研究を進めて良い成果が得られたとき、多くの場合、学会発表を行います。特に国際
会議では、海外から多くの研究者が集まるため、広範なコミュニティの中で新たな
見や人脈を得る絶好の機会となります。このコラムでは、2008年6月に香港で開
された国際会議で出会った、フランス人の友人との16年にわたる交流についてお
しします。
当時、私は博士後期課程の学生で、研究発表を行った際に質問してくれたのがフラ
ンス人のG氏でした。彼も同じく博士後期課程の学生で、私の発表に強い興味を示
し、自分の研究に応用できるかもしれないと話してくれました。
多くの国際会議では、バンケットやウェルカム/フェアウェルパーティーなどのイベン
トが開催されます。フェアウェルパーティーで再びG氏と会い、彼が日本のアニメ好き
であることから意気投合しました。このような出会いは国際会議ではよくありますが、
通常は一期一会で終わることが多く、特に外国人との関係が続くことはまれです。
そんな中、同年9月にハンガリーで開催される国際会議に参加することが決まってい
た私が、そのことを何気なくG氏に伝えると、彼はハンガリーの会議後にフランスに立
ち寄ることを提案してくれました。これにより、私たちは再会の機会を得ることができま
した。
フランスでは、当時交際していた現在の夫と共に、G氏とその彼女が同棲する家に招
かれました。そこで彼が手作りのブルターニュ風ガレットを振る舞ってくれたことを今
でも鮮明に覚えています。日本のアニメやゲームについて話し、大いに盛り上がりまし
た。また、G氏の所属する大学や研究室を案内してもらい、私の招待講演まで計画して
くれました。
彼の正確な年齢は未だに知りませんが、当時彼は博士後期課程の学生であり、私と
さほど変わらない年齢であったことは確かです。それなのに、日本から突然やってきた
国際会議の出会いから始まった
16年の友情
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面識がほとんどない私たちを歓迎し、できる限りのおもてなしをしてくれたことは、私
にとって大変驚くべきことでした。逆の立場だったとしたら、とてもではないですが当
時の私は彼のようには振る舞えなかったでしょう。少なくとも家に招くことはなかったと
思います。
その2年後の2010年、私と夫はフランスで開催される国際会議に参加し、G氏と再
会しました。彼は前回以上に大いに歓迎してくれ、自宅に泊めてくれただけでなく、自
身の車で私たちを遠方まで観光に連れて行ってくれました。彼の自宅から300km以
上離れた場所にわざわざ連れて行ってくれたことを考えると、彼がいかに我々に時間
と労力を費やしてくれたかがよくわかります。
その後もSNSを通じて連絡を取り合い続け、2015年と2016年には彼とその妻が
来日しました。私たちは娘を連れて大阪まで彼らに会いに行きました。積もる話もあ
たけれど、私の英語力ではさほど深い話はできず、娘がまだ小さいので落ち着かない
上、ありきたりな観光地にしか案内できなかったことが残念でした。彼らが以前そうし
てくれたように、もっと色々と手を尽くしてもてなしたかったのですが、小さい子供連れ
ではできることに限界がありました。
これ以降、2020年からの新型コロナウイルスの影響もあり、しばらく会うことができ
ませんでした。
そんな今年の7月、彼から突然「今週、家族全員で日本に行くけど会える?」と連絡
がありました。実に8年ぶりの再会です。彼らは4歳と生後7ヵ月の2人の息子を連
てきており、我々の10歳と7歳の娘たちを合わせて8人での観光となると、そんなに大
したことはできないと思いました。旅行中の貴重な1日を私たちに割いてくれたのに、
満足にもてなせないのではないかと不安に思っていました。
しかし、それは杞憂でした。子供たちは瞬く間に意気投合したのです。娘たちはフラン
ス語どころか英語も話せませんし、彼らの長男もその日は英語を話さず、次男はまだ7
か月なので当然話しません。それでも、子供たちは笑顔で手をつなぎ、こども美術館
では協力して作品を作り、おもちゃ屋ではお互いにお気に入りのおもちゃを見せ合
ながら爆笑していました。親である私たちは、その光景を見るだけで、この再会が一生
忘れられない思い出になることを確信しました。帰宅後、次女は「私たちは言葉がわ
からなくても心でつながった」と言い、彼らの長男は「本当の親友ができた」と、この
出会いを心から喜んでいました。
おもてなしとは「お客様が心地よく過ごせるように心を込めて準備し、最大限の歓迎
の気持ちを持って応対すること」とされています。これは、高価なものを贈ったり、特別
な場所に行ったりすることではありません。心を込めて歓迎するその気持ちこそが最
大のおもてなしであり、今回それを子供たちから改めて学んだように思います。
2008年の何気ない出会いが、ここまで長く続くとは思いもしませんでした。あのとき
私の発表に質問をしてくれたG氏と、その後のパーティーで勇気を出して話しかけた
若き私に感謝します。次に会えるのはいつでしょうか。また一つ、人生の楽しみが増え
ました。
(香川大学 松下春奈)