IEICE ICT Pioneers シリーズ(オンデマンド無料配信)

 電子情報通信学会がカバーしている ICTに関する様々な技術分野の中から、根幹となるテーマをひとつひとつ選び、それぞれの現在、過去、そして未来について第一人者の方からお話しいただいています。
2023年
No 開催月 講演内容 講演者(所属)
1 2023年1月

次世代を担う学生・若手研究者へのメッセージ

【講演内容】
情報通信の夢とそれによって実現される豊かな未来社会に向けて果敢に挑戦し、革新的技術及びイノベーションを継続的に創出することが求められている。次世代を担う学生・若手研究者へのメッセージとして、大学での36年間の教員生活を振り返りつつ、教育研究活動の楽しさについてお話させていただく。

笹瀬 巌
笹瀬 巌(慶應義塾大学名誉教授)
2022年
No 開催月 講演内容 講演者(所属)
1 2022年1月

脳に学ぶ視覚情報処理

【講演内容】
高いパターン認識能力を学習によって獲得することができる手法として、深層学習(deep learning)やdeep CNN(深層畳み込み神経回路)が最近注目を集めている。福島が1979年に発表しネオコグニトロンは、そのようなdeep CNNの源流と言われており、文字認識をはじめとする視覚パターン認識に高い能力を発揮する。ネオコグニトロンの歴史は古いが、現在に至るまで種々の改良が加えられ発展を続けている。そこで、脳の神経生理学的研究をヒントにネオコグニトロンの着想に至った経緯や、現在広く用いられているdeep CNNとの相違点に重点を置きながら、最近のネオコグニトロンを紹介する。

福島 邦彦
福島 邦彦(ファジィシステム研究所 特別研究員)
2 2022年2月

ポストコロナとVR

【講演内容】
コロナ禍は、われわれの社会を大きく変えることになるだろうし、技術もまた例外ではない。とりわけサイバー系の技術は今後の社会のあり方と関係が深く、大きな進化淘汰圧が加わるものと予想される。  本講演では、コロナを経て大きくその姿を変えつつあるVR技術について、最近の状況を紹介する。とくにオーバーブラウザ型VRや、ノーモーションVRなどの新しいVR技術の動向について述べるとともに、再び勃興しつつあるメタバースやデジタルツインなど、基盤化するVR技術の今についても触れたいと思う。

廣瀬 通孝
廣瀬 通孝(東京大学名誉教授)
3 2022年3月

長距離光海底ケーブル通信システムの研究開発:背景、経緯、現状、将来に向けて

【講演内容】
光海底ケーブル通信システムは特異な技術分野である。一般に1,000km~10,000kmと長距離である。陸上と環境が大きく異なるためケーブルや中継器の設計・製造と敷設に高度な技術が要求される。修理の困難性から非常に高い信頼性が要求される。また、もう一つ重要な側面は技術革新を絶え間なく求めたニーズの変遷である。本講演では、筆者が関わった太平洋横断ケーブルの研究開発に焦点を当てて、その背景や経緯について示した後、GAFAが主役になりつつあるケーブルの現状や将来について述べたい。

秋葉 重幸
秋葉 重幸(元株式会社KDDI研究所 代表取締役所長)
4 2022年4月

移動通信とともに歩んだ研究生活を振り返りつつICTのこれからを考える

【講演内容】
40有余年にわたる研究生活は電子情報通信技術が大きく発展した時期と軌を一にしており、まさに研究者冥利に尽きる。よもやま話を交えつつ1980年代以降の情報通信技術の革命的ともいえる発展の歴史や世相を振り返り、電子情報通信技術ならびに技術者のこれからについて考えてみたい。例え僅かであれ、若い研究者の皆さんがこれから研究生活を続ける上でのヒントになることを願いつつ、、、

吉田 進
吉田 進(京都大学名誉教授)
5 2022年5月

企業での研究開発を経験して―ディジタル信号処理からネットワークビジョンまで―

【講演内容】
私は1975年から長い期間を企業の研究所で過ごし、その間様々な分野・テーマを担務し貴重な経験をさせて頂きました。このような経験から、今回頂きました機会では、特定技術の歴史的な流れを紹介するのではなく、この間取り組んできた様々な研究についての概要および当時の思いを紹介しつつ、企業での研究生活の一端を紹介できればと思っています。また現状からから当時の活動を顧みてみたいと思います。ただ、日本の企業を取り巻く環境も当時とは大きく変化しており、研究活動も様相を異にしているため直接お役に立つ話ではないかと思いますが、何かのヒントにでもなればと思います。
簡単に経験を紹介します。基本的には通信分野の研究開発に関連した活動ですが、大きく分類するとディジタル信号処理とDSP LSI開発、ディジタル伝送方式と関連LSI開発、動画像符号化、および最終的にはネットワークビジョンへの取り組みといえます。大学院卒業後研究所に入所すると同時に、ディジタルMODEM開発プロジェクト開発に従事し、当時核となるディジタル信号処理プロセッサ(DSP)というもの自体がなかったため独自のDSP LSIの研究開発の取り組みに従事しました。その後3世代にわたるDSP LSI開発に携わり、最後は汎用プロセッサの研究開発につながっています。次に、加入者までディジタル通信を可能にするISDN加入者伝送方式および伝送用LSIの研究開発に従事しました。また伝送技術については、光通信用3R中継器LSIはじめ光通信の研究開発にも従事しています。その後無線通信やネットワークについてもマネジャーとして関与しています。通信サービスとしては、草創期の動画像符号化の研究にも取り組んでいます。ISDN、BISDNおよび動画像符号化については、企業として重要な側面である標準化活動にも参加しました。
次第にマネージメントの役割が増え、担務として見る範囲が増えてきたある時に会社の将来の姿の在り方についての課題を受け、システムの将来ビジョンまとめに取り組みました。これをきっかけに、その後ネットワークシステムビジョンへの取り組みを行い、現役をはなれた現在も一部取り組みを続けています。
今回は、このような研究取り組みの流れを紹介したうえで、DSP、動画像符号化、およびネットワークシステムビジョンへの取り組みについて、お手本がない課題に、あるいは草創期の課題にどのように取り組んだか、また合わせて当時どんな事を考え議論していたかを紹介し、現在の状況と照らし合わせながら紹介したいと思います。

津田 俊隆
津田 俊隆(早稲田大学GITI・顧問)
6 2022年6月

集積回路開発40年の歩み―ADC、アナ・デジ混載SoC、ミリ波CMOS技術を中心として―

【講演内容】
今日、半導体(集積回路)は電子機器のみならず自動車を含む全ての機器の最重要部品として国家の安全をも左右するものと認識され始めています。
集積回路は回路自体はボード上の回路とあまり変わりませんが、集積回路になって初めて機器の性能と信頼性を上げるとともにコストと消費電力を下げることができるため、機器の普及と産業の発展には欠かせません。しかしながらデジタル回路はスケーリング則により微細化と高集積化により性能を上げながらコストと消費電力を下げることができますが、私が開発を担当したデジタル映像機器やデジタル無線通信機器に必要なアナログ・デジタル混載集積回路では、A/D変換器(ADC)などでアナログ信号をデジタル信号間に変換するためにアナログ技術が必要ですが、デジタル回路とは異なりデバイスと回路性能の関係や、微細化と性能・消費電力の関係が不明確なため、特別な集積回路設計技術開発を必要としました。幾つものブレークスルーが必要とされたのです。
ところで現在では静止画や動画を普通にやり取りできるようになりました。このためにはビデオ用ADCが必要ですが、私が集積回路開発を始めた1979年には集積化されたビデオ用ADCは存在しなかったため、当時の私の使命はTV・VTRのデジタル化に必要な集積化されたADCを世界に先駆けて開発することであり、いくつもの世界初あるいは世界トップのADCを開発しました。この開発は、HDTV、デジタルポータブル映像機器、DVDなどのデジタル映像機器が誕生と発展に大いに寄与しました。またローパワー技術の開発により機器の小型化や省エネ化が進みポータブル機器、ウエアラブル機器、インプランタブル機器が発展しました。更にミリ波CMOSトランシーバの開発は従来利用できなかったミリ波通信の5Gシステムでの実用化に寄与しました。
今回の講演においては2022年IEEE Donald O. Pederson Award in Solid-State Circuitsの受賞理由である以下の4つの開発テーマについて、電子機器の発展、デバイスの発展、デバイスの課題とそれを克服する回路技術やシステム技術、半導体ビジネスのポイント、人材育成などについて40年以上に及ぶ講演者の開発体験をもとに論じようと思います。

1.デジタルTV・ビデオシステム実現のためのバイポーラADCの開発
2.超低電力CMOS ADCの開発とローパワーエレクトロニクスの振興
3.低電力超高速ADCの開発とアナログ・デジタル混載システムLSIの開発
4.ミリ波CMOSトランシーバの開発

松澤 昭
松澤 昭(株式会社テックイデア 代表取締役)
7 2022年7月

Beyond 5Gへの挑戦~分散OSの黎明期からSociety5.0を俯瞰して

【講演内容】
分散OSの黎明期から、分散リアルタイムシステム、ユビキタスコンピューティングシステム、IoT、CPS、スマートシティなどコンピューティングとコミュニケーションの融合に関して、長年に渡って研究開発に携わってきた経験から、2030年頃の社会インフラとして期待されているBeyond 5G/6Gの課題やあるべき姿について議論する。

徳田 英幸
徳田 英幸(国立研究開発法人 情報通信研究機構 理事長)
8 2022年8月

デジタル時代のサイバーセキュリティ

【講演内容】
近年の様々な技術革新とその実用化、社会実装による情報と情報通信システムのデジタル化は人類社会の在り方を一変させる社会基盤となりつつあります。この変化は、あらゆる社会活動、個人生活に浸透し、コミュニケーションやビジネス、生産活動の生産性向上、多様な社会福祉の実現といった人類社会の向上に大きく寄与しています。一方で、この社会基盤が広く普及するに従って、意図的或いは意図せずに我々の社会活動に大きな弊害とリスクをもたらしうることにもなってきています。
サイバーセキュリティはデジタル化された社会システムのリスクマネジメントです。リスクマネジメントは、この社会システムが将来にわたって期待通りには動かなくなることを防止することです。しかし、現代のデジタル社会システムは様々な立場の人々、組織、国家が参加し、利用目的も様々な複雑で創発的なシステムになっています。立場と見方、目的によってリスクとその予測は異なります。対策も、主観的なものになってしまいます。このような複雑で困難な状況を少しでも改善するには、サイバーセキュリティリスクに対する幅広い状況認識を共有することが基本になると思います。今回の講演では、現在のサイバーセキュリティの状況をグローバルな観点で、微力ですがお伝えできることを目的としています。これからの電子情報通信技術の研究開発とその実用化、社会実装において、サイバーセキュリティを考えることは必須です。聴講頂ける皆さんの今後の活動のお役に少しでも立てればと考えています。

三宅 功
三宅 功(NTTデータ先端技術株式会社 フェロー)
9 2022年9月

音声通信の歴史と未来―音声音響符号化技術の視点から―

【講演内容】
情報革命を身近に実感できる音声通信の発展について、それを支える要素技術のひとつである音声音響符号化技術の側面から紹介する。音声通信は固定電話、移動電話を経て、多地点、高臨場などの多様な機能をソフトウェアで実現する形態への過渡期にある。次世代の音声通信をめざして現在策定中の3GPPでの標準化を紹介し、安定した音声品質を維持しながら使う人にとって快適で自由度の高い音声通信の将来像を模索したい。

守谷 健弘
守谷 健弘(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 NTTフェロー)
10 2022年10月

浮草研究者と人工知能研究

【講演内容】
大学院を出てより、ボストン(3年)、筑波(5年)、ピッツバーグ(11年)、東京(18年)、北京(2年)、シアトル(5年)と浮草人生を送ってきた。この間、その地での研究機関に職を得て、人工知能の1分野である、コンピュータに目をとりつけ外界を認識させるコンピュータビジョンと呼ばれる分野で、禄を食んできた。ミンスキーやニューエルなど分野の原点と呼ばれるダートマス会議参加者とも直接話をする機会を得た。この経験から見た、人工知能研究の流れと当方の研究のからみ、並びにそこで得たつたない経験を話す。

池内 克史
池内 克史(米国マイクロソフト)
11 2022年11月

複雑系数理モデル学とICT

【講演内容】
本講演では、複雑系数理モデル学とICTに関して、いくつかの話題をお話する。まずはじめに、複雑系数理モデル学の歴史的経緯とその理論的プラットホームである複雑系制御理論、複雑ネットワーク理論、非線形データ解析理論の概略 をお話する。次に、複雑系数理モデル学の応用例として、未病の数理研究やニューロインテリジェンスと次世代人工知能などに関して、具体例を交えてご紹介する。最後に複雑系数理モデル学の未来について展望する。

合原 一幸
合原 一幸(東京大学特別教授)
12 2022年12月

心を持った機械

【講演内容】
機械が心を持ち得るか、あるいは人間は機械であるか、という問いは多分に哲学的に聞こえますが、あらゆる意味で人に馴染む機械をつくるという実用上の課題から見ても大いに興味を惹かれるものです。心を持つ機械の向こうには、人間と機械の新しい関係が見えます。さらには、生物学とは異なった道筋で、「生き物を創る」「人間を創る」という野心が見えます。ここ数年「機械システムの意識」に取り組む研究も現れてきました。神経細胞単体の数式モデルから始まって、既成概念を破壊するような最近のAIの登場までをリアルタイムで体験した者として、科学技術と人間の未来を「心を持った機械」を梃子に押し開けないかと思います。もとより浅学で思いだけの夢想なのですが、皆様のより深い思索のきっかけになれば幸いです。

橋本 周司
橋本 周司(早稲田大学名誉教授)
2021年
No 開催月 講演内容 講演者(所属)
1 2021年1月

スーパーコンピュータ「富岳」の開発とコデザイン

【講演内容】
スーパーコンピュータ「富岳」は、独自開発の国産メニーコアプロセッサA64FX15万チップを結合した大規模な並列コンピュータであり、2020年には様々なスパコンのベンチマーク・ランキングで世界1位となった。2014年から7年間で「富岳」を開発したフラグシップ2020プロジェクトにおいては、理化学研究所と富士通が、計算科学のアプリケーションとのコデザインを行ってシステム開発を進めてきた。「富岳」の概要とともに、そのコデザインについて概説する。

佐藤 三久
佐藤 三久(理化学研究所計算科学研究センター・副センター長)
2 2021年2月

情報の時代を勝手に俯瞰する

【講演内容】
いまは情報の時代と言われます。ここでは、その歴史を俯瞰して、あわせて未来を勝手に展望します。電子的な情報技術の歴史は19世紀にさかのぼりますが、もちろん情報の歴史はそれだけではありません。一方でコンピュータは終戦後の1946年に誕生しました。実は私はその前年に生まれています。まさに同世代ですが、それだけに情報の時代のこれからが気になります。それはバラ色の未来を約束するのでしょうか。

原島 博
原島 博(東京大学名誉教授)
3 2021年3月

社会情報基盤を構築するための工学とは?

【講演内容】
昨年からのCOVID-19の感染拡大により、社会の各分野でDX(Digital Transformation)が叫ばれている。Society5.0を標榜していたにもかかわらず、 我が国の社会情報基盤の脆弱さは、様々な側面で明らかになり、ようやく社会全体が情報ネットワークと計算機構とデータ基盤からなる新しい社会情報基盤の 構築の必要性を認識し始めた。本講演では、作りたい社会像から様々な先端技術を組み合わせて、持続的かつ安 全・安心な社会情報基盤を作るための方策を議論する。

安浦 寛人
安浦 寛人(九州大学 名誉教授)
4 2021年4月

電波科学の100年と持続可能な発展への取り組みの道すがら、想うこと

【講演内容】
昨年からのCOVID-19の感染拡大により、社会の各分野でDX(Digital Transformation)が叫ばれている。Society5.0を標榜していたにもかかわらず、 我が国の社会情報基盤の脆弱さは、様々な側面で明らかになり、ようやく社会全体が情報ネットワークと計算機構とデータ基盤からなる新しい社会情報基盤の 構築の必要性を認識し始めた。本講演では、作りたい社会像から様々な先端技術を組み合わせて、持続的かつ安 全・安心な社会情報基盤を作るための方策を議論する。

安藤 真
安藤 真(東京工業大学 名誉教授)
5 2021年5月

本当の感覚通信を求めて ーリアルハプティックスの歴史と未来ー

【講演内容】
私たちが感覚信号を人工的に利用しようとした場合必要になる機能は信号のデータ化、伝達、記録、そして再現である。五感のうち聴覚・視覚に関する感覚伝送に関しては、先人の努力で立派な学問体系が打ちたてられているが、その他の感覚、なかんづく力触覚に関してはデータ化すら行われていない。果たして聴覚や視覚と同様な感覚伝送が可能なのであろうか。もし可能なら、どんな応用が拓けるのであろうか。このような長年の疑問が氷解したのはごく最近のことである。その最初の挑戦はすでに1940年代における米国でのパイオニア的な研究であった。21世紀になり、ロボティクスでの人工感覚の必要性が認識されるようになり、ようやく学問体系を作ろうという動きが始まってきた。もし私たちがこの技術を普遍化してeasy-to-useという段階に至ると、少子高齢化や製造業・農業などにおける非定型作業の自動化といった日本の社会や産業が抱えている諸問題を解決する一助になるであろう。力触覚における感覚伝送技術の鍵となるリアルハプティクスについてご紹介し、私たちにどのような種類の幸せをもたらせてくれるかを皆様と一緒に考える。

大西 公平
大西 公平(慶應義塾大学 ハプティックス研究センター 特任教授)
6 2021年6月

データの時代:定年まで続けたデータベース工学研究の振り返りとコロナ時代におけるノーノーマルの考察

【講演内容】
約40年間長らくデータベースの研究をして参りました。大学では殆ど管理職をせず、研究をたっぷりさせて頂きました。ようやくデータの時代となりました。6期の基本計画はデータだらけとなりました。今のIT研究と40年前のコンピュータ創成期のIT研究は大きく違うとは思いますが、自らが歩んできた研究者人生を振り返り、その展望を試みます。サイテーションを気にする必要のないのびのびとした時代でした。 全ての学術がデータ駆動化されるなかで、国立情報学研究所では、アカデミアのためのデータプラットフォームを構築しつつあります。400ギガビット/秒のSINET6と融合することにより、快適なデータの世界が広がります。このトリガーが最後の仕事となります。 時間がありましたら、データ屋から見たコロナの不条理(会誌3月号オピニオンに記載)について考えたいと思います。

喜連川 優
喜連川 優(東京大学 特別教授)
7 2021年7月

移動無線通信技術の発展と将来展望,そして研究開発の醍醐味

【講演内容】
移動通信システムは第1世代からおよそ40年をかけて第5世代まで進化し、10年後の第6世代を目指した研究開発が始まった.これまでの10年ごとの世代交代を支えた移動無線通信技術の発展を紹介し,その将来を展望する.また,複雑過酷な伝搬環境の下での高速高品質通信を目指してきた技術開発の醍醐味についても触れたい.

安達 文幸
安達 文幸(東北大学 名誉教授)
8 2021年8月

"情報ネットワークの周辺で画像と共に半世紀"ーファクシミリ通信から通信政策まで、実践から研究へー

【講演内容】
私自身、大学院を修了した後NTTで13年半技術開発を担当して、その後、東京工業大学で24年半、教育・研究に従事してきた。研究分野としては画像を対象とした情報ネットワークと情報ネットワークに適した画像表現法を中心としてきたが、振り返って見ると、多くの分野で先に開発等の実践的活動を行い、その後研究活動を行ってきたように思う。東工大時代の後半から政府の通信政策にも関りを持ったが、これもその後、津田塾大学総合政策学部で研究の対象とした。ファクシミリ通信から政策までの分野で、実践を先にその後研究を繰り返してきた私自身の経験をお話して、今後の学会で進んでほしい方向についても思うことを述べたい。

酒井 善則
酒井 善則(東京工業大学 名誉教授)
9 2021年9月

"フェイクとの闘いー暗号学者の視た理念と現実・太平洋戦争からコロナまでー

【講演内容】
太平洋戦争から暗号・サイバーセキュリティの研究、コロナ禍までの発表者の生涯を、理念と現実の相克と軸として振り返り、自由の拡大、公共性・安全性、個人の権利・プライバシイの矛盾しがちな理念の三止揚を、Management, Ethics, Law and Technology によって達成すること、即ち、MELT-UP することを提案する。また、究極の本人確認方式と、耐量子コンピュータ暗号の提案、シニア・女性研究者の活動支援のための光輝会活動や、Y00量子ストリーム暗号研究支援等、最近の活動について紹介する。

【主な項目】 ①小学校高学年の戦争体験と皇道理念
②太平洋戦争に対する文化人たちの現実認識
③研究履歴:伝送理論・デジタル信号処理から暗号理論研究とサイバーセキュリティ総合科学の提案
④情報セキュリティ大学院大学学長としての人材育成
⑤電子情報通信学会100周年(2017年)記念における偉業(マイルストーン)取り纏め
⑥シニア研究者としての研究( 究極の本人確認方式の為の3階層公開鍵暗号の提案、多変数公開鍵暗号による耐量子コンピュータ暗号の開発
⑦セキュアIoTプラットフォームフォーム協議会活動
⑧中央大学研究開発機構におけるシニア研究者の活動紹介と光輝会の設立

辻井 重男
辻井 重男(中央大学研究開発機構 フェロー・機構教授)
10 2021年10月

デジタル社会の創生


村井 純(慶應大学教授・内閣官房参与(デジタル政策分野担当)
11 2021年10月

"光ファイバ通信の200THzポテンシャルの開拓:研究から社会インフラへ昇華の過程に支えられて

【講演内容】
光ファイバ通信技術は、物理モデルの限界挑戦研究から、開発量産化され、日本はもちろん世界中の社会インフラとして、浸透してきた。本講演では、光ファイバの有する潜在能力を引き出す不断の努力を振り返ることで、新たな研究開発へのチャレンジの一助となることを願っている。一見延長線上に見える「研究と開発」であるが、社会インフラとしての運用まで考えると大きなギャップがある。できるだけ、過去の40年の経験に照らして、その違いとギャップを埋める努力をフォトニクス技術・エレクトロニクス技術・ソフトウェア技術を組み合わせて、システムとそれをサポートする計測技術とをコンカレントに進めることで持続的な発展をなしえたメカニズムを述べてみたい。

萩本 和男
萩本 和男(NTTエレクトロニクス株式会社)
12 2021年10月

AI時代にリーダーシップをとるために

【講演内容】
アメリカのシカゴで、AI(人工知能)の研究と教育を中心とする、博士課程だけの大学院大学の学長を6年間務めた経験を基に、アメリカと日本の大学と社会の違いを比較しながら、AI時代のグローバル化された世界で、日本の大学と社会が如何に発展し、リーダーシップをとれるようになれるかの提言を行う。(参考資料:古井「AI時代の大学と社会 ーアメリカでの学長経験からー」(丸善プラネット、2021)

古井 貞煕
古井 貞煕(国立情報学研究所研究総主幹・東京工業大学栄誉教授)
13 2021年11月

面発光レーザーの創案と応用分野の広がり

【講演内容】
面発光レーザーの発明から最近の発展までをお話します。面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とは、半導体レーザーの一つで、1977年に講演者によって発案されました。半導体基板に対して垂直に光が共振し、図のように表面から光が出るのでこのように名付けました。ウエハプロセスによって大量生産が可能です。共振器長を波長と同じ程度にできるので、単一波長動作が可能です。共振器長と横方向が数ミクロンの大きさにすればレーザー発振に必要なしきい値電流が0.1-1 mA以下と通常の半導体レーザーの1桁から2桁ほど小さく出来、消費電力の大幅な低減が可能です。また、2次元アレー状の特徴を活かした並列処理を可能にします。LAN、コンピュータ用マウス、レーザープリンター、スマートフォンにおける顔認証、レーザーレーダー、OCT、各種センサーなど広く用いられるようになりました。産業的にも急成長期を迎えています。IoT(Internet of Things)技術からAI(人工知能)技術の物理層を支える光源としてその動向に注目が集まっているのです。デバイスの売り上げも2025年には1兆円に達すると予測されています。レーザーの登場以降に発展してきた光エレクトロニクスの歴史を振り返り、これからの飛躍への一里塚(Milestone)ともなれば幸いです。
参考文献
[2020IGA] 伊賀健一:“面発光レーザーが輝く”、第2版(電子版)オプトロニクス、2020
[2020IGA] 伊賀健一、波多腰玄一:”面発光レーザー:原理と応用システム”アドコムメディア社、2020

伊賀 健一
伊賀 健一(東京工業大学・名誉教授/元学長、本会元会長)
14 2021年12月

AIの時代に玄人をめざす人へのメッセージ

【講演内容】
研究者はだれもが「良い研究、インパクトのある研究」を目指すものである。それはどういうことかについて私の経験を通じて楽しく議論したい。

金出 武雄
金出 武雄(カーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授)
2020年
No 開催月 講演内容 講演者(所属)
1 2020年6月

EDFA 長い冒険の旅
~光ソリトンからコヒーレントナイキストパルスへ~

【講演内容】

(1) EDFA(エルビウム添加光ファイバ増幅器)発明への道

(2) EDFAを用いた新たな光伝送技術への挑戦

  • 光ソリトン伝送からコヒーレントナイキストパルス伝送へ
  • 3つのマルチ(3M)技術(Multi-level modulation with 4096QAM, Multi-core fibers, and Multi-mode control toward Petabit/s transmission)
  • ポスト5Gに向けた無線と光のシームレスな融合(Digital coherent mobile fronthaul)

(3) 若い人へのメッセージ

(4) まとめ&会長声明 -「コロナ後」の電子情報通信技術の発展に向けて-

中沢 正隆
中沢 正隆
2 2020年7月

移動体通信の未来
~地上2次元セルから3次元空間セルへ~

【講演内容】
移動体通信の変遷、ドローン携帯システム、HAPS携帯システム、3次元空間セル構成を実現するシステム間連携制御

藤井 輝也
藤井 輝也(東京工業大学特任教授、ソフトバンク(株)フェロー(兼任))
3 2020年9月

数理工学から見たICT
~情報幾何学と人工知能の歴史的発展、現状、将来への希望~

【講演内容】
情報通信技術は、数理的な手法とともに成長してきた。電子情報通信学会を舞台とした、半世紀を超える私の研究を、情報幾何と数理脳科学、人工知能(深層学習)を題材に、その黎明期、発展の現状と問題点、さらに将来への希望を展望したい。また、これからの社会と技術についても語りたい。

甘利 俊一
甘利 俊一(理化学研究所栄誉研究員)
4 2020年11月

新・半導体戦略
~脳とコンピュータと集積回路の歴史とその展望から考える~

【講演内容】
ポストコロナの時代を見据えてSociety 5.0への転換が急がれる。そのための基盤技術である半導体が新世紀を迎えようとしている。AI、IoT、5Gが求める半導体技術は何か?加えて、半導体産業にゲームチェンジが起こり、半導体の地政学が国家戦略の文脈で語られるようになった。こうした大激動の時代に、日本の半導体はどこへ行くのであろうか?半導体の歴史を振り返り将来を展望しつつ、半導体戦略を再考したい。

黒田 忠広
黒田 忠広(東京大学教授)