こんにちは、日本リビングラボネットワークの新井田です。いよいよ、大阪・関西万
博の開催が約半年後に迫っています。万博の話はさまざまなニュースで取り上げら
れていますが、そのテーマやコンセプトについて、具体的な内容を知らないかもしれ
ません。今回のコラムでは、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイ
ン(Designing Future Society for Our Lives)」とコンセプト「People’s
Living Lab(未来社会の実験場)」について、デザインリサーチを専門とする筆者
の立場から掘り下げてみたいと思います。
大阪・関西万博は、2005年に愛知県で行われた愛・地球博以来20年ぶりの日
本開催です。愛・地球博のテーマ「自然の叡智」を継承して、人間社会と地球環境と
の協調を理念に掲げています。人間社会と地球環境との関係と言えば、「SDGs」と
いう言葉で学んだ方も多いでしょう。SDGs(持続可能な開発目標)には、「気候変
動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」など環境に関するものが含まれてい
ます。これらの課題は簡単には解決できないと考えられており、こうした達成が困難
な目標に対する課題解決のアプローチとして、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く
未来社会のデザイン」にも含まれている“デザイン”が注目されています。
皆さんは、デザインという言葉から何を想像するでしょうか。すぐに思いつくものと
して、文字(フォント)や本、チラシ、服、建物などのデザインがあるでしょう。こうした
デザイン活動に共通していることは、美しい、見やすい、住みやすいといった機能を
工夫して具体的な形にしていくこと、すなわち“意匠”です。さらに街のデザインと
いった場合では、どのような機能を持たせるか、機能をどのように配置するかとい
う、具体的な形にするための“設計・計画”という意味も含んでいます。こうしたデザ
イン活動をする人をデザイナーと呼びますが、デザイナーの仕事のやり方が、複雑で
厄介な問題に取り組む際に適していると言われるようになり、注目されています。
デザイナーがデザイン活動をする際に見せる特徴的なものの考え方を“デザイン
思考”と呼びます。デザイン思考で課題解決を行う際の特徴として、実際の状況を
見て感じて理解することや、本質的な課題をさまざまな制約の中で突き詰めること、
現実に形にして反応を見て試行錯誤を繰り返すこと、などがあります。地球環境や
人間社会といった多様な人や物、事柄が関係する厄介な問題を扱う場合、一つの技
術や方法で全てが解決することはありません。世界の状況を実際に見て理解し、問
デザインってなんだろう?
Copyright © 2024 The InsƟtute of Electronics, InformaƟon and CommunicaƟon Engineers
題を突き詰め、試行錯誤で課題を解決しながら未来に向かって進んでいく、そのよ
うなアプローチが必要になります。大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会
のデザイン」には、そうした試行錯誤しながら未来に進むという意味が込められて
いると筆者は考えます。
こうした人間社会や地球環境デザインは、デザイナーだけで行うべきものではあ
りません。問題に関わる人々と共に、実際に生きている環境の中で試行錯誤する必
要があります。デザイン活動に様々な人々が関わることを、“参加型デザイン”や
“共創デザイン”と呼びます。そして、実際に生きている環境の中で実験的な取り組
みをしながら課題を解決する場のことを“リビングラボ”と呼びます。その名の通り
生きた実験室です。現在、日本だけでなく世界中に、様々な課題に取り組むための
リビングラボが作られて活動しています。私の所属する日本リビングラボネットワー
クは、こうした活動を行う人たちを支援する活動をしています。大阪・関西万博で
は、未来の社会のあり方をデザインのアプローチで探索する場としてリビングラボ
を設置し、展示をする企業や大学、公的機関と来場する人々が共に体験して考える
「未来社会の実験場」となることを目指しています。
本コラムでは、デザインとリビングラボというキーワードから、大阪・関西万博に
ついて考えてみました。万博がどのようにこれらの理念を具現化し、新たな社会の
形を提示するのか、非常に楽しみです。大阪・関西万博は、単なる展示イベントを超
え、未来の社会を形作るための重要な実験場として、私たちに多くの学びとインス
ピレーションを提供することでしょう。
(JNoLL 新井田 統)
参考
[1]大阪・関西万博について
https://www.pref.osaka.lg.jp/o030010020/bampaku_suishin/2025expo/
index.html
[2] 万博での取り組み “People’s Living Lab” 未来社会の実験場
https://www.city.osaka.lg.jp/ictsenryakushitsu/cmsfiles/
contents/0000524/524680/20210208_shiryo2.pdf