論文賞 推薦の辞
論理回路の故障診断法―外部出力応答に基づく故障箇所指摘法の発展―
高松 雄三  ・ 高橋  寛  ・ 樋上 喜信 ・ 佐藤 康夫
山崎 浩二
(和文論文誌D 平成23年1月号掲載)
 本サーベイ論文は、初歩的なことから最新技術まで、多くの文献を引用して、広い読者にわかりやすく記述されている。LSIの微細化技術の進展並びに高集積化・高速化に伴い、論理回路の故障診断は、(1)故障原因を調べてテストへフィードバックすることでLSIの品質を向上させること、(2)製造プロセスの歩留りを決めるプロセスの欠陥や設計の不具合を調べ、その対策を施すことで製造歩留りを向上させること、などの手段として近年その重要性を増している。そこで、本論文では、論理回路の故障診断法について概説している。まず、故障診断法の基本概念として、故障モデル及び故障診断法の基本的な方法である原因―結果分析法と結果―原因分析法を簡単に説明している。次に、複雑な故障に対応する故障診断技術の発展の観点から、論理回路の故障診断法を「論理故障ベース診断法」と「欠陥ベース診断法」に分類し、それらの概要を述べている。本論文では、単一縮退故障、多重縮退故障、ブリッジ故障、オープン故障及びX故障に対してこれまで開発されている論理故障ベース診断方法をそれぞれ概説している。また、ブリッジ故障、オープン故障及びセル内故障に対してこれまで開発されている欠陥ベース診断方法をそれぞれ概説している。本論文では、今後の課題として、論理故障ベース診断法を挙げている。現状は縮退故障に基づく技術が遅延故障に対しても主として用いられているが、論理回路の高速化とともに、より精度の良い故障診断技術の研究が望まれていると述べられている。さらに、もう一つの課題として、歩留り向上目的の故障診断の実現が挙げられ、設計・製造情報を総合的に活用する研究開発が進んでいると述べられている。

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