会長だより

    第3号(2022年6月6日配信)

    会長だより 2022.6 第3号

    石田 亨

     早いもので6月の総会で任期を終えます。次期会長、会長と2年間、コロナ下の学会運営でした。共にご苦労を頂いた会員の皆様、理事の皆様、事務局の皆様にお礼を申し上げます。

     会員数の減少が続いていることを心配される方も多いと思います。学会は会員増の努力を続けてきましたし、その成果も上がってはいるのですが、会員減の流れは止めることはできないでいます。本会の会員数はかつての2/3ですが、この傾向が続けば1/3程度になるかもしれません。本会に限らず、多くの学会が同様の現象に直面しています。会員増の努力はもちろん大切ですが、この現象を学会の歴史的転換の契機であると捉え、変革へと進むことがより重要と思います。「伝統」は「変革の連続」により生まれると言われます。本会の100年の伝統は、今、私たちを「変革」へと誘っています。

     以下、これまでに幹事会で行ってきた議論をまとめ、新年度へのメッセージとさせて頂きたく思います。

    1.会員による「会員のための学会」から「社会のための学会」へ

    電子情報通信に関わる方々の多くが会員であった頃と、電子情報通信の核となる方々によって構成されるこれからとでは、学会が提供するサービスは本質的に異なると思います。「会員による会員のための学会」から、視野を学会外に広げ、「会員による社会のための学会」へと転換していく必要があります。会員の研究開発活動を広く社会に知らせ、会員の社会的ステイタスを向上させるサービスが重要になります。コロナ下におけるWebinarの成功はそのさきがけと言えるでしょう。また、今後、本会が社会的課題の解決に向かうのであれば、会員のさまざまな連携活動を支えることが大切です。

       *会員の発信や連携活動を支え社会のための学会へと転換する

    2.企業と学会の関係の再構築

    本会は企業所属の会員が半数を占めています。理事会も多くの企業会員によって支えられています。しかし、企業にとっての学会の位置づけは希薄となり、学会への参加は個人の問題と考える企業が増えています。その結果、企業会員による論文は2割にまで減少しています。研究専門委員会を中心に技術的・研究的な価値を追求してきた本会と、分野横断的に社会的価値を創造しようとする企業との間にずれが生じているのです。そこで、企業と学会の関係を再構築するために、2022年度から川添新会長を中心に、企業が運営を担う企業イニシアティブ分科会が立ち上がります。研究専門委員会と企業イニシアティブ分科会を両輪とすることで、企業と学会の新たな関係が生まれていくことを期待しています。

       *企業イニシアティブ分科会による社会的価値創造を通じて企業と学会の関係を再構築する

    3.会員制度を見直して学会内外の連携を図る

    若手会員の減少には様々な原因が考えられますが、一旦減少した若手会員を増やすことは容易ではありません。若手が学会に入らない原因に、「若手が少ないから」という理由が加わるからです。この状況を転換するには、単に会員増を目指すのではなく、思い切った対策が必要です。そこで、幹事会ではアソシエイトメンバーの検討に入りました。大会や研究会で発表されたなど、本会の活動に関りを持った方々をアソシエイトメンバーとして登録するのです。本会の一般向けコンテンツをアソシエイトメンバーに無料で提供し、各種イベントへの参加を呼び掛けることで、本会の活動の裾野が広がっていきます。数千人のアソシエイトメンバーを得ることで連携活動が盛んになり、社会に開かれた学会になればと思います。

       *アソシエイトメンバーを導入し学会内外の広汎な連携活動を推進する

     本年度は検討できませんでしたが、運営コストの縮小を図ることも必要です。現在の学会の運営組織は、会員数が最大であった頃に確立しています。研究専門委員会、各種委員会の数や委員構成の見直し、運営のデジタル化、ルールの柔軟化など、会員数に見合った運営コストとしていくことが必要です。

     次期会長、会長の2年間で多くのことを学ばせて頂きました。6月の総会から川添新会長にバトンタッチをします。会員の皆様には、新会長が進める学会の歴史的転換にご協力を頂くようお願いいたします。私も引き続き貢献できるよう努めてまいります。

    第2号(2022年1月25日配信)

    会長だより 2022.1 第2号

    石田 亨

    コロナは終息かと思われたほど平穏な時期がありましたが、またオミクロンが広がりビジネスに教育研究に支障が出始めました。私が企画に参加しているワークショップでも、対面からオンラインへの切り替えに頭を悩ましています。

    さて、最近の学会活動のなかで、印象深いものをいくつかご紹介します。

    EventInは使えるぞ!

    前回も紹介しましたが、学会活動向けにコミュニケーション機能を進化させた株式会社ブイキューブのEventInが、全ての研究会や国際会議で利用できます。
    https://www.ieice.org/jpn_r/event/EventIn/index.html)。既に、利用いただいた研究会もあるようですが、まだまだご存じない方も多いように思います。

    例えば、国際委員会は山中直明副会長を中心に、グローバル・ネットワークショップ(https://www.ieice.org/jpn_r/assets/pdf/information/Advertisement.pdf)を初めて開催しました。留学生や海外で活躍する研究者たちの交流の場ですが、EventInを使って全体会議とポスターセッションが自在に組み合わせられていました。特に、留学生によるポスターセッションは、母国人同士や、海外セクションの方々のコミュニティ作りにも役立つものでした。

    私も半信半疑だったのですが、使ってみてEventInの威力に驚きました。オンラインでつまらなくなりそうだった「名誉員・歴代会長を囲む懇談会」にEventInを採用させて頂きました。先輩が怖いのは若者だけでなく、私のようなシニアも一緒です。普通のオンライン会議を使うと「つまらない懇談会だったね」と言わそうだったのですが、EventInでソサイエティや委員会ごとにデモ会場を設けたところ、先輩方が思い思いに集まり、事務局の方々も一緒になって同窓会状態になり、大変楽しいイベントになりました。

    皆さまもぜひお試しください!

    災い転じて福となす!

    サービス委員会の植松友彦副会長に最近うまくいったことをいくつか教えて頂きました。

    1)ソサイエティ大会の参加者総数が高止まりしている。 参加者数は3865名で、オンサイトで実施した阪大の2663名と比べると1.4倍に増えている。発表についても 企画セッション総数も公募講演数も増加した。
    2)IEICE ICT Pioneers Webinarは、2年目に入っても好評で、毎回300名から 600名の参加者を集めている。6月から11月までの平均参加者数は480名。今後の講師陣にご期待ください。
    3)2年目を迎えた電気電子系高度技術者育成プログラムは、昨年度の2倍以上となる 63名の応募があり、実習等の講義を2回に分けて行う必要が生じた。

    勿論、それぞれのイベントの内容がよかったのでしょうが、参加しやすいというオンラインの特徴も現れていると思います。学会活動にとって対面は重要なのですが、オンラインで参加者を集め、EventInで交流すれば、この難局も福となせるという実感が得られています。

    企業イニシアティブ分科会を立ち上げよう!

    学会の懸案の中で、企業会員の減少は重要です。本会の場合には、企業は学会に協力するという立場ではなく、企業研究者が研究活動を担ってきました。かつては論文の過半が企業だったのですが、今では2割にまで減少しています。企業が学会活動に価値を見出せず、学会が企業活動の受皿として機能していないのだと思います。

    そこで、本会を産学連携の場としてリバイブさせるために、企業を中心とする活動の場を検討し始めました。ICT分野で活躍する企業は、業種を超えたDX、社会の仕組みのDX等、社会課題の解決がビジネスの主戦場になってきています。そうした企業の期待に応えるために、専門領域の枠を超えて、企業価値につながるテーマを企業自らが提案し、企業がイニシアティブをとる分科会を立ち上げてはどうかと思います。

    企業イニシアティブ分科会は、アカデミックな成果を目指す研究専門委員会とは違い、価値創造を目指します。実は大学の先生方からも、本会は社会の価値創造に取り組んではどうかとのご意見を多く頂いています。企業イニシアティブ分科会が発足し、大学の会員にも参加いただくことで、産業界のコンソーシアムとは異なる、学会らしい展開が生まれることを期待しています。

    企業イニシアティブ分科会を次年度よりスタートさせるよう、川添雄彦次期会長を中心に検討アドホックが発足します。本会にご参加いただいている企業会員の皆様には、学会が新たな価値創造の源泉となるよう、分科会の立ち上げに協力いただければと思います。

    第1号(2021年9月28日配信)

    会長だより 2021.9 第1号

    石田 亨

     コロナ禍の中、会員の皆様は安全にお過ごしでしょうか。なかなか集まることができず、研究会活動などにご苦労されていることと思います。コロナに加えて経済の動向や気候変動など、気になることも増えてきました。研究においても、持続可能社会に向けての取り組みがこれまで以上に求められ始めています。

     新しい分野に挑戦することは、若手であってもシニアであっても覚悟のいることです。そのような時に研究の仲間はありがたく、目指す方向を共有できる研究者が集まり高め合うのが学会の原初的な姿であると思います。電子情報通信学会は100年の歴史を持ちますが、いつまでもそのようでありたいと思っています。

     さて、6月に会長就任してからの学会活動のなかで、印象深いものをいくつかご紹介します。

    コロナ下のソサイエティ大会

     電子情報通信学会の大会には、全ソサイエティが参加する総合大会(3月に開催)と、ソサイエティ毎の大会(9月に開催)があります。情報・システムソサイエティ、ヒューマンコミュニケーショングループは8月25-27日に情報処理学会と共にFIT(情報科学技術フォーラム)を開催しました(https://www.ipsj.or.jp/event/fit/fit2021/)。基礎・境界ソサイエティ、通信ソサイエティ、エレクトロニクスソサイエティ、NOLTAソサイエティは9月14-17日にソサイエティ大会を開催しました。(https://www.ieice-taikai.jp/2021society/jpn/index.html)。

     ところで、FITは500件の発表と2000名を超える参加者がありました。ソサイエティ大会は1200件の発表と4000名近い参加者がありました。共に発表件数は回復基調にあり、参加者数は、オンラインを活用した企画の充実によりコロナ前を大きく上回っています。私は、FITでは公開シンポジウム「大学入学共通テスト『情報』が目指すもの」に、ソサイエティ大会では「第6期科学技術・イノベーション基本計画から読み解く我が国が向かおうとする方向」に参加しました。いずれも各界の専門家の方々が講演され、大会の質の高さを再認識しました。他にも多くのシンポジウムや講演があるのですから、オンラインを活用し積極的に公開することで、学会の社会に対する貢献を大きく高めることができると思います。

    Webinarの成功とメディアコンテンツの蓄積

     サービス委員会(植松友彦委員長、永妻忠夫前委員長)が取り組むWebinar のIEICE ICT Pioneer Seriesは、毎回500~1000名の視聴者を集めて大盛況です。直近では、9月22日に辻井重男先生の「フェイクとの闘い~暗号学者の視た理念と現実・太平洋戦争からコロナまで~」が開催され、暗号研究の壮大な背景を学びました。こうしたWebinarは、ソサイエティや研究専門委員会が作成したものを含め、学会のホームページに掲載されています(https://www.ieice.org/jpn_r/activities/video_archives/)。

     ところで、企業や大学、さらに一般の方々の関心を広く集めるには、メディアコンテンツが一定規模を超えて蓄積されることが必要です。そこで、各研究専門委員会では、研究の歴史を記録する講演を、当時を牽引された方々に依頼して頂けないでしょうか。また若手の方々は、最新の研究やプロジェクトを解説する講演や紹介ビデオを掲載して頂けませんか。作成頂いたWebinarは上記のホームページから掲載することができます。

    災い転じて福となす先進的取り組みの支援

     財務委員会(川添雄彦委員長、足立朋子幹事)は、コロナ禍の研究会、国際会議を魅力化する取り組みを支援しています(http://app.journal.ieice.org/trial/104_6/k104_6_616/index.html)。これは、コロナで学会活動の中止・延期が続くなか、学会活動の改善と向上を目指して開始されたものです。これまでに、様々なオンラインツールを用いたイベントの試行や環境整備に支出が行われました。ぜひ、過去の取り組みの様子を動画でご覧ください(https://webinar.ieice.org/article.php?&expandable=10&code=EIC&sel=adv&year=2021)。

     多くの支持を得た取り組みはサービス委員会で取り上げられ、別途予算を組んで学会全体で活用されます。例えば、学会活動向けにコミュニケーション機能を大きく進化させた株式会社ブイキューブのEventInが、全ての研究会や国際会議で利用可能になりました(https://www.ieice.org/jpn_r/event/EventIn/index.html)。こうした成功体験の蓄積と学会全体への波及がアフターコロナの活動を切り拓く力になると思います。

    学会トランスフォーメーションが始動

     企画戦略室(水落隆司室長)は長期的な課題を検討する委員会です。「会員数の減少」は悩みの種で、企業会員も大学会員も、年齢が下がるにつれ減少する傾向が続いています。会員数の減少は人体で言えば皮膚に現れた症状で、原因が体内にあるのなら根本治療が必要です。そこで企画戦略室は、若手研究者の共感を得る学会を目指し、「若手による若手のための学会革新ワーキンググループ(石橋功至リーダー)」を発足させました(https://www.ieice.org/jpn/kikakusenryaku/wakatewg.html)。

     このワーキンググループを通じて、研究専門委員会(各種研究会の運営母体)を苦労して支えている若手からの切実な要望が寄せられています。要望の中には、迅速に対応可能なものもあります。例えば、研究会の会計処理の負担が法人化後に増えたことについては、事務局が直ちに動き、会計処理の肩代わりを始めました。もっと早く始めればよかったという意見もありますが、組織の階層が深く、現場から意見は上がらず、本部も伝え聞くだけで対応に至らなかったのだと思います。今回のワーキンググループのように、現場の意見がストレートに本部に伝わる仕組みが必要なのだと思います。

     ただ、解決が容易でない要望もあります。100年の歴史の中で積み上げられた制度と文化を変えるには、相当なエネルギーが必要です。そこで企画戦略室は、学会トランスフォーメーション(SX)を掲げ、学会の将来の姿を描くPoC(proof of concept)を実施しようとしています。PoCの具体例として以下が挙げられています。

    A 若手会員活動支援
    B 民間企業との連携による価値創造活動
    C 他学会連携・運営一体化活動
    D ソサイエティを超えた複数研専による連携活動支援
    E これまでの論文誌の枠を超えた企画・立案

    関心をお持ちの方は、幹事団(kikaku-kanji【at】ml.ieice.org)に提案をお届けください。企画戦略室はSXに向けて本気で取り組んでいますのでご協力をお願いします。

    幹事会は面白い!

     コロナ禍で、居酒屋で親交を深める機会がなくなりました。理事会や委員会は「表」の場ですので、提案に問題がないかどうかをチェックする場になりがちです。そこで、オンラインではありますが、執行部が集まりアイデアを膨らます幹事会を設けました。9月に始めたばかりですが、私にとっては既に大きな学びがありました。

     電子情報通信学会はいくつかの懸案を抱えていますが、その一つは「企業の学会離れ」です。これはどこの学会でも生じていることですが、企業会員が大学会員同様に研究をドライブしてきた本会の場合には特別の意味を持ちます。かつては複数の企業が研究会に集い技術開発を推進していたのですが、時代が移りそうした協働は難しくなりました。しかし、実は最近、学会を中心とした協働への新たなニーズが生まれつつあることを知りました。

     情報通信システムは社会のインフラとして、あらゆる産業でデジタルトランスフォーメーションを引き起こしつつあります。また、脱炭素社会に向けてグリーンbyデジタルやグリーンofデジタルの重要性が増しています。こうした研究開発は、一つの企業や一つの専門では完結せず、さまざまな協働を必要とします。電子情報通信学会がその協働の場となれば、企業の学会離れも止まるかもしれません。ただ、協働の目標も方法も以前とは違うので、学会に新たな仕組みの導入が必要となります。先に申し上げたSXですね。

     幹事会で、企業の研究開発を率いておられる理事の意見を伺って、この学会はただものではない方々の集まりだと思いました。大学の教授会もそうですが、議案の審議をしているとつまらない先生方も、居酒屋で自由に語り始めると実に面白いです。コロナ禍で委員会がつまらないと感じられたら、アイデアを膨らませる場を併設されてはいかがでしょうか。