「つないで楽しむインターネット」 はしがき


 この本は、パソコンをはじめて使う方、あるいはパソコンを使い慣れていない方でも、インターネットが楽しめるように、という目的で書きました。例えば、家庭の主婦でパソコンとは縁がなかった方、会社でイントラネットが導入されたが若い人についていくのが難しい方、定年退職されて趣味としてインターネットを始めたいと思っている方、などの方々のためのやさしい入門書として書きました。

 筆者達は一年半ほど前、インターネットとWWWが立ち上がろうする時期に、「WWWで始めるインターネット」という本を出版しました。幸い多数の読者からご好評を頂きましたが、一方で、「モデムはどうやってつなぐのか」「ISDNにしたらどんなメリットがあるのか」などの質問もいただきました。さらに、筆者達の行ったさまざまなセミナーでは、インターネットのことをもっとやさしく説明してほしいという要望も頂きました。

 また、ここ一年半の間にインターネットの進歩もありました。当初のインターネットブームは、一部の研究者や技術者、あるいは「パソコンオタク」が主でしたが、今は「普通の人々」がインターネットの主役になる時期を迎えています。例えば、小学校や中学校ではインターネットを使った教育が始まっています。また、オンラインショッピングは、その情報量と価格などで通信販売の主流になりつつあります。

 一方、インターネット技術を社内ネットワークに適用した「イントラネット」は、組織のスリム化、意志決定の迅速化などを目的に、戦略的な導入が図られつつあります。インターネットのキーポイントは個人の参加意識にあります。したがって、「イントラネット」成功の鍵は、パソコンを使う一人一人が、インターネットに参加するようになることといえるでしょう。

 本書は以上のような状況を考えて、一人でも多くの「普通の方」にインターネットに参加していただくことを目的にしています。モデムやISDNの買い方とパソコンとのつなぎ方、プロバイダの選び方、インターネットへの接続方法、WWWや電子メールの使い方と楽しみ方、そしてWWWのホームページの作り方を解説しています。

 インターネットへは「接続できればいい」というものではありません。「おもしろおかしく」だけのインターネットも困ります。インターネットを「正しく楽しく」使っていただきたいのです。そのために、本書では、電子メールのマナーやエチケット、インターネットの背景とその底流にある考え方、などを解説しました。また、マルチメディア化やセキュリティなど、今後どのような方向に向かうのか、などの側面も出来るだけやさしく解説しました。

 本書は、インターネットプロバイダとして、KDDの子会社でありインターネットの総合的なサービス提供を特徴としているKDDコミュニケーションズ(KCOM)の全面的な協力を得て執筆しました。巻末にはKCOM加入申し込み用紙がついています。また、オンラインで行うかんたんサインアップの方法も説明しています。本書で説明するインターネット接続の方法はKCOMを例にしますが、もちろん他のプロバイダにも適用できます。本書に従えば、日曜日の朝、ほんの2時間でインターネットを始められます。

 インターネットは、みんなが参加するネットワークです。でも、いきなりでは電子メールを送る相手がいませんし、誰からも来ません。WWWからはじめましょう。そして、知り合いができたら、電子メールを使いましょう。

 参加しましょう。情報を受け取るだけではなく、こちらから提供しましょう。インターネットは、みんなのボランティアで成り立っています。本書によって、一人でも多くの方がインターネットを楽しむようになっていただきたいのです。

 最後に、本書執筆にご協力いただいたKCOMの渡辺伸、深田浩二および黒木哲也の各氏、ならびにKDDの久保孝弘氏に感謝します。また、リックテレコムの鈴木秀幸、河合一彦の両氏のご尽力に深謝の意を表します。

1996年11月
筆者一同


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