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講演抄録/キーワード
講演名 2012-10-11 14:40
スマートフォンを用いたPHR管理システムの構築
堀内 学南部雅幸阪電通大MBE2012-44
抄録 (和) 1. はじめに
昨今, 肥満, 高血圧, 高コレステロール, 高脂血症などメタボリックシンドロームや,糖尿病などの生活習慣病の増加が問題となっており,その患者予備軍が
多数存在すると推定されている.これらの原因は長年続いてきた生活習慣にあるため, これらの疾患を予防・軽減する為には,食生活と運動,及びそれらの継続的な観察・記録とそのデータに基づく生活指導が必要不可欠である.従来の医療は,病院を基点とした電子カルテ, すなわち電子診療記録( Electronic Medical Record:EMR) を用いて行われる. 一方予防医療を中心とした在宅医療では, 従来の医療情報ではなく, 個人の医療データと日常生活活動中のデータを組み合わせたデータが必要で,これを個人的健康記録(Personal Health Records:PHR)をと呼ぶ.これは言い換えれば個人が自己責任・自己管理の元に累積した健康情報の集まりの総称である.体温, 血圧,心拍といったバイタルサインを医療機関等で計測・保管する場合と比較して,スポーツジムや病院といった各々の施設に分散していた個人データと, 個人が任意で記録した生体情報が利用者の元に集約されるため.活用がしやすくなる点と,プライバシーの問題が発生しづらい点などが利点として挙げられる.それらを実現するために,現在,個人ユーザ向けの生体計測システムが提案されている[1]. しかし,既存の健康情報・生体計測システムは,計測,データ保存, データ処理, 通信のそれぞれの機能が独立しており[2],公衆回線等を通じたデータ共有に至るための作業が煩雑な側面がある.またこれらの機器を高齢者を中心とした一般ユーザが扱うのは,困難な場合が多い.そこで,公衆回線を用いた通信機能を備えるス
マートフォンを用いたPHR の管理運用を行うことで,より手軽な健康管理システム実現の可能性が高まると考えた.本研究では,スマートフォンを用いた健康情報の獲得・共有のモデルを作成し,運用実験を行った.

2. システム
本研究で提案するシステムは, スマートフォンを用いた生体情報収集システムと, 通信システムの2つのシステムにより構成される. 日本で現在一般的に普及
しているスマートフォンには,Apple 社によるiPhoneと,Google 社が開発したOS を用いたAndroid の2つである.本研究ではオープンな開発システムによりアプリケーション開発を目的としたため,Android を用いたシステムを構築した.

2.1. 生体情報収集システム
Android を用いたスマートフォン( 以後スマートフォン) は, 通常加速度センサ, ジャイロセンサ, 方位センサ,温度センサなどのセンサ群と, 全方位位置情
報システム(Global Positioning System: GPS)や,ビデオカメラを標準的に内蔵している( 一部はオプション).また, 外部からのデータ取り込みのためのシステムとして,マイクロフォン端子とUSB 端子を内蔵している.心電図( ECG), 筋電図( EMG) や光電脈波などを入力するためには, いくつかの手法が考えられるが, 本研究ではUSB 経由でのデータ入力を採用した.ここで通常USB は,PC とのデータ通信に用いられるため,直接USB を入力端子として用いることができない.そこで,本システムでは,Fig.1 に示すように,生体情報計測用のセンサとスマートフォンの間に,A/D コンバータを内蔵した制御用基板を挿入しこの基板を中継し
てデータの入力を行う構成とした.本 システムではデータ中継基板としてSparkfun
Electronics 社製のIOIO for Android を採用した.Fig.2に実際の装置を示す. 生体情報収集システムは, スマートフォン内のデータストレージに保存される. 最新のスマートフォンでは, 内蔵データストレージが1Gバイト-16G バイト, 外付けデータストレージとして64G バイトの容量のストレージが利用可能である( 実
際にはOS やアプリケーションのための領域が必要であるため若干減る).

2.2. 通信システム
データストレージに保存されたデータは, 利用者が直接確認できることは言うまでもないが, 実際には,医師, 看護師・保健師, 理学・作業療法士などのコメ
ディカルや, 遠隔地に所在する家族にも必要に応じて閲覧・利用が可能でなければならない.そのためには,ECG などの実データから解析後の心拍数までが閲覧できることが必要である. これまで提案されたシステムでは,電子メールのみを用いた方式があるが[3],リアルタイム性はない. 一方, これまでに提案されている通信システムとしては,Fig.3 に示すような,集中管理式のクライアント・サーバシステムがあげられる.このタイプのシステムでは, 一旦データをサーバへ転送する必要があり, 同様にリアルタイム性は確保されない. リアルタイム性を確保するために考えられる通信方式には,Fig.4 に示すようなピアツーピア方式が考えられる.

Fig.1 システム構成
Fig.2 スマートフォンを用いた生体情報収集装置
Fig.3 集中管理型クライアント・サーバ方式の概念
Fig.4 ピアツーピア方式の概念
Fig.5 クライアント・サーバ方式の概念
Fig.6 通信の手順

この時,ピアツーピア方式は, 1 対1 の通信であるため, プライバシー保護の観点からは望ましい. ところが, チーム医療のためには, 同時に複数の医療スタッ
フがデータの閲覧を行ったり, 医師の説明を家族が聞いたりするなど同時に複数の場所から任意のタイミングでデータを閲覧する必要がある場合がある.そこで,本システムでは,Fig.6 に示すような,スマートフォンをサーバとするクライアント・サーバ方式を採用した.特に, 汎用性を追求するため, http もしくはhttps を用いたWWW システムを利用した.ところが,スマートフォンは移動体通信システムであるため,IP アドレスは, 一意に定められない. それどころか, 移動により基地局が変わるとIP アドレスが変化する.そこで,本システムではFig.5 に示すように通信の順序に工夫を加えた.まず, 医師, コメディカル, 家族など( 以後閲覧者)にデータ閲覧の要求が発生すると, 閲覧者から利用者のスマートフォンに向け電子メールによりリクエストを送信する. 電子メールを受け取ったスマー
トフォンは, 現在のアドレスを確認し, メールにて返信する.閲覧者はメールに記載されたアドレスに対し,WWW ブラウザを用いてアクセスすることで, 利用者
のデータを確認もしくはダウンロードすることが可能となる.

3. 評価
提案システムを用いて,ECG の獲得と,WWW 経由でのデータの配信・閲覧が可能か確認した. 使用したスマートフォンは,Table1 に示すとおりである. 尚,今回の実験では, 生体からの心電図獲得は倫理上の観点から見送り, 擬似的な信号を用いて行った. Fig.7に示すように, 閲覧者側でもスマートフォンを用いて心拍数を確認することが出来た.

4. 考察
4.1. 通信システムについて
本システムを用いて, リアルタイムに生体信号の獲得およびデータ通信が可能であることを確認した. 実際には,データ閲覧の要求が発生してからメールの送受信が実行されるため, タイムラグが生じるため, 緊急通報などには利用できない, 心停止など緊急対応が必要な場合には, 利用者のスマートフォンから, 緊急連絡先へ自動で緊急対応の警報などを送ることは可能である. また生体情報は, 重要な個人情報であるため,プライバシーの保護に対する対応が必要となるが,アドレスが一意でないことが逆にプライバシーの保護につながると考える.

4.2. 消費電力について
この種の携帯型生体情報計測システムの開発において常々問題とされるのは, 消費電力と, 連続使用時間である. 本システムでは, スマートフォンの仕様書上の連続待受時間が370 時間, 連続通話時間が4.5 時間であった. ところで, 中継基板を含めた計測回路の消費電流は最大700mA であった.この電源をスマートフォンから直接取り出すことができれば, よりシンプルな構成とすることができるが,現在のAndroid 搭載の携帯電話の仕様ではスマートフォンから電源を取り出すことはできないし,USB 端子からの電源取り出しは電流容量の観点からも不可能である.今回の実験では外付けのバッテリーパックを利用したが, 現状では携帯性を阻害するため, より小型化した電源回路が求められる.本システムが代替可能なシステムとしては,ホルター心電計が代表であろう. 市販されているホルター心電計もしくはその代替装置は, データを本体内に保存するタイプもしくは無線通信でデータを外部に置かれた装置へ転送するタイプである. 前者はオフラインの通信しかできないし, 後者は汎用の回線を使用していないため, 任意の場所からデータを確認しようとすると, さらに中継のコンピュータなどが必要となる. また, 心拍数の抽出, 心拍数変化の解析などは,別途処理が必要な場合もある. これに対し本システムでは, データの保存, データ処理・解析などが本体のみで可能である.そのため,PHR 管理システムとしては, 理想的であると考える.

5. まとめ
PHR管理のための支援システムとして,スマートフォンを用いた生体情報収集システムを構築した. 電源など改良が必要な部分は残るが, データ収集から通信までがシームレスに結合されたシステムを構築したことで, より簡単に, 日常生活中における生体情報収集と管理が可能になったと考える.

文 献
[1] Masayuki Nambu: Body Surface Mounted Biomed-ical Monitoring System using Bluetooth, 1824-5, Conference Proceedings of IEEE Engineering Medical Biological Society 2007;2007:
[2] Y.Masuda, M.Nambu, K.Chihara, T.Tamura: An Unconstrained Monitoring System for Home Rehabilitation, IEEE EMBS Magazine, pp.43-47, 24(4), IEEE, 2005.
[3] Kazuki Nakajima, Masayuki Nambu, Tohru Kiryu, Toshiyo Tamura and Kazuo Sasaki,”Low-cost, email-based system for self blood pressure monitoring at home,” Journal of Telemedicine and Telecare, pp203-207, 12(4), The Royal Society of Medicine Press, 2006. 
(英) (Available after conference date)
キーワード (和) PHR / 健康管理 / スマートフォン / / / / /  
(英) / / / / / / /  
文献情報 信学技報, vol. 112, no. 232, MBE2012-44, pp. 45-48, 2012年10月.
資料番号 MBE2012-44 
発行日 2012-10-04 (MBE) 
ISSN Print edition: ISSN 0913-5685  Online edition: ISSN 2432-6380
著作権に
ついて
技術研究報告に掲載された論文の著作権は電子情報通信学会に帰属します.(許諾番号:10GA0019/12GB0052/13GB0056/17GB0034/18GB0034)
PDFダウンロード MBE2012-44

研究会情報
研究会 MBE  
開催期間 2012-10-11 - 2012-10-11 
開催地(和) 大阪電気通信大学 
開催地(英) Osaka Electro-Communication University 
テーマ(和) ME,一般 
テーマ(英) ME in general 
講演論文情報の詳細
申込み研究会 MBE 
会議コード 2012-10-MBE 
本文の言語 日本語 
タイトル(和) スマートフォンを用いたPHR管理システムの構築 
サブタイトル(和)  
タイトル(英) PHR management system using Smart phone 
サブタイトル(英)  
キーワード(1)(和/英) PHR /  
キーワード(2)(和/英) 健康管理 /  
キーワード(3)(和/英) スマートフォン /  
キーワード(4)(和/英) /  
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キーワード(7)(和/英) /  
キーワード(8)(和/英) /  
第1著者 氏名(和/英/ヨミ) 堀内 学 / Manabu Horiuchi / ホリウチ マナブ
第1著者 所属(和/英) 大阪電気通信大学大学院 (略称: 阪電通大)
Osaka Elictro Communication University (略称: OECU)
第2著者 氏名(和/英/ヨミ) 南部 雅幸 / Masayuki Nambu / ナンブ マサユキ
第2著者 所属(和/英) 大阪電気通信大学 (略称: 阪電通大)
Osaka Elictro Communication University (略称: OECU)
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講演者
発表日時 2012-10-11 14:40:00 
発表時間 25 
申込先研究会 MBE 
資料番号 IEICE-MBE2012-44 
巻番号(vol) IEICE-112 
号番号(no) no.232 
ページ範囲 pp.45-48 
ページ数 IEICE-4 
発行日 IEICE-MBE-2012-10-04 


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