「電気・電子系高度技術者育成プログラム」のシラバス

第1回目 2022年10月7日(金)13:20〜15:20

講師
山崎 正実(拓殖大学)
山崎 正実(拓殖大学)

1982年 慶應義塾大学工学部計測工学科卒、同年富士通入社。通信機器用システムLSI開発、パケット系光伝送装置の開発等に従事。2018年 富士通退社。現在 拓殖大学工学部助手。

講義名
開発プロセス「ものづくり手順」
概要
ネットワークインフラを構成する様々な通信機器とそれらに対する要求事項である高可用性、高信頼性、リアルタイム性等の特徴的な事項を踏まえ、要求仕様からハード・ソフト開発、システム評価・試験に至る一連の開発プロセスを俯瞰し、開発手法、ツールについて概要を説明する。また、一連の開発プロセスを円滑に実行し、目標とする品質を確保するためのプロジェクトマネジメント、品質管理のポイントについても議論する。これらを通して、実際の開発現場全体のイメージを描け、本プログラム各講座の位置付けや関係について理解することを目指す。

目次案

  1. ネットワークと通信機器
  2. 開発プロセス概要
  3. アーキテクチャデザイン
  4. ハード開発
  5. ソフトウエア開発
  6. システム試験、評価
  7. 開発マネジメント
  8. 品質管理

第2回目 2022年10月21日(金)13:00〜14:50

講師
田島 勉(元NEC)
田島 勉(三和電気工業(株))

1985年日本電気(株)入社。以来、34年にわたり光通信システム、光伝送技術、および同システム用光トランシーバの開発に従事。現在、三和電気工業(株)光デバイス事業部事業部長。産業機器用光トランシーバの開発に従事。

講義名
光ネットワーク概論
概要
1983年に、北海道から九州まで日本列島を縦貫する光ファイバが建設され、わが国で本格的な光通信の時代が始まった。それから現在に至るまで、通信キャリア、通信機器メーカ、ケーブル・デバイスメーカにより、光通信技術・デバイスの研究開発が推し進められてきた。現在の光通信は、サービスの内容が電話(音声)からインターネット(SNS、映像・画像配信など)へと大きく変わった中で、サービス提供主体もキャリアから巨大なプラットフォーマーへと推移している。伝送容量も、1983年当時の光ファイバ1本当たり400Mbit/sから現在は30Tb/sと実に7万倍以上になっている。
本講義では、光通信システムの原理とシステム構成を説明すると共に、最先端の光通信技術動向を解説する。

目次案

  1. はじめに
  2. 光ネットワークの進展
  3. 光通信の三要素
    • 光ファイバ
    • 発光素子
    • 受光素子
  4. 光送信・受信回路と光トランシーバ
    • IM-DD変復調技術と光送受信回路
    • 光トランシーバとMSA
  5. 革新的な光通信方式
    • デジタルコヒーレント方式
  6. 光通信システムとネットワークトポロジー
  7. むすび

第2回目 2022年10月21日(金)15:10〜17:00

講師
小熊 健史(NEC)
小熊 健史(NEC)

1993年日本電気(株)入社。以来、陸上・海底光通信システム用光デバイスの開発,および光波長多重伝送システムの開発に従事。現在、同社フォトニクスネットワーク開発統括部シニアプロフェッショナル。

講義名
光伝送システムと光デバイス
概要
光通信は、その登場から光デバイス技術の進歩と不可分であった。新しい光通信技術には新しい光デバイスが要求され、新しい光デバイスの登場は新しい光通信技術の実現を意味していた。現在ではその傾向がさらに進み、光伝送システムにおける性能向上の鍵は光デバイスが握っている。
本講義では光伝送システムと、それらを構成する光デバイスを広く紹介するとともに、最新技術であるCDC-ROADMやコヒーレント光通信について、おいて光デバイスがどのように使われているかを解説する。

目次案

  1. はじめに
    • 光通信システムの変遷
  2. 光ネットワークを構成する高機能光デバイスとその原理
    • 光増幅技術
      • 光増幅の基礎
      • EDFA
      • ラマン増幅
      • 半導体増幅
      • 光伝送の大敵:雑音
    • 波長多重分離技術
      • 光波長合分波の基礎
      • 誘電体薄膜
      • 回折格子
    • 光スイッチング技術
      • メカニカル/MEMS光スイッチ
      • 液晶光スイッチ
  3. エラスティック光ネットワーク
    • 光ネットワークの信頼性と運用柔軟性
    • エラスティック光ネットワークを実現するためのOADM技術
    • WXCとCDC-ROADM
    • 波長選択光スイッチ,マルチキャスト光スイッチ
  4. まとめ

第3回目 2022年11月11日(金)13:00〜14:50

講師
樋口  健一(東京理科大教授)
樋口 健一(東京理科大教授)

1994年早稲田大学理工学部卒業、2002年東北大学大学院博士後期課程修了。1994年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。W-CDMA、第4世代移動通信方式、LTEの無線アクセス技術などの研究開発に従事。2007年東京理科大学理工学部講師。2016年より現職。平成22年度全国発明表彰内閣総理大臣発明賞、平成27年度同特許庁長官賞など受賞。博士(工学)、IEICEシニア会員、IEEE会員。

講義名
モバイル伝送技術
概要
モバイルネットワークは、おおよそ10年毎に技術を革新する継続的な世代更新が進み、現在は第5世代システム(5G)とその先の研究開発が進められている。本講義では、モバイルネットワークの無線伝送技術に焦点を当てて、システムを構成する要素技術を紹介する。また、モバイルネットワークのこれまでの進化と、最新のシステムにおいて本講義で説明する要素技術がどのように用いられているのかについて解説する。

目次案

  1. 電波伝搬
  2. ディジタル変復調
  3. 通信路符号化に基づく誤り制御
  4. 多元接続
  5. ダイバーシチとMIMOチャネルを用いた空間多重伝送
  6. 実際のシステムの構成と特徴

第3回目 2022年11月11日(金)15:10〜17:00

講師
藤岡 雅宣(エリクソン)
藤岡 雅宣(エリクソン・ジャパン)

1998年エリクソン・ジャパン入社、IMT2000プロダクト・マネージメント部長や事業開発本部長として新規事業の開拓、新技術分野に関わる研究開発を総括。現在CTOとして技術統括、社外向け活動を推進。前職はKDD(現KDDI)で、ネットワーク技術の研究、新規サービス用システムの開発を担当。主な著書:『ISDN絵とき読本』、『5G教科書-LTE/IoTから5Gまで-』、『いちばんやさしい5Gの教本』。阪大工学博士

講義名
5Gコアネットワーク
概要
モバイルネットワークにおいて、スマートフォンなどの端末とインターネット、アプリケーションサーバとの間の接続処理やユーザデータのルーティング処理を行うのがコアネットワーク(CN)である。本講義では、CNの役割と進化、5GにおけるCNアーキテクチャと動作の流れ、仮想化とクラウド技術の利用、これからの多様なコンシューマ向け及び産業向けのモバイルアプリケーションを提供するための様々な仕組みについて解説する。

目次案

  1. コアネットワークの役割
  2. コアネットワークの進化とIMS
  3. ネットワーク機能の仮想化
  4. 5Gスタンドアロン構成と5Gコア(5GC)
  5. ネットワークスライシング
  6. ネットワークエクスポージャ
  7. エッジコンピューティング
  8. 固定ネットワークとの融合

第4回目 2022年11月25日(金)9:30〜11:30

講師
杉本 泰博(中央大学)
杉本 泰博(中央大学)

1973年〜1992年まで(株)東芝 半導体事業本部にて、オーデイオIC、TV IC、BiCMOS IC等の回路設計、レイアウト、テスト評価等の業務に従事。その間、技術士(電気・電子部門)および工学博士を取得。1992年~2020年3月まで中央大学教授、主にCMOSアナログ回路、高周波IC回路の研究・開発に従事。現在、中央大学名誉教授、電子情報通信学会フェロー。

講義名
ハードウェア概論(電源技術)
概要
スイッチング電源回路の動作と特性、周波数特性を重視した回路設計手法およびシミュレーション技術の各設計技術を見て行くこととする。スイッチング電源のうち比較的小容量の、IC化DC-DCコンバータが対象である。プロセス技術としてはCMOS技術が中心となる。なおスイッチング電源のインピーダンス変換機能を利用する2つの応用例についても述べたい。全体として次の章立てで進める形となろう。

目次案

  1. スイッチング電源回路の動作と特性
  2. DC-DCコンバータの回路構成
  3. 伝達関数による負帰還回路の解析手法
  4. シミュレーションによる総合特性の評価とシミュレーション技術
  5. スイッチング電源回路の適用例(ワイアレス電力伝送、太陽電池)

受講の前提条件として:

  1. 電子回路を学んだ事がある
  2. 伝達関数とはどんなものかがわかる
  3. 回路シミュレーションとはどのようなものか聞いたことが有る

第4回目 2022年11月25日(金)13:00〜15:00

講師
杉本 泰博(中央大学)
杉本 泰博(中央大学)

1973年〜1992年まで(株)東芝 半導体事業本部にて、オーデイオIC、TV IC、BiCMOS IC等の回路設計、レイアウト、テスト評価等の業務に従事。その間、技術士(電気・電子部門)および工学博士を取得。1992年~2020年3月まで中央大学教授、主にCMOSアナログ回路、高周波IC回路の研究・開発に従事。現在、中央大学名誉教授、電子情報通信学会フェロー。

講義名
ハードウェア概論(高周波技術)
概要
分布定数線路が使用できる範囲で、~20 GHz程度の高周波回路設計技術を見て行く。基礎事項に加え応用事例として主にIC回路の例をあげた。本講では高周波回路および機能の実現を、入出力マッチングによる性能の向上・最適化という観点と、低雑音設計という観点から説明する。また近年注目されているワイアレス電力伝送技術は高周波技術を適用したものと考えられるのでこれを概観する。全体として次の様な章立てとなろう。

目次案

  1. マッチング(整合)、という考え方
  2. マッチングを考えた高周波回路設計
  3. 雑音を主に、という考え方
  4. 雑音特性が大事な高周波回路設計
  5. ワイアレス電力伝送技術

受講の前提条件として:

  1. 電子回路を学んだ事がある
  2. 分布定数線路を学んだ事がある
  3. 電磁気を学んだ事がある

第4回目 2022年11月25日(金)15:20〜17:20

講師
樋口 和人(東芝)
樋口 和人(東芝)

1991年(株)東芝入社。以来、先端半導体パッケージの開発に従事。現在、同社生産技術センターシニアフェロー。

講義名
ハードウェア概論(実装技術)
概要
実装技術は、エレクトロニクス産業における競争力の源泉であり、我が国の得意分野であったが、モノづくりが海外にシフトする中、国内の技術力の低下を感じる場面が多くなった。一方で、近年のパンデミックや地政学リスクによりグローバルに広がったサプライチェーンの脆さが露呈、水平分業の見直しやエンジニアリングチェーンの強化が言われ始めている。不確実性が高まる中で、内外のリソースを柔軟に活用した、変化に対応できるモノづくりが求められており、実装技術への新たな要求の高まりを感じる。
本講座では、これらの状況を踏まえ、基本的な実装技術を網羅的に概説、実装のベースとなる基本原理や要素技術の理解を深めると共に、国内製造業の課題と今後について、講師の経験談を交えて説明する。

目次案

  1. 実装技術とは
  2. 半導体実装
  3. 基板実装
  4. 実装設計(電気、放熱、信頼性)
  5. 国内製造業の課題と今度

第5回目 2022年12月16日(金)13:00〜17:00

講師
亀田 勝(元富士通)
亀田 勝(元富士通)

1986年富士通(株)入社。以来、33年にわたり光通信システムを始めとする各種電装機器に搭載する半導体デバイスの論理開発に従事。、現在は、独立して各企業のISO認証コンサルや審査、又、人事考課コンサルに従事。

笠井 正男(マクニカ)
笠井 正男(マクニカ)

10年以上 FPGA 関連業務に従事。FAE として FPGA 提案、スペシャリストとして FPGA サポート、ソリューション提案を行いトレーニング業務にも従事している。

講義名
講義8 FPGA講習(オンラインにて設計実習を行う)
概要
FPGA はデバイス内の設計データを変更できる半導体 IC です。製品の市場投入までの期間の短縮を図ることができ、機器が顧客へ出荷された後も設計データの変更を行うことが可能なため様々な分野で使われています。本講義では、FPGA の概要とトレンドについて紹介し、開発を行うために必要な一連のフローについて、実習を交えながら学習します。

目次案

  1. FPGA とは
  2. FPGA の種類
  3. FPGA の設計手法
  4. FPGA のトレンド
  5. FPGA の開発環境
  6. FPGA の開発フロー
  7. インテル FPGA を使った開発実習

第6回目 2023年1月20日(金)13:00〜17:00

講師
山本 幸太郎(想隆社)
山本 幸太郎(想隆社)

1999年早稲田大学理工学部卒業。株式会社想隆社代表取締役。視覚障害者のための文字情報のアクセシビリティや教育ICTの開発を専門とする。明治大学サービス創新研究所客員研究員。早稲田大学非常勤講師。

講義名
プログラミング言語概論とAI
概要
近年情報システム開発は大規模化になり、プログラミングは、単純にソフトウェアの実行速度だけでなく保守性、開発効率などが求められるようになってきた。本講義では、開発状況が大規模開発へと変わっていく中で、手続型プログラミングからモジュール化の必要性が生まれたこと、オブジェクト指向や関数型言語が出てきた背景について述べる。また、実務の中で、あるタスクを与えられたときに適切な言語とは何かを自身で選択できるように、各言語の特徴を理解し、実装できるようになることを目標とする。講座では初めにAIに触れ、データ構造に及ぶ。

目次案

  1. 機械学習とは
  2. 機械学習の用途と分類
  3. 最新AI・機械関連のトピック
  4. プログラミング言語の分類
  5. プログラミング言語とデータ構造
  6. 手続き型言語からオブジェクト指向へ
  7. 関数型言語

第7回目 2023年2月17日(金)13:00〜17:00

講師
曽根高則義(テクノメデイアラボ代表取締役兼CEO)
曽根高則義(テクノメデイアラボ代表取締役兼CEO)

早稲田大学大学院博士課程修了 博士(工学・国際情報通信学)
日本電気株式会社入社、衛星通信方式およびセキュリティの研究開発に従事した後、MIT留学候補生のまま渡米、ソフトウェア研究開発拠点を立ち上げ。その間、次世代PCSシステムの調査研究を実施し事業企画を携えて帰国。DCTS(次世代PCS)システムを考案、開発、事業化に成功(世界27か国で採用)。米国クアルコム(旧スナップトラック)社とGPS位置測位システムの推進、OMA標準DM(デバイスマネージメント)の開発を行う傍らモバイルインターネットサービス事業化のコンサルを海外モバイル通信事業者向け(アメリカ、スペイン、フランス、ロシアなど)に実施したのち現職。
早稲田大学理工学術院国際情報通信研究センター客員教授(上級研究員)、東京大学先端科学研究センター客員研究員、明治大学および横浜国立大学兼任講師、日本学術振興会先端的研究専門委員、電子情報通信学会ICTS研究専門員会委員長、電気学会スマートグリッド系技術調査専門委員などを兼務。
電気科学技術奨励賞、電子情報通信学会ソサイエティ功績賞・顕彰状、ZD特別論文賞、パーフェクトデザイン賞など多数受賞。

講義名
開発検証・品質保証 理論と実際
概要
改めて品質とは何かを見つめなおし、ハードウェアおよびそれを支えるソフトウェアの開発手法を整理するとともに、とくにアジャイル開発における品質保証を如何に実現していくかを学ぶ。また企画策定の段階から、発生し得る様々なリスクを想定し、顧客価値を最大化するための開発・検証の実例を交えながら解説を加える。これにより、リスクマネジメントの重要性を理解し、「良い品質」のものづくりについて学習する。

目次案

  1. アジャイル開発における顧客価値
  2. 品質(クオリティ)の定義
  3. ソフトウェア開発手法の歴史
  4. ソフトウェア開発と品質保証
  5. 自動テストへのアプローチ
  6. アジャイル時代の品質保証

第8回目 2023年3月10日(金)13:00〜15:00

講師
三木哲也
三木哲也(電気通信大学 名誉教授)

1970年東北大学大学院博士課程修了。同年NTT電気通信研究所。高速デジタル伝送、光ファイバ通信方式、フォトニックネットワークなどの研究開発に従事。1992年NTT光ネットワークシステム研究所長。1995年電気通信大学教授、2008~2012年同大学理事及び学長特別補佐。1998~2000年IEEE Communications Society 副会長、2003~2005年IEICE副会長、2013~2016 年日本工学会技術倫理協議会 議長。IEICEフェロー・名誉員、IEEE Fellow。

講義名
特別講義 技術者のためのリベラルアーツ
概要
近年の理工学系教育においては、リベラルアーツ教育の比重が低下する傾向にあったが、これからの技術開発にはリベラルアーツの観点が必要であるとの認識が高まりつつある。それは技術が高度化しSociety 5.0に向かうことで社会活動や個人生活に深く関わるようになってきたことと密接に関係している。これからの技術者には、リベラルアーツのどのような素養が求められるのか、事例をあげて解説する。

目次案

  1. 不確定な時代へ
  2. リベラルアーツへの再認識
  3. 何故リベラルアーツか
  4. Well-beingに向けて:リベラルアーツを養う