今回はこのコラムを利用して新しい大学の姿を皆さんに紹介したいと思います。その大学
名は「ミネルバ大学」です。
ミネルバ大学は「高等教育の再創造」という壮大な構想のもと、2014年9月に開校され
ました。サンフランシスコ(米国)に本部を持ち、全寮制で特定のキャンパスを保有していな
い唯一無二の大学です。合格率はわずか1%で日本のメディアからは「世界最難関の大
学」とも称され、実際、ハーバード大学やケンブリッジ大学を辞退してミネルバ大学に入学
する学生もいるとのことです。1学年の学生数は200人前後で学生の出身地は約80か国・
地域に上ります。そして、2023年度においては6人の日本人が入学しています。
ミネルバ大学はキャンパスを保有しませんが、4年間で世界の7都市を移動します。1年目
はサンフランシスコ、2年目は ソウル(韓国)、ハイデラバード(インド)、3年目がベルリン
(ドイツ)、 ブエノスアイレス (アルゼンチン)、そして、4年目がロンドン(英国)、台北(台
湾)です。それぞれの都市において現地の企業や非営利組織(NPO)の協力のもと研究・
プロジェクトや就業体験に携わり、その国の文化も学ぶことになります。学生たちには、都市
自体が教室だと伝えられます。オンライン授業は、寮の中だけでなく町中のカフェなどで受
けることも可能です。7都市が広く世界中に分布していて、文化圏を全く異にしている都市を
含んでいることが分かります。真の異文化理解はその文化の中で実際に生活を営むことで
しか得ることができません。そのような意味からもミネルバ大学の教育には多種多様な異文
化に対する理解力を育成することも含んでいることになります。
欧米の有名私立大学の授業料はとても高額になっています。例えば、ハーバード大学の授
業料は年間約5万5千ドル(約825万円)です。日本の私立大学の授業料はこれと比べる
と高くありませんね。一方、ミネルバ大学の授業料は年間約2万ドル(約300万円)ですの
で、欧米の有名私立大の半額以下に抑えられています。キャンパスを持たないことで教室や
施設を維持する必要がなく、関連する運営コストを大幅に削減できるためで、全教育をオン
ラインで行う大学の強みとも言えます。奨学金も充実させ、発展途上国などの経済事情が
厳しい学生にも門戸を開いていて、そのことが約80か国・地域から学生が集っている理
の一つになっているのでしょう。
新しい大学像
-ミネルバ大学-
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大学の授業はすべてオンラインで行われ、1クラス19名を上限とする少数編成のセミ
ナー形式で行われます。教員の講義ではなく、学生同士のディスカッションを中心に進め
られます。この講義を成立させるためには事前予習が前提になることは言うまでもありま
せん。そして、すべての授業は録画されているため何度でも見返すことが可能で、音声が
自動筆記で即時にテキスト化されるので、講師からのフィードバックも早く確実になるな
ど、学生たちの深い学びが効率良く進められるようになっています。成績は毎回の授業ご
とに5段階で評価されるので、常に学生は、現状の自らの理解度・到達度などを把握でき
ます。
大学は、いま、「何を学ぶか」ではなく「どう学ぶか」を実現させる教育が要求されていま
す。日本の多くの大学もアクティブラーニングの比率を高め学生の主体性を高めようとし
ています。そのような中、ミネルバ大学が実現している少人数の討論型授業が「どう学ぶ
か」を実現させる教育の理想的な姿なのかもしれません。世界の7都市で学ぶことによっ
て学生に育まれる国際性も計り知れないものでしょう。「ミネルバ大学」が世界の大学の
在り方、大学教育の在り方を変革させる可能性と力を備えていることは間違いありませ
ん。
(東京都市大学 田口 亮)