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3.日本技術者教育認定機構 (JABEE)

  • 技術者基礎教育の基準を設定し、それを評価・認定する主体は技術者でなければならない。産官学すべてのセクターにわたる技術者を代表する組織としては、技術系の学協会が相応しい。

  • JABEEは、学協会の協力を得ながら全体の統一と調和を図り、学協会の代表として認定に最終責任を持つ。

  • JABEEは、我が国を代表する技術者教育認定団体としてワシントンアコードに加盟し、技術者教育の国際同等性を確保する。



1997年7月に日本工学教育協会と日本工学会が共同し、大学・学協会・文部省・科学技術庁・通産省・経団連などの代表が参加するなかで「国際的に通用するエンジニア教育検討委員会」(委員長:吉川弘之)を発足させた。これは、端的に言えば日本版ABET をどの様に立ち上げるかを検討する組織である。その後準備が進み、99年2月に工学系の学部、大学および学協会あてに技術者教育認定制度案が配布され、検討の依頼が行われた。またそれを担当する日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Board for Engineering Education, JABEE)についても、設置を念頭に設立趣旨の説明が行われた。案に対して寄せられた意見を参考にしつつ制度と認定機構の修正を行い、99年9月1日に第1回設立発起人会を開き、99年11月19日にJABEEが設立された。

 設立後2年間をかけて認定の試行を行い、その間に基準書、手順書、自己点検報告書などの基本文書の改善を進める。また審査員の養成のため、講師の招聘、外国への研修派遣などを行う。2000年度には、20のプログラムを選定して認定の試行を開始した。技術士法の改正が実現し、JABEEの役割が明記されたので、本格試行への一日も早い移行が望まれるようになった。

 技術者教育の認定を受けるには、その教育プログラムが、分野を問わず適用される共通基準と、専門分野ごとに設定される分野別基準を満たす必要がある。共通基準は、試行案では以下の項目を満たすことを求めている。

(a) 人類の幸福・福祉とは何かについて考える能力と素養(教養教育を含む)

(b) 技術的解決法の社会および自然に及ぼす効果、価値に関する理解力や責任など、技術者として社会に対する責任を自覚する能力(技術者倫理)

(c) 日本語による理論的な記述力、口頭発表力、討議などのコミュニケーション能力、および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力

(d) 数学、自然科学および技術(情報技術(IT)を含む)の学理に関する基礎知識とそれを応用できる能力

(e) 変化に対応して継続的、自律的に学習できる生涯自己学習能力

(f) 種々の科学・技術・情報を利用して社会のニーズを解決するデザイン能力

(g) 与えられた条件下で計画的に仕事を進め、まとめる管理能力


専門別基準については、対応する学協会が主体となって設定し、JABEEによる調整を経て決定される。なお、専門分野をどのように分割するかは、未だ模索の段階にある。基本的には、学部教育が対象であることを考えて、専門分野の過度の細分化は避けるべきである。複数学科がまとまって一つの専門教育プログラムを設定する場合、1学科1プログラムの場合、或いは1学科が複数のプログラムを持つ場合などが考えられる。審査に当たる学協会も、単独の学協会が該当分野の専門プログラムに対応するケースから、関連する学協会が集合体を作って対応するケースまで、様々なバリエーションが考えられる。

また学部教育の段階では、機械、電気等の個別分野に特化することなくEngineering全般に関わる基礎教育を行うのも一つの選択である。「工学一般」或いは「基礎工学」を一つの分野として認定できるよう、準備が進められている。

認定の目的の一つが教育の質的保証である。すなわち各プログラムが設定する成果outcomesの水準が、技術者に期待される学士レベルの基礎教育として妥当なものでなければならない。この水準は、分野によって異なり、また時代と共に変化する。従ってこれを記述して明示することは不可能である。しかし、認定作業そのものを通じて、教育サイドと認定サイドが描く水準が次第に狭い範囲に収斂し、結果として共通の水準による品質保証が実現されるものと信じている。認定の試行は、そのようなプロセスの始まりである。




4.国際的品質保証 −ワシントンアコード加盟を目指して


 技術者教育の国別の認定システムとは別に、技術者教育の質的同等性を国境を越えて相互に承認し合う協定、いわゆるワシントンアコードが1989年に締結された。最初はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドの六カ国を代表する技術者教育認定団体が調印したが、現在は香港と南アフリカが加わっている。現在、ワシントンアコード加盟団体により認定された大学の教育プログラム(大学と学科名)が、冊子となって世界中に流布している。その中に、我が国の大学に関わるものは皆無である。

 現在、ワシントンアコード加盟国はアングロサクソン系あるいは英語圏の諸国に限られている。ヨーロッパ連合を代表するFEANIや日本は、これまでオブザーバーとして接触を保ちながら動向をフォローしてきた。将来JABEEの認定が軌道に乗り始める機会を捉えて、当然ワシントンアコード正式加盟を申請する。なお、ワシントンアコード加盟団体は、何れも国家から独立した民間の認定団体である。

 なおJABEEとしては、加盟申請に必要な2ヶ国の推薦を念頭に置き、アメリカのABET、オーストラリアのInst. of Engineers, Aust. の2団体との協力関係を重視している。







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