大学設立に向けた準備を始めました.「同志社」とは,新島と「志を同じくする者が創る結社」の意味が込められています.

同志社大学には,京都市中心部にある京都御所の北隣に位置する今出川校地と,京都府南部の京田辺市に位置………