講演抄録/キーワード |
講演名 |
2021-03-04 09:05
[招待講演]実験計画法による実験方法の設計 ○立森久照(NCNP) IBISML2020-52 |
抄録 |
(和) |
実験計画法(Experimental design、Design of experiments)はデータを効率的に集めるための実験を設計(デザイン)し,そのデータをデザインに合わせた適切な手法で解析することで客観的な結論を導くための体系的な方法論である。実験計画法は,R.A. Fisherが1920年代に着想し発展させた。当時Fisherはイギリスの農事試験場で技師として働いており,そこでの経験がもとになっている。Fisherは,「The Arrangement of Field Experiments (1926)」,「The Design of Experiments (1935)」を著述し,その考えを世に提案した。その後1950年には,W.G. CochranとG.M. Coxによる「Experimental Designs」と題する標準的な教科書が出版され,多くの領域で応用されるようになった。
実験計画法の根幹をなすのは,Fisherの3原則と呼ばれる「反復(replication)」,
「無作為化(randomization)」,および「局所管理(local control)」である。16世紀頃に提唱されていた科学的精密実験と呼ばれる枠組みでは,ある特性に対する興味のある要因の効果を実験にて検証する際には,できるだけ条件を細かく管理することで他の要因による変動(ばらつき)を抑え,その特性の変化が興味のある要因の効果としてのみ現れる条件を作り,実験を行うことが求められた。つまり,興味のある要因と他の要因の効果を混ざらないようにすることで,興味のある要因の効果を測ることを意図している。そうした条件が整備できる状況では確かに有効な方法であるが,Fisherが実験計画法を着想した農事試験に限らず,工学,医学など応用的な多くの領域では,他の要因をできる限り均質に管理することが実際的に不可能なことが多い。そこで,実験計画法では他の要因の厳密な管理は諦めざるをえないことを認めた上で,管理できていない誤差や不確かさ(偶然変動)を統計的な手法で正しく扱うことで対処を試みる。そのために,先に述べた3原則に基づいて実験を計画することを求めるのである。
実験計画法は,今では相当な古典であるが未だにその方法論は現役である。もちろん,その後に提唱されたより発展的手法や先進的な新手法が使われることも多いが,そうした手法を理解したり,現場で活用したりする上で,実験計画法の考えを理解しておくことが助けになると思われる。最後に,実験計画法は農事試験に出自があるが,決して研究分野・対象ごとに独自に開発される固有技術ではなく,実験的な研究を効率的に行い客観的な結論を得るための共通技術であることを強調しておきたい。どの様な分野で研究を行うかに関わらず,一度はその考え方に触れておくことは有用でこそあれ,無駄となることはないと考える。 |
(英) |
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キーワード |
(和) |
実験計画法 / 研究デザイン / 分散分析 / / / / / |
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文献情報 |
信学技報, vol. 120, no. 395, IBISML2020-52, pp. 71-71, 2021年3月. |
資料番号 |
IBISML2020-52 |
発行日 |
2021-02-23 (IBISML) |
ISSN |
Online edition: ISSN 2432-6380 |
著作権に ついて |
技術研究報告に掲載された論文の著作権は電子情報通信学会に帰属します.(許諾番号:10GA0019/12GB0052/13GB0056/17GB0034/18GB0034) |
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