みなさん、こんにちは。京都大学の井上昂治といいます。私は若手(駆け出し)のAI
研究者です。AIといえば、最近はChatGPTが話題ですね。私の専門分野は「会話ロ
ボット」ですが、ChatGPTの技術により非常に高度な会話が実現できつつあります。
私の研究では、ChatGPTではカバーできない部分に焦点をあてています。それは、会
話の「間(ま)」です。ChatGPTやLINEなどでは発言の最後に「Enter」を押して
信しますが、会話ロボットにはキーボードはありません。つまり、音声の間(ま)から判
断するしかありません。私たち人間はこれをスムーズに行うことができますが、現状の
会話ロボットにはまだまだ難しい問題です。このような会話の間をうまく制御する技術
を「ターンテイキングシステム」といいます。私は会話ロボットと心地よくスムーズに会
話をするためのターンテイキングシステムの実現に取り組んでいます。
さて、このような研究を京都大学で数年間にわたり取り組んできましたが、昨年の5
月から10月まで、北欧のスウェーデンに研究滞在するチャンスを得ることができまし
た。これは京都大学大学院情報学研究科の若手教員海外長期派遣事業によるもので
す。私はこの制度を利用して、スウェーデン王立工科大学(通称、KTH)にある会話ロ
ボットなどを扱う研究室に滞在しました。KTHはヨーロッパの有名理系大学のうちの
一つで、ヨーロッパだけでなく、世界中から多くの留学生・研究者が集います。場所は
スウェーデンのストックホルム市内の中心部からすぐの場所にあります。例えば、ノーベ
ル賞の授賞式や晩餐会が開かれる市庁舎などへも簡単に行くことができます。
KTHでは、多くの教員・学生と交流することができ、とても充実した研究生活を送るこ
とができました。また、普段日本にいると気づかないことを学ぶことも多く、刺激的な毎
日でした。今回は、研究についてはほどほどにして、それ以外の部分ついて紹介したい
と思います。
ご存じかと思いますが、北欧諸国はワークライフバランス大国です。スウェーデンもも
ちろんそうでして、私の周りの人たちは皆ワークライフバランスが充実している印象でし
た。ただし、単に「ワーク」を減らして「ライフ」を増やすのではなく、 どうすれば効率
若手AI研究者の北欧滞在記
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よく仕事を進めるこができるのかに重きが置かれていました。例えば、紙の書類での
やりとりというのはほとんどありませんでした。いろんな申請や処理をする際にはすべ
て電子的にオンラインで完結するようになっています。また、そのオンラインシステムに
ついても常に改善が進められていて、あらゆるものが使いやすかったです。ただし、私
の滞在中に家賃の支払いシステムがアップデートされたことがありましたが、その際に
以前のシステムはバッサリと停止されていました。つまり、移行期間のようなものはあ
りません。使う側(ユーザ)がそれに合わせるのが基本でした。このようなシステム構
築・アップデートはとても大変なもので、トラブルがつきものですが、ユーザのことばか
りを気にしすぎるときりがありません。そういう意味では、いろんな人たちのことを考え
た上で最適な方法なのかもしれないなと思いました。お客様第一の日本では難しいか
もしれませんね。
次に、スウェーデンでの人間関係についてです。スウェーデンでは、年齢・性別に関
係なく、お互いにファーストネームで呼び合うとてもフラットな文化が根付いています。
これは大学においても同様で、教授や学生でも関係ありません。そのため、学生らはと
ても自立しており、自分の研究を主体的に進めていました。もちろん、先生たちから「教
えてもらう」ことも大事ですが、自分自身で主体的に学ぶ姿勢は日本の私たちが学ぶ
べきことかもしれません。「自立」を表す別のエピソードを紹介したいと思います。今回
の滞在中にランチパーティに参加する機会がありました。日本だと主役の人が挨拶を
することがありますが、そのような場面はなく、しかも開始と終了にみんなが揃うことも
ありませんでした。自分が来たい(来られる)時間に来て、帰りたい(帰らないといけな
い)時間に帰る、そして主役を含むみんなで会話を楽しめたらそれでOK、というとても
リラックスした「緩い」雰囲気でした。日本では周りに合わせてしまうことが多く、「もて
なし」に対する考え方もやはり違いますね。
ほかにもスウェーデンでは驚いたことや勉強になったことが多くありましたが、スペー
スの関係でここまでにさせていただきます。海外での長期滞在には、言語も含めて慣
れないこともありますが、日本との違いを楽しみそして学ぶことができます。皆さんも海
外留学のチャンスがあればぜひトライしてみてください。ちなみに、私は高校生のとき
から「海外留学してみたい」と思っていましたが、なかなか実現しませんでした。それで
も、(英語を含む)勉強や研究に一生懸命取り組み続けることで、約10年後に今回の
滞在が実現し、そして充実した時間を過ごすことができました。皆さんもぜひ目の前の
勉強に一生懸命取り組み、少し先の未来につなげてもらえればと思います
(京都大学 井上昂治)