中学生のジュニア会員が
電子情報通信学会総合大会で
研究発表しちゃいました
ジュニア会員の皆さん、こんにちは。今回のコラムを担当する電力中央研究所の池田で
す。電子情報通信学会では、ジュニア会員が大会で発表することができます。さらに、ジュ
ニア会員は参加費無料なのです!
私は、2022年の夏に中学生の子どもたちと一緒に通信の実験を行いました。そして、そ
の成果を2023年3月の電子情報通信学会総合大会の一般セッションで中学生のジュニ
ア会員に口頭発表して頂きました。今回のコラムでは、その裏側をご紹介します。ジュニア
会員のみなさんに、研究をすることやその成果を発表することを身近に考えてもらえたら嬉
しいです。また、研究者や先生方にはジュニア会員の学生さんを巻き込んで研究を進めて
みるという選択肢に思いを巡らせて頂ければ幸いです。
電子情報通信学会は、ジュニア会員のみなさんの参加を応援しています。
今回紹介するのは以下の発表です。
電子情報通信学会総合大会、基礎境界ソサイエティ、一般セッション、A-16-4
(2023年3月9日)
「横須賀市久里浜港-フェリー間におけるLPWA海上通信特性評価」
著者:和瀬田悠太(公郷中学校),池田晴彦・沼井 健・小野陽海(不入斗中学校),
加川敏規・池田研介(電中研)
口頭発表は、池田晴彦さんと和瀬田悠太さんの2名が分担して会場で実施し、質疑応答
も本人たちが対応しました。発表内容は、港に設置した陸上の無線機とフェリーに設置し
た海上の無線機間で通信を行い、届いた電波の強さの変化等を測定し、結果を考察した
ものです。LPWA(Low Power Wide Area)とは、低出力、長距離通信、低速度が特徴
のセンシングなどでの利用が期待されている無線通信技術です。
この研究は、横須賀市が主催する「横須賀海洋クラブ」という取り組みに電力中央研究
の研究者が協力して行ったものです。横須賀海洋クラブは、海について調べたり、海に
関わる仕事の体験をしたりして、小さな"海のスペシャリスト"を目指すことができる体験型
プログラムです。横須賀市内在住・在学の子どもたちの「知りたい気持ち」に応えるため、
地元の企業や団体が、講師として協力しています。
講師の依頼を受けた私たちは、どうせやるなら本気でやって,成果が出たら子どもたちと
一緒に学会発表してみたいと企画段階から考えていました。実際の活動では,参加した4
名の中学生たちと意見を出し合い、「海上で無線通信を使うことができたら、海での事故
防止、救難、海の環境モニタリング、洋上発電の監視、漁業などに役に立つ」と研究を行う
的を整理し、低出力・長距離通信・低速度が特徴の無線通信(LPWA)を使い、陸
海上間での電波強度の変化などを測定することにしました。
Copyright © 2023 The InsƟtute of Electronics, InformaƟon and CommunicaƟon Engineers
られた期間の中で,電波についての勉強や運動場での測定練習を行い、最終的に
は、神奈川県・久里浜港と千葉県・金谷港(約11Km)を結ぶ東京湾フェリーの協力を得
て、フェリー(しらはま丸、総トン数:3,351トン、全長:79.1 m)の船首と船尾に無線機
を設置し、港の無線機との通信の電波強度等を収集しました。東京湾上での電波の伝わ
り方に関する貴重な実測データを得ることができました。
参加した中学生のみなさんからは、「海上の約11kmの航路上で陸上と連続的に直接
通信が可能であることが分かった。」「20mWの電波で長距離の通信ができて驚いた。」
「潮の満ち引きや、周りの船の影響なども明らかにしたい。」「金谷港で食べたアジフライ
がとてもおいしかった。」などの多様なコメントを頂きました。さらに、「研究者という仕事
を身近に感じることができ、研究者という仕事に興味がわいた。」という嬉しい感想も頂き
感激しました。
総合大会の発表は平日であったので、教育委員会に相談をし、公欠(学校の欠席にな
らない)扱いにして頂き、2名の生徒に参加頂くことができました。
学会の発表は大学や企業などの発表が中心なので、中学生の発表は、例えて言うと、
多摩川にアザラシが来るくらい珍しい出来事で、以下のニュースリリースやタウン誌にも
取り上げて頂きました。
横須賀海洋クラブ会員の中学生が電子情報通信学会総合大会に参加し発表を行いました
(横須賀市ニュースリリース(2023年3月10日))
海上航路で無線通信実験 「海洋クラブ」が成果発表」(タウンニュース横須賀版2023年3月
24日号)
私にとっては、専門家が子どもたちの目線になり一緒に考えるという経験は、刺激的で
楽しいものでした。技術を使って本気になって一緒に遊びながら、サイエンスコミュニケー
ションの実践方法を考える学びの多い夏になりました。
ジュニア会員の皆さん、学会は技術や知識を社会に活かそうと専門家が真剣に情報
交換や議論をしている場です。聞いたこともない専門分野がたくさんあり専門家がいろん
なことを考えてくれている世界を覗くだけでも、未来を面白く感じられるようになると思い
ます。また、子どもたちが興味を持ってくれると、やっている大人たちは嬉しくなり、やる気
が出るものです。実際の発表が行われている、総合大会やソサイエティ大会などに興味
があれば、近くの大人たちに「行ってみたい」とか「研究に関わってみたい」と相談してみ
てはいかがでしょう
(電力中央研究所 池田研介)