エコノミストから見た
君たち理系のキャリアパス
私はエコノミストで、企業の資金調達や資本市場について研究をしています。以前に、
この電子情報通信学会のLINEにも載っていますが編集注、GoogleとかFacebookと
か、い のGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、
Microsoft)についても調査・研究も行っていました。そうした経験をベースに、学生の皆
様にアドバイスできたらと思います。
まず小さいときの話をさせてください。わたしにの実家は焼肉屋を営んでおり、家族み
んなで家業を通して経済・金融に慣れ親しんできました。例えば、小さいときは母親から
「あなたの学費はホルモン何人前からできてると思う?」と質問されます。幼い私は「うー
。10人前ぐらい」と答えると母親は「それは売上高の金額だよね。売上のお金全て
が自由に使えるお金になるわけではないの。売上から、従業員の方への給料、お肉の仕
入れ代光熱費、税金を引いたお金が自由に使えるお金。そして、お肉の仕入れ代は為
替の影響も受けるから、今は円安で大変よー」なんて答えるのです。最初は何を言ってい
るかわからないものの、成長と共に企業経営や経済に関心を持つようになりました。つま
り、幼い頃から経済・金融に関心を抱きやすい環境だったのです。
こうした幼少期の影響もあってか、今は一橋大学の博士課程で博士号を目指すと同時
に、テレビやラジオにも出て、経済の解説や、企業の取締役やコンサルタントとして経営の
アドバイスをしています。
※本記事の著作権は著者に帰属します。
真淑
経済学者,経済コメンテータ崔真淑さんによる,理系も知らなくてはいけない今のグローバル経済学
(崔 真淑さん,山中直明先生著)
エコノミスト
(編集注)2023年9月9日にジュアLINEで紹介した、電子報通誌2020年9月号掲載の「経済者,
経済コメンテータ崔真淑さんによる,理系も知らなくてはいけない今のグローバル経済学」のこと。崔さんが大学で
行った講演をもとに記事にしています。読んでみたい方は、下記をクリック!
経済ってとっても面白くて、一番の基本は、需要と供給です。本当にざっくり言えば、需要が
大きくなると、価格が上がり、小さくなると価格が下がります。日本は、長い間価格が下がり続
けているデフレの状況だったということは、みんなも知っていますよね? でも、この頃は、スー
パーで売っているもの、例えばポテトチップスがどんどん値上がりしています。その理由は、ウ
クライナとロシアの問題でエネルギーの高騰が大きいです。
エネルギーの高騰と、ポテトチップスの値段も、輸送費や揚げるときの油の値段、包装の袋
の値段として影響します。このまま、お給料が上がらないまま、インフレになるのは、ちょっと危
険で、どんどん物が買いづらくなり、家庭内で使えるお金が減り続けてしまいます。そこで、皆
様のお父さん、お母さんの賃金を上げようと、政府や経団連、経営者が協力して、物価上昇に
見合う給与の上昇を狙っています。
日本経済の過去
給与が上がりやすい傾向になるのは、社会全体に活力が出ていいのですが、いい塩梅での
ペースで上がることが重要です。けど実際は、そう簡単にはいきません。1980-90年にあっ
た、バブル経済では、賃金が上がるだけではなく、物価も上がる、土地の値段や株の値段が
上がり続けました。当時のみんなの心には、もっと給与は上がるし、景気もどんどん良くなるだ
ろう、じゃあ先回りして株や不動産(資産)を買えば、もっと儲かるぞ!という期待感が出てき
て、それほど需要がないにも関わらず住宅や不動産価格が上昇、連動して株価も急騰してい
きました。そして、高級なものが飛ぶように売れて経済が活況を呈して、いつしかバブルと呼
ばれる景気が加熱する動きになりました。2000年代までの日本企業は、いまのGAFAMを
凌ぐぐらい世界的に影響力を持っていたのです。今では考えられないですが、ジャパンアズナ
ンバーワンという言葉があるぐらい、世界から日本は羨望の眼差しで見られていました。なの
で、世界の経済学分野の研究者は、こぞって日本について研究していた時代でもありました。
しかし、そんな時代は長くは続きませんでした。結果的には、それほど不動産需要がないこと
にみんなが気付き、不動産価格や住宅価格、株価は急落しました。よく言われるバブル崩壊
です。それが日本経済の長期低迷に繋がったと言われています。
政府と日銀の役割
もちろんそうならないために、政府や日本銀行が24時間体制で経済・社会を注意深く見て
いるのですが、日本政府や日銀だけで日本国民の期待を動かすのは年々ハードルが高く
なっています。理由は世界経済がより繋がるようになって、日本国内の取組以上に、海外経済
の影響が私たちの期待に強く影響するようになっているからです。日本経済を強くするには、
実は政府による外交の力も重要になってきているのです。そのほかの日本経済の重石といえ
ば、少子高齢化や老後への不安、年金不足です。こうした不安を払拭して日本経済を元気に
するには、みなさんの知恵とイノベーションを起こそうとする若い力が必要なのです!
皆様が好きなことを見つけて、その分野で研究やビジネスをすることは、自分自身の充実
だけでなく、社会全ての人にとっての恩恵につながります。ぜひ、大好きなこと、やりたいこ
とを見つけて励んでください。時間は有限です。
(もちろん、わたしも皆様にお願いするだけではなく、皆様の社会がよくなるよう研究活動を頑張り
中です)
今後のキャリアにおけるロールモデル
皆様は理系ですよね? 昔の人は大企業で生涯雇用されるのがロールモデルでした。昔
は、大学を出ると、大きな企業に勤めて、サラリーマンになる。年齢で給与は上がり、さら
に、課長、部長と出世します。定年まで勤めると退職金をもらってというロールモデルが確
立していました。これからは違います。「JOB型」って知っていますか? ある仕事をする専
門職で、年収は1億円もざらです。でも短期で次々と仕事をこなします。今まであった、朝
8:00~夕方5:00の事務職のような仕事は、ロボットやAIにすごい勢いで置き換えられ
ています。やはり、これからのひとには、クリエーティブで高度な仕事を期待されています。
この「JOB型エリート」はハイリスク/ハイリターンです常に能力を磨き、時代に抵抗しなけ
れば、仕事はありません。いまは、データサイエンス、次は量子技術、いや、バイオサイエン
スかもしれません。
もう一つのロールモデルは、起業(ベンチャ)です。アメリカでは、一流大学の理工系の学
生は、その7割が企業を目指すという報告もあります。日本でも、一人もしくは仲間と起業
する人はどんどん増えて、イーロンマスク(テスラ、ツイッター)、孫さん(ソフトバンク)みた
いな人がどんどん増えます。起業は、一人でする人もいれば、まず友達と行う人、千差万別
です。会社のやる仕事は、サービスでもソフトウエアでも、ロボットでもこれからはいろんな
分野でやっていないことにチャレンジすることが必要だと思います。有望な会社には、ベン
チャーキャピタル(VC)が投資をしてくれます。もちろん、友達と会社を作るにも、全くお金
がないと、ロボットのプロトタイプ(PoC : Proof of Concept)を作ろうにもどうするこ
ともできません。本当の起業初期は、自分達でお金を作ることも必要になります。そして、企
業が大きくなってきたら、VCからお金を集めることもでてきます。
その際には、株式を発行します。株式の値段は、その企業の価値で決まります。いろいろ
な要素がありますが、ニーズがあるか? マーケットはどこか(誰に売るのか)? 競合の状
況はどうか? この会社に独自の技術があるか?発展性(サイズ)はどのぐらいか? 何を
目指すか? とかになります。何を目指すかとは、もちろん、そのまま大きい会社になる。とい
うのだけではなく、今ある大きな会社に買収されるというのもあります。そのあたりを見て、
VCはお金を投資してくれます。この場合の投資は、投資、負債によるお金でなく、株式によ
る資金調達になることが多いので、これは借りているのではなく、返さなくてもいいお金で
す。株式による資金調達は、儲かったときにVCや投資家にリターンを返せばいいのです。
でも、怖い側面もあります。株式を握られるというのは、自分の会社の意思決定の力を他
人にあげるということです。起業ほやほやのビジネスパーソンが、経営の苦しさのあまりに
株式の51%を差し出してしまい、儲かる頃には自分にはお金は全然入ってこなくなってい
た、なんてのはよくある話です。いつか起業を考えている人は、今からでも株式による資金
調達のメリットデメリットを意識しておくと良いでしょう。
さて、皆様が、起業家になるなら、何を身につけたらいいかについて、わたしの拙い経験
(私も実は自分の会社を経営しています)と起業家研究からアドバイスさせて下さい。
勝負は20~30歳です。大きなターニングポイントがあります。ジュニア会員の人たちも、
結構近い将来が勝負ポイントです。いま、がんばる短期的な分野は、医学、製薬からデータ
サイエンス、AIにシフトしていきます。まさに、この電子情報通信学会の領域です。もちろ
ん、他の分野がないのではなく、この辺の分野が伸びしろが大きく、チャンスが広がって
ます。人間として、起業への適用力を上げるには、理系の企業にはしっかりした技術を1、2
個持つ。誰にもこの分野ならば負けない知識と技術はあるととても有利です。いくつかの
テック系と呼ばれるベンチャの企業者はその領域での世界的な有名人物だったりします。
このごろは、米国のテック系ベンチャのCTO(最高技術責任者)はPhD(博士)取得者が
非常に多いです。つまり技術は必要条件とも言えますね! 次に広い知識、さらにチーム
ワークや、強い意志でビジョンを持つ必要があります。
広い知識とは、T型人間とかリベラルアーツとか、STEAMとかいう言葉です。日本史、世
界史も本当に必要な教養ですよ! つまり、今、引き出しをたくさんたくさん作るときなんで
す。この、広い知識をどう使うのかを解説します。先ほど、ベンチャキャピタルが、どのよう
視点で投資しているか? というのを見てみてください。投資というつもりではなく、どのよ
うな技術が必要なのかという判断とも言えます。ニーズ、マーケット。つまり、だれに、どこ
に、どのように売りに行くのか? どのぐらいのマーケットなのか? これは、普段の理系の
知識ではありません。たとえば、電気自動車を作るとします。これからの時代だから、電気
自動車のマーケットは、CO2つまりカーボンニュートラルとして必須です。どんどん伸びると
思います。その中の重要部品のモータを作ることにします。モータには、高性能な磁石が必
要で、それを実現するのがレアメタルですというのも知っていると思います。レアメタルのい
くつかは、70%が中国産であったりします。ここで、地政学という考えが出ます。つまり、こ
れから、中国からの輸入は、政治に利用されて日本へは輸出しない! となることもありま
す。だからダメともいえるし、レアメタル代替品を作る研究ならば、今のことを説明されたら
VCは出資すると思います。あとは、この代替品は、どう優れているか? 格はどうだ?
産はどうだ? と説明をしていくことになります。VCという言葉を使いましたが、重要技術で
研究の大きな対象になります。自分が研究する技術をこのように、マーケット(電気自動車
の必要性)、支える重要技術、供給元(中国)、政治的な状況やシェア、という点への見識
のある技術者は、大変に重要だとわかったと思います。何も考えないと、人がやっているか
らやろう! では勝てません。そして最後に、先程書いたお金や経済についての知識です
理科系の技術と、それを大きくするための経済・金融の知識が必要になってきます。
最後に
話が変わりますが、私、この前子どもが生まれました。そこで、いろいろな事に気づきまし
た。当たり前ですが、人間は一人の力では生きていけません。お父さん、お母さんなど、家
族に助けられて育ちます。それだけではなく、兄弟、さらには、学校、先生、友達…他人と繋
がること、つまりネットワークやコミュニケーションに支えられて私たちが生かされているの
です。いまみんながいる、電子情報通信学会もコミュニティというのですが、そんなつなが
りを持っている団体です。私をこのLINEに誘ってくれた、山中先生はもう40年も会員だそ
うで、みんなのお友達にはいない、お
じいさんかもしれませんが、とても物知
りのお友達ができたみたいなもんです
よね? いろいろな活動に出て、ちょっ
と質問したり、お話をしたら、とても素
敵だと思います。SNSやネットを調べ
ても、ネットワークはできませんが、ネッ
トワークとコミュニケーションは、人類
の生物としての成長の過程そのもので
す!
電子情報通信学会のジュニア会員のみなさん、今をこの一瞬を大切にしてください。
真淑さんとご家族
~山中先生からのプレゼント~
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感想送り先メールアドレス:yamanaka@keio.jp
締切り:2023年12月末日
♬感想お待ちしてます♬