子どもに教えたい通信のしくみ 
赤外線と光センサの活用

子どもに教えたい通信のしくみ

ジュニア会員向けページ

赤外線と光センサの活用

山口大学 岡田秀希 Hideki Okada

1. まえがき

現在の私たちの暮らしの中で、センサやロボットの技術は欠かせないものになっています。身近にある機器の中には,数年前には考えられなかったような高性能のセンサが組み込まれ,日常生活の様々な活動を支えてくれています.これらは通常見えにくい所に存在しているので,普段はそれらの働きを意識することはなく,実際にも不便な思いをすることは少ないでしょう.ここで,この重要な電子部品であるセンサに注目し,人々の便利で安全な生活のために役立てる方法を考えてみましょう.

2. センサとは

一般に温度や圧力などの物理量を電気信号に変換するための電子部品をセンサと呼んでいます(表1).この中には,人間の五感では感知できないもの(超音波,磁気,放射線,赤外線・紫外線など)を捉えるものもあり,様々な分野で便利に活用されています.最近では,半導体式のセンサが急速に普及し,高精度で安価なものが容易に手に入るようになりました.これらは検出する原理が異なるものでも出力の方法が共通化されているので,マイコンを使って計測や制御をするのに適しています.

表1 主なセンサの種類と用途

センサ 用途
温度センサ 暖房機,冷蔵庫,体温計
湿度センサ 加湿器,気象観測
ガスセンサ 空気清浄機,アルコール検知
音センサ 騒音計,録音機(レコーダ)
超音波センサ 通信,距離測定
ホールセンサ 磁気測定,磁気検出
光センサ 街灯,自動照明,露出計
赤外線センサ リモコン,携帯端末の通信自動ドア,防犯ライト
カラーセンサ 果物の色判別
加速度センサ 傾斜計,車の加速度計測
ジャイロセンサ ロボット,ゲーム機,ドローン
圧力センサ タイヤの空気圧,大気圧計

3. 赤外線の利用

人間の目に見える光を可視光線(赤色〜紫色)と言い,その範囲の外側に目には見えない光(赤外線,紫外線)があります.このうち,赤外線は紫外線に比べて人体への害が少ないことから,日常生活の多くの場面で利用されています.例えば,テレビのチャネルや音量を変えるためのリモコンは,メーカごとに決められたパターンで赤外線を点滅させ,テレビの本体と通信しています.ディジタルカメラやスマートフォンのカメラを使ってリモコンの先端を見れば,光っている様子を観察することができます.また,人が近づいたら開く自動ドアも,人体の検知のためセンサ(人感センサ)の働きによるものです.目に見えない光は利用するのに不便なように思えますが,機器に組み込んで社会の中で使用する場合に,人目を引かずに機器を利用できる点では便利です.

4. 福祉分野での活用

高齢者や障害者の生活を支える機器は,対象者の人数が限られていることから,一般向けの機器に比べて製品開発や商品化が進まない傾向があります.また,市販された場合でも少量生産のため高価格な商品となり,普及が進まない要因になっています.こうした人々の不自由な生活の場面に目を向けると,センサの新しい活用法を考えるきっかけになります.次にその活用例を紹介します.

4.1 道路の白線を検知する白杖

図1は,目が不自由な人が道路を歩行する際に,車道と歩道の境界や横断歩道に引かれている白線を検知する機能を,普段の外出時に携行する白い杖に内蔵した用具………