情報通信ネットワークとは
 overview of telecommunication network



 通信ネットワークは, 電信, 電話の技術開発によって発展した.まず地域通信ネットワークが形成され, さらに全国, 国際を接続する長距離・国際ネットワークが形成されてきた.通信サービスの需要は, 電話が大部分であったが, 近年ではコンピュータの普及により, コンピュータ間接続のネットワークが一般に使われるようになっている.マルチメディアアプリケーションもインターネットなどで一般化し, 電話に匹敵する通信需要を生みつつある.その発展によってネットワーク需要の大部分は電話ではなく, マルチメディア通信になる可能性もある.
 通信ネットワークは, 歴史的発展の跡を残した階層構成となっている.しかしインターネットに代表される新しいネットワークは, 古い通信インフラストラクチャに依拠しつつ, 論理的にはより水平な構造をもって発展している.ネットワーク技術は現在, 電話からマルチメディア通信へ需要構造の変化の時期を迎えている.
 端末が電話からコンピュータへ変化するのに伴い, ネットワークは単にエンドツーエンドに等価的針金を開通するだけではなく, ディジタル情報の使われ方に即した機能をもつようになっており, その意味での通信ネットワークを情報通信ネットワークと呼んでいる.
 情報通信ネットワーク技術は, 図1に示す四層構造で理解するのが理解しやすい.まず基本伝送, 交換技術が開発される.これを活用するのが各種アプリケーション技術であるが, 各アプリケーションごとあるいはアプリケーション共通に基本伝送, 交換技術を適合させる端末技術を含む高度情報通信技術がある.こうしたアプリケーションが一般の生活, 業務の中に定着し, 初めて社会に普及し有効な需要が生ずる.


図1 情報通信ネットワーク技術の四層構造


 情報通信ネットワーク技術が, 現在電話ネットワークからマルチメディアネットワークへの過渡期にあるということはネットワークを活用した社会生活がまた大きな変化の時代に入っているということでもある.こうした技術のうち7群では主として第一層, 第二層の技術を扱う(第三層, 第四層の技術については, それぞれほかの群で扱うことになる).
 技術の変化に伴い, 制度的にも情報通信ネットワークは, 独占的ネットワークの時代から競争的ネットワークの時代に入り, 業務的にも大きな変化を生じようとしている.こうした業務環境の変化もネットワークの形成に大きなインパクトを与えている.ネットワークは統一的で技術指向のネットワークから, 小回りのきく顧客指向のネットワークに移行しつつある.技術開発の重点もこれに伴い基本的インフラストラクチャから, アプリケーションに移りつつある.
(齊藤)




(C)社団法人 電子情報通信学会 1998