- 社会インフラとしての情報通信インフラの将来像
- カーボンニュートラルと経済成長の両立を実現するネットワークのインフラやコンピュータの在り方
- 産業用途にも耐える超高信頼、超低遅延を実現する将来無線インフラの在り方
- 新宇宙時代のコミュニケーションシステムの在り方
- 新しいネットワーク・コンピューティング基盤を支えるデバイス技術,新素材・材料技術
会長だより
第2号(2023年6月1日配信)
会長だより 2023.6 第2号
川添 雄彦
初夏が終わり向暑の候となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私が本学会の会長を拝命してちょうど一年の任期が過ぎようとしております。ここまで皆様のお力添えで様々な活動と経験をさせて頂き、会員および事務局の皆様には心から感謝を申し上げます。改めて振り返りますと、私は会長に就任した際、新たなイノベーションを興すために、「産学官の連携強化」「学会のグローバル価値の向上」「新たな会員の形の模索」という三つの運営方針を立てました。この一年の締め括りとしまして、これらの進捗をご紹介したいと思います。
一つ目の柱である「産官学の連携強化」につきましては、企業から求められる学会へ変革するために企業イニシアティブ委員会を立ち上げ、以下の3つの分科会を設置いたしました。
NTTが提案する「カーボンニュートラルICT」分科会では、クリーンエネルギー創出・低消費電力化・CO2の吸収と固定・サーキュラーエコノミー・ビジネスエコシステムなど、情報通信システムにおける技術課題に加えてビジネス課題も解決するトータルなソリューションを模索します。そのスコープは企業が直接的に関係のある温室効果ガス削減だけではなく、事業者の活動に間接的に関連する温室効果ガスの削減も狙いとしています。
NECが提案する「AIが相互運用される社会システム検討」分科会では、人類が直面している現在の複雑な社会課題を解くために、個々の社会システムが相互接続してコミュニケーションを行い、全体が連携して最適に働くシステムを模索します。この仕組みの構築に向けた課題抽出や解決方法について様々な分野の専門家にご協力を頂き、関連技術や知見を共有すると共に、課題解決のためのエコシステムを創成します。
三菱電機が提案する「ビジネスインキュベーション」分科会では、個別の組織では解決できない課題を企業側から示し、信学会内外から集まった参加者の英知を結集して、アイディアソン・ハッカソン・プロトタイピング・アイディアプール等を通じて課題の深堀と解決策の創出を図ります。本学会は技術にとどまらない社会価値について論文や講演など学術成果発表の場を提供すると共に、提案企業および参加企業は成果に応じて共同研究や国プロ提案などの個別活動に移行していきます。
さて、ひとつだけ残念なお知らせを申し上げますと、カーボンニュートラルICT分科会が6月2日に久米島で初のシンポジウムを企画して下さったのですが、あいにく台風の影響で中止となってしまいました。これは参加を予定していた私としても無念でならず、楽しみに申し込んで頂いた方々や準備に奔走して頂いた方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。本シンポジウムは「日本の特色・強みを生かすとともに、地域活性化と経済成長の両立を可能とするカーボンニュートラルのあり方」という魅力的なテーマを設定しておりますので、もし仕切り直しての開催が叶うようでしたら、ぜひ皆様のご参加をお願い申し上げる次第です。
二つ目の柱である「学会のグローバル価値の向上」につきましては、英語一択を強いる現在の風潮に対して、各国の言葉で執筆されたコンテンツついて、それを学会側で多言語翻訳するサービスを提供いたします。これを具現化するために、多言語翻訳プラットフォームという構想が立ち上がりました。まずは多言語翻訳のプロセスとして、TeX等で書かれた論文原稿を機械翻訳で扱い易いHTMLやPDFへ変換します。対訳の辞書データと信学会独自の翻訳精度向上技術がキーポイントとなりますので、各国翻訳の性能評価を重ねてブラッシュアップしていきます。2024年の4月には本学会の代表5誌で新規投稿文を多言語版でリリースし、さらに2025年の4月には過去2年分の論文も多言語版で提供する予定となっています。このサービスが軌道に乗れば、グローバル化の推進やインパクトファクターの向上も期待できると思います。
三つ目の柱である「新たな会員の形の模索」につきましては、本会全体では依然として会員数が減少傾向という厳しい状況ではあるものの、期待が持てるプラスの兆候もございます。若年層に目を向けますと、学生会員が前年度比で約60人、ジュニア会員が約80人増えているのです。これは皆様と力を合わせて2020年に蒔いたジュニア会員制度という種が、早くも芽を吹き始めたという証でもありますので、まだまだ打つ手はあると思いまして色々な会員制度を作りました。まずアソシエートメンバー制度を新設しました。これは本会の会員にならなくても、電子工学や情報通信の専門家、あるいは本会の活動そのものに興味がある方々を広く募るものです。特典として、入会時の入会金免除、学会最新情報の提供、会誌の割引購入などがございます。そしてもうひとつ、IEICEアンバサダー制度を新設しました。これは本会の啓発、イメージ向上、会員同士の関係強化に貢献して頂ける方を募るものです。例えばTwitterを用いて本会のハッシュタグを付け、学会公式Twitterアカウントから面白いトピックスを選んで紹介するなどの活動があります。特典として、学会の公式役職としてお名前、ご所属、研究分野、自己PRを学会ホームページに掲載します。さらに学会員制度の改善も行いました。2023年度より2年間限定のキャンペーンとして学生員の会費を4500 円から3000円に引き下げましたので、どうぞご活用ください。
その他の施策としては、教育コンテンツの充実を図るIEICE全集中シリーズの企画、会員皆様の活動とコミュニケーションを円滑にするWebexアプリの導入なども行いました。さらに研専幹事の皆様のご負担を少しでも軽くするために、本部で職員を雇用して会計などの事務業務を移しているところであり、2023年度内には全研専への対応が完了する見通しです。
また、国内における関連学会との連携にも力を入れておりまして、毎年定例の5学会協議会では電子情報通信学会・電気学会・情報処理学会・映像メディア学会・照明学会の幹事代表が集い、各学会の課題や施策について緊密なディスカッションが行われています。例えば、会員数の伸び悩み等はいずれの学会にも共通した課題です。相互の意見交換は当学会の運営にとって大きな価値がありますので、私自身も電気学会との役員懇談会や電気学会総会での講演を通じて、さらなる連携強化と課題解決策の模索に励んでまいりました。
以上の通り一年間の進捗をご紹介いたしましたが、これらの取り組みに流れる私のフィロソフィーを、通信システムの発展に例えてお話します。私達が狙う大きなゲームチェンジを起こすには大きなチャレンジが必要であり、連続ではなく不連続の変化が求められます。通信システムでいえば3G~4G~5Gと世代が進んできましたが、この変化は連続的なものです。今までの勝者はBeyond 5Gという連続性のある戦略を望むでしょう。しかし、我々はチャレンジャーであり不連続の変化を必要としています。すなわち限界打破のイノベーションが必要です。企業が前に出てリードする学会、英語に拘らない学会、会員ではない仲間がいる学会、いずれも従来の固定観念を大きく飛び越える試みを実現したいという切なる想いがあるのです。
さて、いよいよ6月の総会からは森川新会長へバトンタッチいたしますが、これらの高い目標を結実させるには、引き続き全員で力を合わせて前に進んでいくことが必要です。どうか皆様より一層のお力添えを賜りたく、改めてお願い申し上げる次第です。末筆となりましたが、今後も本学会の持続的な発展と皆様のご健勝が末永く続くことを心より祈念しまして、私の会長だよりを閉じさせて頂きます。ありがとうございました。
第1号(2022年8月1日配信)
会長だより 2022.8 第1号
川添 雄彦
平素より会員をはじめとする関係者の方々から多大なお力添えを賜り感謝に堪えません。私も前会長の石田先生より本会運営のバトンを受け取って思いを新たにしておりますが、皆様と共に学会を盛り上げる方針について大きな三つの柱を考えております。一つ目は「産学官の連携強化」であり、企業から見た学会の魅力の検証や学会の貢献の見える化を進めたいと思います。二つ目は「学会のグローバル価値の向上」であり、言語の壁を乗り越える技術革新によって母国語での参加を可能にしたいです。三つ目は「新たな会員の形の模索」であり、学術貢献に限らず本会に貢献してくれる会員を増やす試みです。いずれも具体的なアクションを積み重ねて少しずつ形にして参りたいのですが、その皮切りとして今回ご紹介する一例は、「産学官の連携強化」に密接したシンポジウム開催の報告です。
2022年5月27日、「将来の情報通信インフラのあり方を考える」というテーマでコミュニケーションシステム研究会よりシンポジウムを開催しました。ご存じの通り、コミュニケーションシステム研究会は2021年度より従来の通信方式研究専門委員会から名称変更しており、新領域・境界領域を含む物理レイヤからアプリケーションまで含む大変幅広い分野を扱っています。世界を取り巻く情勢が大きく変化する中で、コミュニケーションシステムの基盤となる情報通信インフラの将来の在り方について、産学官が取り組むべき以下の命題を設定しました。
長年に渡って各業界を牽引してこられた錚々たるご講演者を迎え、美しい海と宇宙センターを臨む種子島でのハイブリッド開催は、現地参加50名・オンライン参加122名の大盛況となりました。ホットな話題として、B5G/6Gによるサイバー社会の生活シナリオ、サスティナブル社会へ貢献する最新プロセッサ、スピントロニクスによる半導体の省エネルギー化、惑星規模の大規模広域分散システム、DXとCNの実現、化学素材とスマートプラントの実現、JAXA宇宙開発ロードマップなどを採り上げて頂き、産学官の共通課題を十二分に認識することができました。そして私自身も演壇に立ち、ニューノーマル時代の学会運営のポイントとして、限界打破のイノベーション、学会を取り巻く状況、企業イニシアチブ委員会の設立、翻訳プラットフォーム検討プロジェクトなどについて述べ、参加者の皆様と貴重な意見交換をさせて頂きました。
その後、夕刻よりランプセッションを開いて全講演を振り返り、コロナ対策に十分配慮した上で、ご講演者と参加者との対面議論を行いました。リアルならではの熱気と掛け合いに時が経つのを忘れるほどで、一歩踏み込んだ議論で交流を深められたことが何よりの収穫であったと思います。さらに翌日はテクニカルツアーとして種子島宇宙センターの見学ツアーを行いました。JAXAの方のエスコートで迫力ある実機の展示や発射場を目の当たりにしますと、宇宙の研究開発に対する意欲が改めて湧き上がった次第です。
今回のシンポジウムを企画するにあたって、世界と足並みを揃えるテーマの設定はもとより、ハイブリッドという開催様式にも期待と思い入れを込めておりました。オンライン文化の浸透と共に改めて気づかされたのは、今まで当たり前だと思っていた人とリアルに会えることの価値だったからです。シンポジウムの準備をして下さった皆様も大変お疲れ様でした。会場の熱気は現地種子島を超えてリモート参加の方々まで届いたのではないでしょうか。これからも皆様と力を合わせて本会を盛り上げていきたいと思いますので、積極的な企画提案をお待ちしております。
最後に、2022年6月9日の会長就任挨拶の際にも申しましたが、いまから105年前、初代会長の利根川博士が会長にご就任された際、「世界への発信と発明考案の創出に力を入れたい」とお言葉がございました。これはまさにこれから私たちがめざすものと同じ方向であり、進展させていくべきものと考えております。皆様、世界への発信とイノベーションの創出に改めて力を入れてまいりましょう!
どうぞよろしくお願いします。