ジャズピアニスト × 数学者 × STEAM教育家
中島さち子さんに学ぶ
数学とジャズの深い関係
みなさん、こんにちは。今回のコラムを担当するのは慶應義塾大学の山中直明です。
回は世界数学オリンピックで優勝した経歴を持つジャズピアニストの中島さち子さんを、
本人の許可をとって紹介します。
中島さんはジャズピアニストとして活動していますが、同時に数学者でもあり、STEAM
(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術・リ
ルアーツMathematics数学教育家でもありますこのコラムを読むと一見繋
がりが無さそうなこの3つの職業は、意外とつながりがあることがわかります
STEAM教育って知っていますか? 科学(S)は、植物、動物、人体、何でも含まれてい
るのですが、子どもの頃に様々なことに興味を持って、年齢によらず研究者のように考え
られると素敵です技術(Tどんどん発展するIT技術の中でコンプレックスを持っ
てはもったいない。今は、いろいろな発想やアイデアを道具やプログラミング等を通じて
形にしていくことができる。アイデアを口で言うだけでなく、実際の物と結びつける力みた
いなものです。つまりTはあなたの発想力を豊かにしてくれます。工学(E)は、モノづくり
の力でもありSTを実現する力かもしれません産業にするとまでは考えなくても、社
会に役立てる実現力を育むのがEです芸術A新しくSTEAMに入ってきた重
要な分野です。ちょっとこの頃の人気アニメを考えてみましょう。映画やアニメは、極めて
高度なコンピュータビジョンの技術を使います。また、産業としてビジネスとして広めるに
、ディズニーのようにビジネスや工学的な努力も必要ですジブリを見ると、やはり
アートです。綺麗なだけではなく、心に染み込んでくるような絵だと思いませんか これ
のArtで。STEAMでツ(Liberal Arts)ものAに
と書いてあります。リベラルアーツは、人文科学、社会科学、自然科学などと書いてありま
。「これじゃ全部じゃないの?」と皆に言われそうですけど、みなさんが理系として活躍
する上でも本当に重要なものです最後は数学M)です。数学がなぜ、重要かはみな
さんもわかりますよね?
※本記事の著作権は著者に帰属します。
中島さんの子どもの頃は、とにかく同じこと
をしているのが好きな子だったそうです。川に
行ったときは川面を見たまま2時間も動かなく
なるような。(水面って変化するのを見ている
だけでも飽きないですよね?)4歳でピアノを
習い始め、先生に言われた練習曲をやるより
も、自分で曲を作って弾いたり、即興で遊ぶこ
とが好きで、小学校低学年の頃は 「台風の
音」を弾いたり、「子犬」という子犬が遊ぶ様
子を表した曲を作ったりしていたそうです。
(つまり、身近な日常にあるものをピアノで表
現していたのですね。)これは中島さんにとってすっごく楽しかったみたいですよ!
数学者の入口は、中学生になった時だったそうです。大人向けの数学雑誌を買って、編集部
が出す問題に解答を送ったりしていたところ、中学3年生の時に、問題を作成していた数学者
で大道芸人のピーター・フランクルさんから電話がかかってきて事務所に行きました。(大人
でも極めて難しい問題を中学生の女の子が解いているのを見て、声をかけたそうです。)
そして高校2年生と3年生の時に国際数学オリンピック(各国の数学オリンピックで選出さ
れた後、世界で開催される最難関の国際科学オリンピックの一つ)に出て、2年の時にインド
大会で金メダル、3年の時にアルゼンチン大会で銀メダルを獲得しました。当時メダルをも
らった喜びはもちろんあったけれど、数学オリンピックという場で、数学好きが集まり、自分と
同じような感覚で数学を楽しむ仲間に会うことができ、喜びを分かち合えたのは大きなこと
だったそうです。
大学に入ると、数学自体は面白いけど、まわりが男の子ばかりになり少し違和感を感じてい
た頃、(理数系ってほんとに女性が少ないんですよね。)たまたま入ったジャズのサークルで、
ジャズの面白さにはまったそうです。子どもの頃に自由に遊んでいたピアノの時と同じで、さ
らにジャズは「その場でみんなで
一期一会の音楽を作る」という要
素が多く、その楽しみにはまった
ようです。ジャズは、音を重ね合
わせて音楽を作り上げ、そこに正
解はありません。中島さんはもと
もと小説や哲学といった、はっき
りとした答えや正解がないものを
考えることが好きだったので、即
興で演奏するジャズはすごく合っ
たそうです。
<数学オリンピックでの優勝>
<3歳の時の中島さん>
さて、数学とジャズの共通点はわかりましたか?
中島さんはこう言っています。
数学も音楽も、論理と感性が行ったり来たりする。自分で問いを立てて、
答えを求め続けるという、終わりのない所にひかれます。実は正解が一つ
ではない、またはなかなか終わりが見えない山谷にこそ、醍醐味がある。
この3つの職業「音楽・数学・教育」に何が関係しているか、というと、それは「夢中に
なることを深堀りする」ことです。これは学校でいい点を取るための勉強ではありませ
ん。これは大切なポイントです。仕事も勉強も「楽しい」「夢中になる」ものであって、いい
点を取ることはなんの目的でもありません。自分の好きなことや、興味関心のあるものか
らプロジェクトを企画する。シミュレーションしてアイデアを実用化してみる。うまくいかな
くても、それは失敗ではなく、それに向かって進んでいることがとても大事であり、心躍る
探究です。自分で手を動かしてやってみるという試行錯誤の過程こそが学びになります。
電子情報通信学会は、ロボット、AI、コンピュータ、画像、通信などいろんな分野があっ
て、何か夢中になれそうなものがあると思います。皆さんぜひ、いろんなことにチャレンジ
していってください。
(慶應義塾大学 山中直明)
ジャズピアニストとしての中島さん>